パーソナルトレーニングってどこまで意味があるのか問題
筋トレで筋肉をつけたい!と思ったとき、誰もが一度は「プロの指導を受けたほうがいいのか?」「自分でやってるだけで十分なのか?」と悩んだ経験があるんじゃないでしょうか。
パーソナルトレーニングは魅力的だけど、それなりにお金がかかるし、それだったらジムや自宅で自分のペースで鍛えるだけで良いのでは……みたいに思うのは自然なことでありましょう。私も我流でやってるところは多いので、定期的に第三者からフォームのフィードバックをもらうようにしてますし。
では、実際のところ、「パーソナルトレーニング」と「自主トレーニング」はどちらが優れているのでしょうか? そんな問題を調べた研究などないように思うかもですが、実はソレント大学などの先生方がメタ分析(R)を行ってくれてたりします。
この研究は、12件のランダム化比較試験(RCT)と500名以上のデータを対象に、「指導付きトレーニング」と「自主トレーニング」の効果を比較したものです。全体として信頼度の高いデータになってまして、参考になる結論を得られそうな内容になっております。
分析の結果で注目すべきポイントをまとめておくと、だいたいこんな感じになります。
- 筋力への影響:指導付きトレーニングは、自主トレーニングよりも筋力を向上させる効果が高かったとのこと。具体的には、標準化された効果量(Cohen’s d)が0.40とされてまして、「中程度の効果がある」と評価されてまして、個人的には思ったよりも差が出たなーって印象。おそらく、パーソナルトレーナーがいることで、フォームや努力の質が高まり、筋力が効率よく向上するんだろうなー、という。
- 筋肉量(筋肥大)への影響:筋肉量の増加(筋肥大)に関しては、トレーナーの有無による違いはほとんど見られなかったらしい。おそらく、筋肥大においては、トレーニングボリューム(全体の負荷量)や強度が十分に確保されていれば、指導がなくても大きな効果が得られるってことなんでしょうな。
この結果について、研究チームは「指導の効果は筋力の向上に限定されており、その理由としては主にトレーニングの継続性や努力の質が向上するため」と指摘しておられます。逆に言えば、自主トレーニングでも、これらの要素をちゃんと押さえることができれば、指導がなくても十分な成果が得られるってことですな。
ちなみに、近年はリーマンカレッジなどの先生も介入研究(R)をしてまして、こちらでは36名の筋トレ好きを対象に、指導付きトレーニングと自主トレーニングの効果を比べてます。
実験の期間は8週間で、みんなに同じトレーニングメニューを指示して、その際に、
- 指導付きグループ:トレーニング中、常にフォームチェックやフィードバックを受けた。
- 自主トレーニンググループ:指導なしで自分のペースでトレーニングを行った。
って感じでわけて、どんな違いが出るのかを見たんだそうな。その結果がどうだったかと言いますと、
- 筋肉の厚み:指導付きグループでは、上腕三頭筋(腕の裏側)と外側広筋(太ももの筋肉)の厚みが、自主トレグループよりも有意に増加したとのこと。
- 筋力(1RM)の向上:スクワットの最大挙上重量(1RM)は、指導付きグループのほうがガッツリと向上したらしい。一方で、ベンチプレスは指導の有無による差はなかったとのこと。
って感じだったそうな。上記のメタ分析とは異なり、こちらでも指導付きトレーニングによって筋肉も増えてますが、その理由としては、
- スクワットみたいに複数の関節を使う種目は特にフォームが重要なため、トレーナーがいたほうが筋肉の量が増えるのは理解できる。
- ベンチプレスとかは比較的フォームが単純なので、指導の効果が出にくいのだろうなーと思われる。
みたいなところじゃないかと愚考しております。つまり、パーソナルトレーニングのメリットと限界をまとめてみると、こんな感じになるんじゃないでしょうか。
- パーソナルトレーニングのメリット
- フォームの改善:フォームが崩れると、ケガのリスクが高まりますが指導者がいれば安全。
- トレーニングの質向上:指導者のフィードバックや励ましによって、普段以上の努力が引き出されることがあり、これが筋力向上につながる。
- トレーニングの継続性:自主トレでは挫折しがちな人でも、指導者がいることで継続しやすくなる。
- パーソナルトレーニングの限界
- 筋肥大への影響は小さい:筋肉量の増加に関しては、指導がなくてもトレーニングボリュームと強度を適切に管理すれば、ほぼ同等の結果が得られるっぽい。
- フォームができていたら効果は薄い:当たり前だけど、指導の効果は種目や個人の状況に依存しまするので、すでにトレーニング経験が豊富な人や、わりと単純な種目では、指導のメリットが薄れる。
現時点では、ここらへんの要素を天秤にかけつつ、トレーナーに頼むかどうかを考えるのが良さそうっすね。まぁ個人的な考えかたとしては、
- 初心者は指導を活用すべし:トレーニングを始めたばかりの人は、まず指導を受けて基礎を固めるほうが良いのは間違いない。特にスクワットやデッドリフトはフォームが重要なので、専門家のアドバイスを受けるほうがおすすめ。
- 経験者は「部分的な指導」を取り入れる:中上級者の場合は、全てのセッションで指導を受ける必要はなし。月に1回フォームチェックを受けたり、動画撮影で自分のフォームを確認し、専門家にフィードバックを求めるぐらいでよさげ。
- 自主トレはセルフ管理が大事:パーソナルトレーニングは心理的なメリットも大きいので、指導者を使わない時は、RPE(主観的運動強度)を活用して毎セットの努力レベルを意識する。同時に、筋トレアプリとかで自分の進捗を記録し、数値を基準に目標を設定する。
みたいになりますかね。確かにパーソナルトレーニングには相応のメリットがあると思うんだけど、筋肉量ってとこでは絶対不可欠じゃないので、そこは自分が何を求めているかによって判断していただければと。どうぞよしなにー。