メンタルが 落ち込んだら「メンタル・タイムトラベル」だ!というレビュー論文の話
https://yuchrszk.blogspot.com/2024/05/blog-post_25.html
メンタル・タイムトラベルで自己肯定感が爆上がりだ!みたいな研究(R)が出ておりました。
メンタル・タイムトラベルってのは、わりと昔から心理療法で使われる手法で、
- 自分自身を時間の前方または後方に投影すること。
みたいに定義されております。いまいちわかりづらいですけど、やるべきことはわりとシンプルです。
- レトロスペクション=過去の出来事をイメージで追体験する。ポジティブな感情を再体験し、自分自身についての洞察を得る。
- プロスペクション=遠い未来の自分をイメージで追体験する。将来の経験、目標、願望、人生の可能性について、精神的なシミュレーションや予測を行う。
って感じで、いずれにせよ過去か未来のどちらかを細かく思い描くのが、メンタル・タイムトラベルの要点であります。
この手法を具体的に使ってみると、こんな感じになります。
- レトロスペクションの例
- 状況:最近、仕事のストレスが原因でメンタルの調子が悪い。特に、新しいプロジェクトのプレッシャーで自信を失いかけている。
- レトロスペクションの実践:リラックスした状態で目を閉じ、5年前に大きなプロジェクトを成功させた時のことを思い出してみる。計画通りに新製品の発表イベントを開催しました。メディアや業界関係者を招き、製品の特長や市場での位置づけをアピールしたところ、発表後の初期販売は好調で、顧客から高い評価を得た。その時の達成感、自信、周囲のサポートを、いま感じているかのように思い出してみる。
- プロスペクションの例
- 状況:子供たちが独立した後の生活に対して漠然とした不安を感じており、自分の将来がどうなるのか、何を目標に生きていくべきかが見えず、メンタル的に不安定。
- プロスペクションの実践:静かな場所でリラックスし、10年後の自分を想像し、その時の生活や目標を具体的に思い描く。10年後は、落ち着いた田舎の家で、庭でガーデニングを楽しんでいる。他にも、毎朝早起きして、近所の友人と一緒にウォーキングをしているシーンや、地域のボランティア活動に参加している場面などを思い描く。
こんな感じで、過去の成功を思い出したり、未来の明確なビジョンを持つことによって、現在の不安がやわらぎ、未来に向けて具体的な目標を設定する意欲が湧いてくることが、過去の研究でわかってるんですよ。
で、上記の論文はバル=イラン大学の先生方によるもので、メンタル・タイムトラベルが、私たちの幸福感を高めてくれる理由を以下のようにまとめております。
- メンタル・タイムトラベルが効果的な理由
- 自尊心が上がる: レトロスペクションは、個人的に意味のある過去のポジティブな出来事に焦点を当てることで、自尊心を高めることができる。これによって、自分の長所や能力を思い出し、自分の人生の物語を活用することができる。レトロスペクションを試した研究によると、その結果、自尊心が高まったことが一貫して実証されている。
また、2011年の研究によると、未来の自分をイメージした参加者は、自分のことを常に肯定的に捉え、それによって現在の自尊心が向上すると報告されている。 - 人生の意味がわかる:レトロスペクションを行うと、過去の出来事が今につながっていることが理解でき、自分の人生をひとつながりのストーリーとして理解できるようになる。それによってアイデンティティと人生の意味の感覚が強化され、メンタルが改善する。
また、2015年の研究によると、未来の自分を思い描く人は、そのイメージに対して「自分のアイデンティティを正しく反映している!」「自分という人間の肯定的な側面が明確になった!」と感じ、現在と未来の間に意味のあるつながりを見出しやすくなることがわかったとのこと。 - コントロール感の改善:過去にうまくいった体験を思い出すことで、エネルギーと活力の感覚が活性化され、自分の社会的能力に対する信頼が上がる。その結果、目標を追求する意欲をかき立てるという研究結果がある。
また、2017年の研究によると、未来のイメージを明確に浮かべた参加者ほど、「人生は自分の意志の力でコントロールできる!」という感覚が高まったとされる。このようなメンタルの変化により、思い描いた未来へのモチベーションが高まり、これらの望ましい結果へのコミットメントを強化するっぽい。
ってことで、過去にせよ未来にせよ、具体的なイメージを思い描くことによって自信がつき、さらにはアイデンティティが強化され、自己コントロール感が生まれるみたいっすね。それによって、最終的にメンタルが改善するわけですな。