メンタルの改善に効果的な運動トップ9
メンタルは運動で改善する!ってのは有名な話。その理由はいくつもあって、
- 運動は脳の神経可塑性(脳が自らを変化させる能力)を刺激するため、脳が強くなるから。
- 運動は気分を良くするホルモンを増やすので、うつ病の症状を改善してくれるから。
- 運動によって「ネガティブな思考をずっと考え続ける問題」から意識が逸れ、よりポジティブな思考や感情を取り入れ安くなるから。
などと言われております。どの原因が最も重要なのかは謎ながら、エクササイズがうつ病に有効であることは、過去に行われた多くのメタ分析で明らかにされているので、ほぼ間違いないところでしょう。
で、新しいメタ分析(R)は、そこからさらに進んで「どんなタイプの運動が最もメンタルに良いのか?」ってポイントを調べてくれていて参考になりました。ランニングやヨガなど、いろんな種類の運動があるなかで、最もメンタルが改善しやすいものはどれか?って疑問ですね。メンタルケアを目的に運動をしている方には、参考になるデータではないでしょうか。
これは218件のRCTを対象にしたメタ分析で、大うつ病に悩む患者さん14,170人を扱ったもの。実験ではみんなに運動プログラムを実践してもらってまして、実施期間は1~208週間のあいだ。調査の対象になったエクササイズの種類は、
- ダンス(5試験)
- ウォーキング/ジョギング(51試験)
- ヨガ(20試験)
- 筋トレ(22試験)
- 混合有酸素運動(51試験)
- 太極拳/気功(12試験)
- サイクリング(11試験)
といったあたりがピックアップされてます。まぁとりあえずこれだけ揃えていれば十分でしょう。
また、この分析では、他のメンタル改善テクニックの効果も評価してまして、具体的には、
- 認知行動療法(CBT、20試験)
- 抗うつ薬(SSRI、16試験)
といったテクニックと、運動がメンタルに与える効果の比較も行っております。それでは、分析の結果を見てみましょうー。
- すべてのタイプの運動は、うつ病の症状を改善させた。
- 効果が大きかったのはダンスで、次いでウォーキング/ジョギングだった。
- エビデンスの信頼性は、ウォーキング/ジョギングの効果については低く、他のすべての運動タイプの効果については非常に低いと評価された。
- 用量反応分析では、運動は強度が高いほどメンタル改善の効果が高い可能性があった。つまり、キツい運動の方がメンタルが改善するかもしれず、例えばランニングはウォーキングよりも効果があると思われる。
- どのような運動も、すべてが抗うつ薬と同じかそれ以上の効果を示し、すべてが認知行動療法とほぼ同じぐらいの効果を示した。
って感じで、どんな運動でもメンタルは改善するんだけど、データ上はダンスがわりと飛び抜けて高いのが面白いです。メンタルの効果が高い順番にランクづけしておくと、以下のようになります。
- 9位 「運動はメンタルに良い!」という事実を学ぶ
- 8位 サイクリング
- 7位 筋トレ+有酸素運動のミックス
- 6位 太極拳/気功
- 5位 ジョギングやサイクリングなど、複数の有酸素運動を組みあわせる
- 4位 筋トレ
- 3位 ヨガ
- 2位 ウォーキング/ジョギング
- 1位 ダンス
というと、「ダンスが最強だ!メンタル改善にはダンスだ!」みたいに断言したくなりますが、この研究だけでは、そうと決められないのでご注意ください。例えば、ダンスの効果が大きく見えるのは、たんにダンスのほうが楽しいせいで、自然と運動の量が増えただけかもしれませんからね。逆に、サイクリングのランキングが下なのは、エアロバイクをこぎ続けるのが楽しくないせいで、運動をさぼっちゃう人が多かったからかもしれませんからね。
また、今回の研究では、すべての結果に対する信頼度は「低い」か「非常に低い」と判定されてますんで、そのあたりもご注意ください。この手の実験ってのは、参加者が「これはメンタル改善について調べてるんだな」と知っていることが多いんで、それだけバイアスが生じやすんですよ。
では、この問題についてどう考えれば良いのかって話ですが、データをよく見てみると、
- 研究者が参加者を監視した研究ほど、メンタルの改善効果が大きくなっている!
って傾向が一貫して見られるので、ここらへんがポイントになるんじゃないでしょうか。要するに、参加者がちゃんと運動を続けるほどメンタルは改善するよーって話でして、結局は「自分が楽しんで続けられるような運動を選ぶのがベスト!」みたいな結論になりそうだなぁ……と思っております。自分の好きな運動を選んで、できるだけ長く続けるのがコツなんでしょうな。
そんなわけで、「メンタルの改善に効く運動とは?」って問題については、「あなたが最も楽しめる運動を選びましょう!」ってのが現時点での結論になります。具体的にどのような運動がよいかを心配するよりも、個人的に最も楽しく、ライフスタイルの一部に取り入れられるような運動を探してくださいませー。