【質問】母方の祖父がハゲていたら、自分もハゲますか?
こんなご質問をいただきました。
30歳男です。男性の場合、自分がハゲるかどうかを知りたければ、母親の父親を見ればいいと言われます。母方の祖父はみごとにスキンヘッドなのですが、これは私がこれからハゲる確率が高いと考えていいのでしょうか?
とのことで、「脱毛は母方の祖父の遺伝が強い」って話は事実なのか、と。確かに、男性型脱毛症(いわゆるAGA)は、ほとんどが遺伝子によって決定されると考えられてますんで、ここは気になるとこかもしれません。
で、まずは大きな結論から申し上げますと、
- 男性の長期な脱毛を決定する重要な遺伝子のいくつかは、母方の祖父から来やすい傾向がある。
ってのは言えるでしょう。つまり、母方の祖父と自分の父親の頭皮を見ると、将来のハゲの可能性はざっくり予想できるってことですね。基本的に、実の父親がハゲていれば自分もそうなる確率は高く、さらに母方の祖父がハゲていたら、その確率はさらに高くなりますんで。
もちろん、AGAの原因はそれだけじゃないので、「母方の祖父がハゲ=自分もハゲる」とは言えないものの、一卵性双生児の研究(R)だと、ハゲの79パーセントから81パーセントが遺伝子によって決定されると報告されてるんで、これはなかなかバカにできないとこではあります(実際の数値はもっと高い可能性もある)。
では、なんで母方の祖父が参考になるのかと言いますと、男性の場合、あなたが持つX染色体の遺伝子はすべて母親から引き継いだものだからです。ハゲに最も強く関係する遺伝子はX染色体上にあるんで、必然的に母から受け継いだ遺伝の影響を受けるんですね。つまり、あなたの母方の祖父がハゲの遺伝子を持っていた場合、少なくとも50%の確率であなたも持っていることになります(母方の祖母にも同じことは言えるものの、こちらは判断が難しい)。
もちろん、AGAに関わる遺伝子のすべてがX染色体上にあるわけではないし、それぞれの遺伝子は複雑に相互作用するんで、まだ解明されていない分野であることは御留意ください。X染色体にハゲ遺伝子があるだけで確実にAGAが起きるわけじゃないし、X染色体にハゲ遺伝子がないから安心ってわけでもないんで。
なので、父や母方の祖父がハゲていた場合、どれぐらいの確率で自分もハゲるかってのは言いづらいんですけども、わりと最近のレビュー(R)を見てみると、
- がっつりと脱毛を経験している人の80%以上が、父親も脱毛していることが調査によって判明している。
ってことなんで、普通に確率は高くなるんだろうなぁ……ってところです。
ただ、「才能の地図」にも書いたとおり、遺伝については、うじうじ悩んだところでなんの意味もないので、「母方の祖父が……」とか考えても時間の無駄かと思われます。それだったら、
- 実際に薄くなってきたら自毛植毛も視野に入れる。自毛植毛はわりと確立された方法なので、FUE法とFUT法でもお好きなほうをどうぞ(私がいまやるんだったらFUE法を選ぶでしょうが)
ってあたりを考えたほうが実りは多いでしょう。特に現時点で脱毛が見られないものの、父親と母方の祖父にAGAが見られる場合は、いまから未来の自毛植毛に向けて貯金をしておくのも良いかもしれません。
ちなみに、それ以外に心がけておくことはあんまなくて、あとはかなり常識的な話になります。具体的には、
- 禁煙はマスト:喫煙は間違いなく抜け毛を引き起こすので、タバコを吸ってる方は禁煙一択であります。1,000人の男性を対象にした2020年の研究(R)によると、喫煙者の大半には抜け毛が確認されたのに対し、喫煙しない参加者は同じ数字が半分以下だったそうな。まぁタバコって血流を悪くするので、それも当然ですけど。
- 頭皮マッサージ:正直なところ、頭皮のマッサージがどこまで抜け毛に効くかは、まだよく分からんのですが、個人的には「あんま過度に期待せずにやるんならいいかもなー」ぐらいには思っております。日本で行われた小規模な研究(R)だと、毎日4分間の頭皮マッサージを受けた男性は、24週間後にに髪が太くなったって報告もありますしね。くり返しになりますが、あんま期待せずにやるぶんには良いのではないかと。
- バランスのとれた食事:良い食事の重要性は言うまでもないところですが念のため。健康的な毛髪を保つためには適切な量のビタミンとミネラルが欠かせないのは間違いなく、2018年のレビュー論文(R)では、特に以下のような成分の重要性を指摘しておられます。
- 鉄分:赤身肉、豆類、緑黄色野菜、鉄強化穀物など。
- オメガ3脂肪酸:サケ、サバ、マグロ、亜麻仁、卵黄、麻の実、クルミなど。
- 高タンパク:卵、赤身肉、魚介類などの。
ってことで、いろいろ書いてみましたが、基本的には「普通に健康的な生活を送っていれば髪の健康にも良い」ってのは間違いないんで、ぜひそこらへんを心がけていただければ幸甚であります。