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見る・嗅ぐ・触れるだけで健康になる植物のパワーを解説した本を読んだ話

 


グッド・ネイチャー(Good Nature: Why Seeing, Smelling, Hearing, and Touching Plants is Good for Our Health)』って本を読みました。サブタイトルは「植物を見て、香って、聞いて、触れることが健康に良い理由」って感じでして、「NATURE FIX」なんかに近い内容ですね。

 

著者のキャシー・ウィリス先生はオックスフォード大学で生物学を教えている博士で、生物の多様性をずっと研究している方だそうな。このブログでも「自然はいいよー」って話はずっと書いてますが、本書も植物の視覚効果によるストレスの軽減、自然の音による痛みの緩和、喜びや活力の感覚といったメリットに踏み込んでいて、非常に良い感じでした。

 

では、本書から勉強になったところをピックアップしてみましょうー。

 

  • 近年の研究では、デスクの上、PCのスクリーンセーバー、窓の外にある植物を1分間見るだけでも身体に自動的な変化が起こり、生理的・心理的ストレスが軽減することがわかっている。この変化には、心拍数の低下、脳の鎮静、不安の軽減などが含まれる。

 

  • ある研究では、参加者にデスクに座ってもらい、森の景色か都会の景色のどちらかのスクリーンセーバーをPCに表示させた。 その間、被験者にさまざまな測定を行ったところ、 90秒以内に大きな違いが現れ、緑の自然を眺めた人の方が都会の画像を見ている人よりもはるかに落ち着いていることが示された(心身ともに)。

 

  • 他の研究では、ストレスを感じた時に緑の植物や緑の地平線を見ると、ストレスレベルがより早く低下することが示されている。そのため、次にストレスを感じたときは、植物や自然の風景を眺めてみるのがとりあえずおすすめ。

 

  • ホテルのロビーやスパなどに入ると、スピーカーから自然の音が流れていることが多いはず。これは科学的にも正しく、コマドリ、ウグイス、ツグミなどの鳥のさえずりや、葉を揺らす風の音、小川のせせらぎなどを耳にすると、緑の植物を目にしたときと同じような反応が起きることがわかっている。これは、神経系に自動的な変化が起こり、肉体的にも精神的にもストレスを感じにくくなるのが理由である。

 

  • ただし、すべての自然音が心を落ち着かせるわけではない。当然のことながら、ライオンの唸り声を聞いて落ち着ける人はいないし、カラスやその他の大型の鳥の甲高い鳴き声は、短く断続的な騒音でしかないため、ストレスを増大させてしまう可能性がある。これらの調査結果は世界中で確認されており、米国、ヨーロッパ、日本で行われた研究でも、鳥の金切り声のような鳴き声が人を落ち着かせることはないと結論づけている。

 

  • さらに、「特定の音」には、痛みのレベルを減らす効果があることも分かっている。ある実験では、病院で手術を受ける患者を対象に調査を行い、3つのグループを比べた。1つ目のグループにはノイズキャンセリングヘッドフォンを装着させ、2つ目のグループは自然音の録音を聴かせ、3つ目のグループは病院内の雑音を聴かせている。すると、自然の音を聞いた患者の唾液中のアミラーゼ値が著しく低くなり、痛みのスコアも低くなった(アミラーゼは、ストレスを感じると分泌量が増えることが知られている)。

 

  • 植物の香りにも大きなメリットがある。植物の香織をかぐと、香りを発生させる分子の一部が肺の膜を通過して血液中に取り込まれるため、自然の一部が体内に取り込まれる。被験者に松林を歩いてもらった実験では、全員に2時間ほど森を歩いた前後で血液を検査した。すると、森を歩く前には血液中のピネン(松の木が放出する香り分子)の濃度はほとんどゼロだったのに対し、歩いた後はかなりの量が検出された。

 

  • 多くの植物の香りは、体内に取り込まれると、私たちの健康にポジティブで重要な影響を与える。代表的なのはラベンダーで、抗不安薬と同じ体内のシステムに作用する化合物が含まれている。ある実験では、睡眠中にラベンダーの香りを嗅いだ被験者は、睡眠時間が長くなり、睡眠が深くなった。

 

  • さらに、スギやヒノキなどが発する香りを吸い込むと、血液中のナチュラルキラー細胞のレベルが著しく上昇することも証明されている。ナチュラルキラー細胞は、癌細胞やウイルス細胞を攻撃してくれるもので、深刻な病気を防御する大事なメカニズムである。スギやヒノキによるNK細胞の上昇は、香りをかいでから数日間にわたって続く。

 

  • 触覚も重要である。木の表面、アルミニウム、ガラスをなでた際に、人間のストレスがどう変化するのかを調べた研究によれば、木を触わった被験者にのみ心拍数の低下や、ストレスホルモンの低下などの現象が見られた。そのため、積極的に木の表面を撫でてみたり、植物の葉に触れたりするのは、心を落ち着かせるのに役立つと考えられる。

 

  • 自然の中での運動も非常にメンタルへの効果が大きい。多くの研究が、都会よりも公園や木々の間を走る方が、より大きな健康効果を得られることを示しており、ある研究では、男性の被験者たちに、公園か都会のどちらかを同じペースで15分間歩いてもらった。すると、公園を歩いた人々は、より落ち着いた態度で、血圧も低く、幸福度も高かった。

 

  • もっとも、緑地を歩くことで健康メリットを得るには、ある程度の時間が必要だと思われる。ミシガン大学の教職員を対象にした別の研究では、週3回、8週間にわたって公園で自然体験(座る、歩く、またはその両方を組み合わせたもの)を指示した。その結果、ストレスレベルが最も大きく下がるのは、自然の中に入ってから20分後に起こった。それ以上の時間を費やしても効果は大きくならなかったが、20分未満ではほとんど効果が見られなかった。自然の中で過ごす時間は、週に数回、20分程度で十分だと考えられる。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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