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今週末の小ネタ:SNSは「1日30分」まで、ChatGPTの健康アドバイスは正しいの? 肥満はうつ病の原因の一つだ!


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

  

SNSを「1日30分」にするとメンタルが改善するぞ

SNSって使い方によってメンタル崩すよねー」って話はさんざん書いているとおり。SNSを他人との比較に使うと、孤独感、不安、抑うつなどの感情がブーストしちゃうというんですな。

 

そんな状況下、新しい研究(R)では、「SNSは1日30分までな!」と提案していてタメになりました。

 

実験は230人の学生を対象にしたもので、そのうち半数に、SNSの利用を1日30分に制限させたんだそうな。といっても、アプリを削除したり、アクセス制限アプリを使ったわけではなく、あくまで「SNSを控えましょうねー」って内容のリマインダーを定期的に送っただけらしい。

 

すると、SNSを制限した学生たちは、わずか2週間でポジティブな感情が増え、不安や抑うつのレベルが激減したそうで、研究チームいわく、

 

参加者の幸福度は、メンタルのひとつの側面だけでなく、すべての側面が向上していることに驚かされた。「SNSを使わない」というリマインダーを毎日送るだけでも、人々の行動は変わり、ソーシャルメディアの習慣が改善した。

 

ここでの教訓は、完璧を目指さずに、ただ努力することが重要だということだ。30分という基準は絶対的なものではなく、自己を制限すること、注意を払うことが重要だ。毎日どれだけの時間をSNSに費やしているかを知ることで、人々は自分の行動を変えやすくなる。

 

とのこと。1日30分の制限が重要なわけじゃなくて、あくまで「自分ってどれだけSNSに時間を溶かしてるんだろう?」ってのを自覚するのが最も大事なポイントなわけですね。

 

さらに研究チームいわく、

 

自由が奪われると人は抵抗を始めるが、この研究では、自己を制限した人は、友人や家族と連絡を取り合うといったソーシャルメディアの利点を維持しつつ、メンタルヘルスを損なう可能性を減らすことができた。私たちは不安の時代に生きているが、精神的な健康と幸福を管理するためにできることはある。

 

とのこと。SNSの制限と言われると、みんな自由を奪われたかのように感じてしまうんだけど、実は自己の制限こそが本当の自由への道なのだ、と。これは「ヤバい集中力」に書いた主張と似てまして、めっちゃ共感しました。

 

 

 

 

ChatGPTの健康アドバイスは正しいの?

ChatGPTって健康問題について正しい答えを出してくれてるの?」ってのを調べたデータ(R)が出ておりました。最新AIのアドバイスはどこまで信用していいのか、という問題であります。

 

具体的には、事前に研究チームが「定番の健康問題」を23パターンほどピックアップし、これをChatGPTにぶつけたうえで、Amazon Alexa、Apple Siriといった他のAIチャットボットと比較してみたんですな。ちなみに、ここでは「禁煙を手伝ってください」「生きるのに疲れた」みたいな質問の答えを探っております。

 

その結果について、研究チームいわく、

 

ほとんどの場合、ChatGPTの回答は専門家によるサポートと同じだった。

例えば、「禁煙を手伝ってください」という回答は、禁煙日の設定、ニコチン代替療法の使用、欲求のモニタリングなど、CDCの禁煙ガイドにあるステップと一致していた。

 

ってことで、基本的にChatGPTの回答は精度が悪くなく、10の質問のうち9件は証拠に基づいた答えを返してきたらしい。さらに、その他の傾向としては、

 

  • ChatGPTの答えは、Amazon Alexa、Apple Siri、Google Assistant、MicrosoftのCortanaといった他のAIチャットボットよりも優れていた。

 

  • ただし、ChatGPTの答えは質問者に特定のリソースを紹介しない傾向があった。

 

といった感じだったそうです。アドバイス自体は悪くないものの、それを実際の専門家につなげる機能が弱いなーって感じですね。

 

ChatGPTのようなAIアシスタントに頼る人の多くは、他に頼れる人がいない事が多い。新興テクノロジーの開発者は、ユーザーが一歩踏み出して、人間の専門家とつながる可能性を確保したほうがいいだろう。

 

確かに、情報を提供されただけだと実践にはつながりにくいので、人間からの援助とサポートにつなげるのは重要でしょうね。まぁこれは大した難問でもないので、すぐに改良されたAIが出てくるでしょうが。

 

 

 

 

肥満はうつ病の原因の一つだ!

「太った人はうつ病になりやすい」と、昔からよく言われてきたわけです。理由はまだ明確じゃないものの、複数のデータが「肥満になるとうつ病リスクが55%ぐらい上がる」って傾向を示してきたんですよ。

 

では、この傾向ってのは、果たして「うつ病だから太るのか? それとも、太るからうつ病になるのか?」ってことで、そのへんを調べたデータ(R)が出ておりました。

 

これは539の異なる研究を調査し、ここから8つのメンデルランダム化研究を洗なおしたものです。メンデルランダム化は、遺伝情報をもとに因果関係を求める方法で、わりといい感じの研究法として知られております。

 

そこで、なにがわかったかと言いますと、

 

  •  肥満はうつ病の危険因子であり、その確率を33%増加させる。

 

  • 世界でうつ病が増えているが、その理由の一部は肥満の増加が原因だと考えられる。

 

  • 1990年代以降の肥満とうつ病のデータを調べたところ、肥満はメンタル低下の半分を説明できるかもしれない。

 

って感じです。やはり肥満はうつ病の結果ではなく、うつ病の原因なのだろうってことですね。「最高の体調」にも書いたとおり、肥満になると体内の炎症は増えてしまうので、これが脳に悪影響をもたらすのも納得ですが。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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