座りっぱなしの健康をダメージを防ぐ「ベストな休憩タイミング」とは?を調べたメタ分析の話
長時間座りっぱなしで過ごすことが当たり前になりつつある現代社会。デスクワークやテレビ、スマホの閲覧などで、座っている時間を数えてみたら「一日の半分以上が座ったままだった!」みたいな人も多いんじゃないでしょうか。
でもって、近年の研究では、この「座りっぱなし」の生活習慣が、私たちの健康に深刻な悪影響を及ぼしているって指摘が多いんで、どうにかしておきたいところです。「座りっぱなし」の時間が長くなると、
- 血糖値の急上昇:長時間動かないと、筋肉が糖をエネルギーとして消費しなくなり、血糖値が上昇しやすくなる。これが肥満や糖尿病のリスクを高める要因となります。
- 血流の停滞:座ったままの姿勢が続くと、足や腰の血流が滞りやすくなる。その結果、静脈血栓症や足のむくみなどの症状が起こる可能性がある。
- 筋肉の活動低下:座っている間、下半身の大きな筋肉(太ももやふくらはぎなど)はほとんど使われないので、この状態が続くと、筋力低下や基礎代謝の低下が進行しやすくなる。
- メンタルヘルスへの影響:運動不足は、ストレスや不安感、さらにはうつ病のリスクを高めることが報告されている。
みたいな問題が起きるんですよ。こうした健康リスクは、「座りっぱなしの時間が長い人ほど高まる」という関連が多数の研究で示されていまして、座る時間を減らすのがめっちゃ重要だってのは間違いなさそうなんですよね。
そこで、今回新たに「座りっぱなしをどのくらいの頻度で中断すれば健康リスクを軽減できるのか?」を調べたメタ分析(R)が出てましたんで、この結果をもとに座りすぎの問題と解決策を詳しく掘り下げてみましょう。
このメタ分析は、座りっぱなしを中断する頻度とその健康効果について調べたもので、13件のRCTをまとめた内容になっております。実験の対象になったのは健康な成人だけでなく、肥満、プレ糖尿病、2型糖尿病の成人も含む211名。年齢は24~66歳で、41%が女性だったそうな。
だいたいの実験では、座っている時間を中断した場合に(たとえば、15〜30分ごとに中断する場合と、45〜120分ごとに中断する場合を比較)、どちらが血糖値の改善に効果的かを検証しております。
その結果として明らかになったポイントをまとめておくと、ざっくりこんな感じです。
- 血糖値の低下:15〜30分ごとに座り時間を中断する方が、45分以上座り続けた場合よりも血糖値の改善効果が高い(ただし効果は小さくて、Hedge's g = -0.30, p = 0.03)。
- 中断の方法:中断は主に「ウォーキング」(全体の62%)によって行われ、他には立ち上がるだけ、または軽い筋トレも使用された。ウォーキングなどの軽い運動が、座りっぱなしの中断方法としては最もやりやすくて良いと考えられる。
- 運動時間:中断時の運動は1〜10分の範囲で、頻繁に中断する場合は平均3分程度。
- 効果がなかったもの:一方で、インスリン感受性、血圧、血中中性脂肪、血管機能に関しては有意な差が見られなかった。ここらへんの健康指標への影響はまだ十分に解明されていないので注意。
ということで、一言で言えば「15~30分ごとにイスから立ち上がって、軽い運動1~5分間ぐらいやろうぜ!」ってことですな。
そんなわけで、この結果をもとに、座りっぱなし生活を改善するための具体的な方法を考えてみると、だいたい以下のようになるんじゃないでしょうか。
- タイマーを使う:デスクワークをする際は、30分ごとにタイマーをセットしておくとよさげ。タイマーが鳴ったら立ち上がって軽く動くことを習慣化していくのが吉。
- 短い運動を取り入れる:イスから立ち上がった時に行う運動は、簡単なものでOK。たとえば、「その場でウォーキング(1~3分)」「スクワットや軽いストレッチ」「デスク周りの整理整頓」「階段を1フロアだけ上り下りする」みたいな感じ。個人的には、階段の上り下りが良いかなー。
- 「ながら動作」を習慣化:電話をかけるときに立つ、会議中にスタンディングデスクを使うなど、日常のルーチンに「ながら動作」を取り入れるのもよし。これによって無意識に座り時間を減らせるんで。
- 外出時にも実践:在宅勤務やオフィスワークだけでなく、電車の待ち時間や友人との会話中にも立ち上がる癖をつけると、さらに健康効果を高められることでありましょう。
って感じで、これぐらいやっておけば、まぁ座りっぱなしの害はそこそこ避けられるんじゃないでしょうか。
ちなみに、今回のメタ分析にはいろいろと弱点もありまして、対象者が211名しかいないし、血糖値以外の健康指標については不十分なデータしかないので、もうちょい事例が溜まっていかないと判断はしづらいところであります。特に糖尿病や肥満の人と健康な人では、運動の効果に差がある可能性が大きいので、自分の体調に合わせた運動量を見極めるのが重要になるでしょうな。
その意味で、「15~30分ごとに1~3分間動く!」ってのがベストな答えだとは言えないんだけど、座りっぱなしの時間を小まめに防ぐのが体に良いのは間違いなさげなんで、30分ごとに立ち上がり3分間ぐらい体を動かすってのを目安にしてみるのは悪くないでしょう。それが面倒なら、いっそスタンディングデスクの導入を考えてみると良いのではないでしょうか。