難しい目標を達成する確率をガッツリと高める「価値観一致法」を試してみようぜ!
食事の習慣を変えるのは大変だ!ってのは、誰もが認めるところでしょう。いままで不健康な食事を続けてきた人が、急に野菜やフルーツだけの食事に切り替えるのはしんどいはずであります。かくいう私も、自宅にジャンクフードを置いていたら、まったく食べないままでいるのは不可能ですしね。
まぁ、ブロッコリーとかキャベツで得られるメリットは長期的なので、口にしてすぐに「うまい!」と思えるお菓子よりも優先度が低くなってしまうのは当然のこと。人間は長期的にしかメリットを得られない行為をイメージするのが苦手な生き物ですからね(そこらへんは「最高の体調」などをご参照ください)。
では、こういった「長期的にしかメリットが得られないが確実に健康にはよい行動」を得るにはどうすべきか?ってことで、新しいデータ(R)が良い視点を提示してくれていておもしろかったです。
これはシカゴ大学などの研究で、研究チームが何を問題にしたのかと言いますと、
- 学校とかだと、学生たちに健康的な食事をさせたいときに、「健康的な食事をしていると、成長してから良いことが多いですよー」みたいな指導をすることが多いよねー。
- でも、科学的な根拠を中心にメッセージを伝えても、なんの効果もないことは過去の研究でもあきらかになってるんだよねー。
- なので、いまみたいに事実をゴリ押しするようなやり方だと、塩分、糖分、脂肪分が多いスナック菓子の誘惑に対抗するのは無理でしょう。
みたいになります。まぁ私も、他人を説得するときについ「これが科学的な事実なんだから!」みたいな言い方をしちゃうことがあるんで、この問題意識には大いに反省させられるところです。
では、「健康な食事は長期的に体に良い」以外に、食事の習慣を変える方法があるのかって話ですが、この研究の結論をひとことでまとめてみると、
- 長期的にしかメリットがない行動を身につけるには、価値観を一致させるのがベストだぜ!
って感じになります。若者に健康的な食事をとらせるには、科学的な事実よりも価値観を重視せよ、という話ですね。要するに、行動を変えたい時は、個人の重要な核となる動機を見つけ、それと望ましい行動を一致させるのが大事だよってことでして、これは「健康的な食事」だけでなく、あらゆることに言えるでしょうね。
といっても、いまいちよくわからんと思いますんで、この研究における実際の例を挙げると、
- 10代の若者の多くは、「自分の個性を表現したい!」「学校、親、社会には反抗したい!」と考えるケースが多い。これは、若者の価値観だと考えられる。
- この価値観と「健康的な食事」を一致させるには、「スナック菓子ってのは、大企業が我々に商品を交わせるようにデザインした歌詞なのだ!」「スナック菓子を食わずに健康的な食事をすることこそ、大企業に行動をコントロールさせないための重要な手段なのだ!」みたいにすればいい。
みたいになります。10代の若者は「社会に操られたくない!」って気持ちが強いので、「不健康な食事を作る企業は個人の意思決定を阻害しているのだ!」ってメッセージを伝えることで、価値観と行動を一致させることができるわけですな。
でもって、この研究では、上記のメッセージの伝え方を検証してまして、「科学的な事実を教える従来の方法」と比べて、「価値観と一致させて伝える方法」のほうが短期的にも長期的にも良い影響があるって結論を出してたりします。もうちょい詳しく言いますと、
- 価値観を一致させるアプローチを使った場合、10代の若者は、短期的により健康的な食品を食べる傾向が強くなった。
- 3ヵ月にわたる長期的な研究でも、価値観を一致させるアプローチを使ったほうが、10代の若者は健康的な食品を選ぶ確率が高くなった。
って感じです。おもしろいもんで、このアプローチは、10代の女子よりも10代の男子の方が効果的だったそうな(若い男子はイキりやすいからでしょうな)。逆に10代の女子は、事実に基づいたアプローチによって行動を変えることが多かったそうで、やっぱ若いころって女性のほうが大人だよなーとか思うわけですが。
ってことで、この「価値観と一致させる戦略」は、健康的な食事だけでなく、
- もっと勉強したい!
- もっと運動したい!
- 深酒を止めたい!
みたいな状況にも使えると思いますんで、困った時は「自分の価値観ってなんだろう?これと目指す目標を一致させることはできないだろうか?」って考えてみると良いんじゃないでしょうか。