プロテイン研究のプロによる講演の内容が勉強になる件
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トロント大学が開催したスポーツカンファレンス(R)を見てたら、プロテイン研究の第一人者であるダニエル・ムーア先生が「プロテインの嘘とホント」みたいな講演をしていて、これが面白かったのでメモ。この講演では、世間に広まっている「プロテインにまつわる誤解」を取り上げてまして、これまでの研究をベースに現時点で最も正しそうな結論を導き出してくれてるんですな。その結果をざっくりまとめておくと、こんな感じになります。
- 私たちの体は、毎日筋肉の1~2%を分解し、それを再構築する作業をくり返している(トレーニングをすると、この数値は上がる)。つまり、人体は2~3ヶ月ごとに体を完全に作り直していることになる。ここで私たちが摂取するタンパク質は、古い筋肉を修復し、新しい筋肉を追加するための材料を提供してくれる。
- しかし、タンパク質のメリットはそれだけではない。たとえば、ハードにトレーニングをした後に、炭水化物とタンパク質が含まれたリカバリードリンクを飲むと、筋肉がグリコーゲンをよりスピーディに補充できるという研究もある。 同じように、タンパク質は脱水状態のときに体液の量を増やす働きがあることを示す研究もあり、そう考えると、リカバリードリンクとしては「牛乳」も使える可能性がある。また、夏場のトレーニングで汗を大量にかいた時なども、プロテインが有効かもしれない。
- プロテインは持久系アスリートにも有効である。一般的に、持久力を重視する人ほど筋肉を増やすのを嫌がるが、それでもタンパク質の摂取は欠かせない。 ランニングの繰り返しは筋肉にダメージを与え、その修復に余分なアミノ酸を必要とするからである。先行研究によれば、持久系アスリートは、必要なエネルギーの5~10%をタンパク質を燃焼させることで得ていることがわかっている。
- ムーア博士が行った実験では、持久系アスリートに数日間にわたって5〜20キロのランニングを完走してもらった後、特別なアミノ酸を摂取させて体内の経過を追跡した。その結果、ランナーが筋肉増強と修復を最大にするためには、1日あたり体重1kgあたり約1.6gのタンパク質が必要だとわかった。この数値からすると、多くの持久系アスリートは、必要な量のタンパク質を摂取できていないことになる。また、多くのランナーに取っては、必要なタンパク質量を満たすためのより安全な閾値は1.8~1.9g/kg/日だと考えられる。一般に、持久系アスリートに対する推奨量は1.2~1.4g/kg/日なので、実際にはかなり多くの量を摂取する必要があるのだと思われる。
- 2018年に発表されたメタ分析は、プロテインの摂取について現時点で最良のエビデンスを提供してくれている。これによると、基本的には、人体はタンパク質をたくさん摂取するほど“ある点までは”筋肉量が増え続ける。しかし、1.6g/kg/日あたりでブレークポイントが訪れ、この量を超えると、タンパク質を多く摂取しても筋肉は大きくならない傾向が見られた。つまり、持久系アスリートだろうが、ボディビルダーだろうが1日の推定必要量とほぼ同じなのだと思われる。プロテイン支持者のなかには、3g/kg/日のメガドーズを推奨するケースもあるが、この考え方は支持されない。
- ちなみに、筋肉の量はタンパク質の摂取量とある程度まで明確に相関するが、タンパク質を摂取する量と筋力の関係ははるかに弱かった。これは、筋力の向上を左右するのは筋肉の量だけでなく、神経の適応やスキルの習得にも左右されるからだと思われる。なので、筋力については、そこまでタンパク質の量は気にしなくても良いのかもしれない。
- 筋肉の成長については、「ロイシン・トリガー」という仮説が存在する。これは、新しい筋肉が増えるかどうかは、ロイシンという特定のアミノ酸の量に左右されるという考え方である。その点で、ロイシンが多く含まれるホエイプロテインは非常に優良なタンパク源だと言える。さらに、ホエイプロテインには必須アミノ酸全般が多く含まれているため、こちらも素晴らしい性能を発揮してくれる。
- また、トウモロコシは、必須アミノ酸の全体的なレベルは低いものの、ロイシンが驚くほど多く含まれている。事実、トウモロコシとホエイプロテインは、どちらも新しい筋肉の合成スピードは同じであることを示したデータも多い。同じように、エンドウ豆、玄米、キャノーラ・プロテインなども、筋肉を増強する性能はホエイとそこまで変わらない。すべてのタンパク質源が同じというわけではないものの、通常はどのようなタンパク質でも筋肉は増やすことができる。
- ここまでの話をふまえて、ムーア先生は、トレーニングの効果を最大限に引き出したいアスリートに向けて、以下の4点を守ることを推奨している。
- 食事と間食は、3~5時間間隔で規則正しく摂る。
- タンパク質は毎回~0.3g/kg/日を目標にする。
- できるだけ、実際の食品からタンパク質を摂るようにこだわる。
- 1日に必要なエネルギーと多量栄養素を満たすようにする。
ということで、いろいろ見てきましたが、「タンパク質は毎回~0.3g/kg/日」ってのは堅実なガイドラインでよろしいですね。つまり、体重が60kgの人は18グラムのタンパク質が目安ってことで、これなら卵3個とかツナ缶とかで十分に達成できますもんね。どうぞご参考までにー。