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今週の小ネタ:マインドフルネス瞑想が脳を変える?ホルモンバランスで政治への意見が変わる?SNSは本当にメンタルヘルスに悪いのか?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

マインドフルネス瞑想が脳を変える?

マインドフルネス瞑想については、まだまだ良い実験が少ないので「どこまで意味があるの?」ってのはわからない状態ですが、個人的には「脳のDMNが鎮まりそうだから良いかー」ぐらいに思っております。短期的に落ち着くのは間違いないですしね。

 

といったところで、オーストラリア国立大学の研究チームが、「瞑想をやってる人は休息中の脳波活動が普通とは違ってるよー」って研究(R)を発表してて面白かったです。

 

これは48名の瞑想経験者(最低6か月以上の練習経験あり)と44名の非瞑想者を対象にしたもので、参加者には「瞑想をせず、ただ自然に休息する状態」を保つよう指示。その間に脳波(EEG)の測定を行って、以下の4つの周波数帯に着目して解析をしたんだそうな。

 

  • シータ波 (4~8Hz):集中力や作業記憶に関わる
  • アルファ波 (8~13Hz):注意抑制や思考の静穏化に関わる
  • ベータ波 (12~25Hz):覚醒や興奮に関わる
  • ガンマ波 (25Hz以上):高次認知機能や感覚統合に関わる

 

その結果、瞑想をずっとやってる人と未経験者の間には、以下のような違いが見られたらしい。

 

  1.  シータ波の増加(特に後頭部):シータ波は集中力や作業記憶に関与するとされていて、瞑想経験者ではその振幅が未経験者よりも高かった。この傾向は、後頭部で特に顕著で、瞑想が情報処理能力を強化しているのかもしれない。


  2.  アルファ波の分布の違い:瞑想の未経験者は、主に後頭部でアルファ波が強い活動を示すのに対し、瞑想経験者では前頭部でも高い活動が観察された。これは、瞑想によって「不要な情報や雑念を抑制する能力」が向上していることを示しているのかも。


  3.  ガンマ波の増加(特に前頭部):ガンマ波は、高次認知機能や感覚の統合に関連していて、瞑想の経験者は前頭部での活動がめっちゃ増加していた。これは、瞑想が脳の神経可塑性を促進し、注意力や感覚処理能力を強化する可能性を示しているのかもしれない。

 

ってことで、個人的には「なかなか熱い!」と思わせる結果が出てまして、研究チームは「瞑想は全体的な脳活動を増加させるわけではなく、特定の周波数帯に絞った変化を引き起こすのかもしれない」と仰っておられました。

 

まぁ、脳波ガチ勢の先生などと話すと、「こんな脳波テストでは何もわからない!」みたいなことも言われちゃうんで、そこはご注意ください。とはいえ、今回の結果を見ると「やっぱ瞑想をやってると普段から注意力やセルフコントロール能力が上がるのかなー」って希望を持っちゃいますよねぇ。

 

 

 

ホルモンバランスで政治への意見が変わる?

政治的な意見はホルモンによって左右されるかも!」っていう面白論文(R)が出ておりました。ホルモンバランスによって人間の思考や態度が変わるってのは、昔からよく言われてきたことではあるんですけど、今回は特に男性ホルモンに的を絞った内容になってます。

 

この研究は、「男性の政治に関する意見がホルモンの変動とどれだけ関連しているのか?」 をテーマにしたもので、30名の健康な男性を対象に、テストステロンとコルチゾールという2つのホルモンと、政治的スタンスの関係を調べております。

 

テストステロンとコルチゾールについて、簡単におさらいしておくと、

 

  • テストステロン:主に男性の精巣で生成されるステロイドホルモンで、筋肉量や性欲の調節に関わる。心理的には、自信や競争心、リスクを取る行動を高める働きがあり、時に攻撃性を高めることも。過剰になると感情のコントロールが難しくなるケースもある。

 

  • コルチゾール:副腎で生成されるストレスホルモンで、体がストレスに対処する際に重要な役割を果たす。短期間であれば役に立つが、慢性的に高い状態が続くと、不安や疲労、免疫機能の低下を引き起こす。

 

って感じです。どちらも、このブログではおなじみのホルモンですな。

 

で、調査では、参加者たちに対して次のような事件への意見を尋ねたんだそうな。

 

  • アメリカ–メキシコ間の壁建設(ドナルド・トランプ元大統領の移民政策)
  • イギリスのEU離脱(Brexit)

 

それぞれに対して賛成か反対かを尋ねた後、ホルモンとの関連を探ったところ、以下のような結果が見られたらしい。

 

  • 日常的なホルモンと政治への意見は連動している:テストステロンとコルチゾールは、どちらも午前9時に最も高く、午後になるにつれて低下。これと連動して、政治的な意見も同じく午前中に最も強い傾向があった。

 

  • 運動でホルモンが増えると政治的な意見も強まる:参加者に短時間の激しいエクササイズを行ってもらい、テストステロンとコルチゾールを上昇させたところ、それと連動して政治的な意見も強まった。

 

  • 悲しい動画でホルモンが減ると政治的な意見も弱まる:参加者に悲しい動画を視聴してもらい、テストステロンを下げたところ、みんなの政治的意見も弱まった(ただし、コルチゾールはむしろ増加している)。

 

というわけで、テストステロンが高まると自分の政治的な意見が強まり、低下すると弱まるという傾向が見られた点みたいっすね。テストステロンは自信や競争心を高める働きがあるので、政治的意見をより積極的に主張したくなるのかもしれませんな。

 

一方、コルチゾールの影響は少し複雑でして、ストレスが増えると注意力や感情のコントロールが変化するため、これが政治的な意見の形成に影響している可能性はありそう。ただし、コルチゾールと意見の関連性はテストステロンほど強くなかったらしいので、ストレスレベルはそこまで影響しないのかも……ってとこっすね。

 

もちろん、これで因果関係を判断するのは難しいんだけど、私たちの態度や思考が思った以上に身体的な要因に影響されてるってのは意識しておいても良いでしょうね。たとえば、午前中は自分の意見が強まりやすい傾向があるので、大事な議論や決定は日中や午後に行うほうが冷静に判断できるかもですし。

 

逆に言えば、自己主張が必要な場面では、エクササイズでテストステロンを増やして自信をブーストさせるのもありでしょう。いずれにせよ、「冷静な判断を下すには、自分の身体の状態を知ることが大切」というのは間違いなさそうですよねー。

 

 

 

SNSは本当にメンタルヘルスに悪いのか?

「SNSの使いすぎはメンタルに悪影響!」って話は無数にありまして、実際にも少なくないわけです。しかし、最新の研究(R)によると、この“常識”にはもうちょい微妙な関係があるんだよーって話になっていて、面白かったです。

 

これはカーティン大学などの研究チームによる調査で、SNSの使用時間とメンタルヘルス(例えば、うつ、不安、ストレス)との関係を客観的なデータで検証したものです。具体的には、17歳から53歳の参加者401名を対象にしてまして、

 

  • スマホのスクリーンタイム機能を使って、SNSの使用時間を客観的に測定。対象となったプラットフォームはInstagram、TikTok、Snapchat、Facebook、Twitter(現X)。

 

  • 「抑うつ・不安・ストレス尺度(DASS-21)」を使ってメンタルヘルスを把握。

 

って2種類のデータを集め、どんな関係が見られるかを調べたんだそうな。その結果なにがわかったかと言いますと、

 

  • SNSの総使用時間と抑うつ、不安、ストレスには有意な関連性がない
  • TikTokユーザーを対象とした場合、注意をコントロールする能力にわずかなポジティブな影響が見られた。

 

って感じだったらしい。つまり、「SNSを長時間使うからといって必ずしもメンタルヘルスが悪化するわけではない」ってことですな。それどころか、TikTokについてはポジティブな影響すらあるかもしれないってことで、なかなか驚きですねぇ。TikTokみたいな短い動画は批判されがちだけど、「次々に変わる刺激に対する素早い適応力」を鍛えるのには役立つのかもしれませんね。

 

もちろん、今回の研究は「SNSは無害!」と結論づけたわけじゃないんだけど、SNSに関する先行研究を見ていると、おそらく以下のようなことが言えるかもしれません。

 

  • アクティブな使い方が大事:投稿や友人との交流など、能動的にSNSを活用する分には、SNSは問題にならない。一方で「スクロールだけ」みたいな受動的な使い方はストレスを増加させるリスクがある。

 

  • プラットフォームの特徴を理解する:Instagramは視覚的刺激が多く、TikTokは短時間で多くの情報を処理する能力を要求するので、自分に合ったプラットフォームを選ぶと良いかもしれない。

 

  • 使用目的をコントロールする:おそらく、SNSはどれだけ使うかではなく、どのように使うかのほうが重要なので。「仕事の宣伝をする!」「限られた友人と交流する!」みたいに目的を絞っておくと、SNSの闇に飲まれずにすむでしょう。

 

まぁSNSの使い方にはまだ正解がないですけど、どのデータを見ても「アクティブさが大事!」ってあたりは一致してるようなんで、そこらへんを押さえてご利用いただくと良いんじゃないでしょうか。

 


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