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2024年の目標を達成するには「完了したことリスト」を書こうぜ!という話

 


あけましておめでとうございまーす。いつも正月は「新年の目標を達成するには?」みたいな話を書いてますんで、今年も同じテーマでやってみましょう。

 

 

で、今回は神経心理学者のニコル・バイヤーズ先生(R)が提唱するテクニックを見てみましょう。新年の目標達成について、バイヤーズ先生がどんなことを言ってらっしゃるかと言いますと、

 

  • 神経科学者の多くは、新年の抱負なんて立てないんだぜ!

 

みたいな内容です。なんでも、バイヤーズ先生やその同僚の神経科学者は、みんな新年になってもこれといった目標を立てないらしい。

 

いきなりテーマを根底から覆すようですが、その理由について、先生は以下のような指摘をしておられます。

 

  • 前提として、脳は私たちの安全を維持するように設計された器官であり、新しいことを嫌う性質がある。過去の研究によれば、新年に立てた計画の8割は失敗するとされており、その原因のひとつは、この「新しいことを嫌う性質」によるものだと考えられる。

  • さらに、脳が最も嫌うのは、私たちが目標を達成できなかったときである。この時、脳は一気にモチベーションを急落させる。そのため、いったん新年の目標に失敗すると、その後にひたすらやる気がなくなってしまうかもしれない。

 

人間の脳は「現状維持」を好む性質があるし、とにかく挫折を嫌う器官なので、新年に目標を立てるのはいまいちオススメできないんだ、と。

 

もちろん、別の研究では、「新年にはメンタルがリセットされて、新しい目標へのモチベーションがわきやすい」って報告もありますんで、正月に新たな目標を立てることが悪いとは申しません。しかし、過去には「本当はみんな新しいアイデアなんて大嫌い」なんて話もありましたし、確かにおかしくない主張かもしれませんな(まぁこの理屈だと、新年に限らず「新しい目標を立てる」って行為そのものがヤバいって話になりますが)。

 

そこで、新年の抱負を考える代わりに、神経科学者たちがやっているのが「2023年に完了したことリストを書く」って作業なんだそうな。これがどういうタスクなのかと言いますと、

 

  1.  2023年の手帳やカレンダーを再チェックする。

  2.  2023年に自分が達成できたことを、すべて紙に書き出す(習い事が上達した、仕事のプロジェクトをやり遂げた、なんらかの記録を作った、誰かに褒められた、友人と良い時間を過ごしたなど、自分が達成感を覚えたものならなんでもいい)。

 

って感じです。新年にやりたいことじゃなくて、昨年に自分がやり遂げたものごとをリストアップするわけですな。

 

神経科学者がこの手法を推す理由は、ざっくり以下のようになります。

 

  • 私たちの脳は、目標を達成したときに最も報酬システムが作動し、ドーパミンが噴出する。その分泌量は大きな目標ほど増えるが、どんな小さい達成でもドーパミンは得られる(ToDoリストをチェックしたときとか)。


  • いったん脳の報酬回路が刺激されると、脳は激しくモチベーションを高め、似たような目標をまた達成する可能性が高くなる。そして、何度も成功すると、将来またその目標に挑戦する自信が持てるようになる。 

 

  • 逆に、新しい目標に意識が向くと、私たちの脳は、「自分がまだ達成できていない」と感じるところに集中したがる。その状態が続くと、私たちは自分の努力不足にばかりフォーカスするようになり、いよいよモチベーションは下がってしまう。

 

人間の脳はとにかく「勝ち」が好きなので、新たに目標を設定するよりは、これまでに自分が達成してきたことを可視化したほうがドーパミンが出ていいんだよーって考え方ですね。確かに、自分の失敗に意識が向いちゃうと、ストレスがたまってメンタルをやられるだけなんで、過去の成功を意識するほうが有用かもですね。

 

くり返しになりますが、目標設定のメリットそのものは先行研究で何度も確かめられてるんで、新年にゴールを決めるのが悪いとは申しません。しかし、目標設定のデメリットを防ぐためにも、2023年に達成したことリストを作ってみるのはありでしょうな。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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