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今週の小ネタ:プロバイオティクスでメンタルは変わる?オリーブオイルは肌に良い?キウイでメンタル改善?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

 

うつと腸内細菌の意外な関係──プロバイオティクスでメンタルは変わるのか?

ここ数年で「腸内環境とメンタルの関係」がだいぶメジャーになりまして、このブログでも「脳腸相関」なんて話をよく取り上げております。

 

ただ、まだ「よくわからんなー」って状態なのが、「腸にいいものを食べれば気分も上がる!」みたいな話が本当なのかってところです。そこそこ研究は進んできたんですけど、まだそこまで確定的でもなかったりするんですよね(個人的には正しいだろうと思ってますが)。

 

ということで、ここでは「腸内細菌がうつ症状や不安にどう影響するか?」を調べた新しいメタ分析(R)を見てみましょう。プロバイオティクス(善玉菌)、プレバイオティクス(善玉菌のエサ)、そしてシンバイオティクス(両者の組み合わせ)が、メンタルにどう効くのかってポイントを掘り下げてくれてて、なかなか使える内容になってますんで。

 

まずは研究の基本情報をざっくりまとめてみると、

 

  • 対象はうつ症状のある1,405人(計19件のRCT)
  • 試験の内容は、16件がビフィズス菌や乳酸菌などのプロバイオティクスを使用、2件がイヌリンやラクチュロースなどのプレバイオティクスを使用、1件が両方を合わせたシンバイオティクスを使用
  • 全試験でうつ症状の変化を調べ、7試験で不安症状への影響を見ている

 

という感じで、腸内環境とメンタルの関係をダイレクトに検証した内容になってます。ありがたいですねぇ。

 

で、気になる結果がどうだったかと言いますと、「プロバイオティクスやプレバイオティクスで、うつ・不安が改善する傾向が見られた!」だったそうです。つまり、「腸を整えると気分も整う!」って考え方に対して、ある程度の裏づけが得られたわけですね。

 

だが、この研究には注意点もいろいろありますんで、そこも押さえておきましょう。具体的には、

 

  1. 使用された菌の種類や量がバラバラ:単一の菌株(例:Lactobacillus rhamnosus GG)を使った研究もあれば、5〜6種類の混合菌を使った研究もある。プレバイオティクスもイヌリンだったりラクチュロースだったりで、どれが効いたのかは不明。


  2. 用量や期間にもバラつきあり:期間は数週間〜12週間とバラバラで、プロバイオティクスの含有量(cfu)も試験によって大きく違う。


  3. コントロール群の設定がまちまち:偽薬を使っている試験もあれば、まったく介入しない試験もある。つまり「本当に菌の効果か?」「プラセボか?」の見極めが難しい。

 

といったあたりが足を引っ張っていて、研究チームも「結論を出すにはまだ時期尚早」とコメントしておりました。このあたりはご注意ください。

 

ただし、このメタ分析が面白いのは、19件のデータ中13件が「バイアス低リスク」だった点であります。つまり、実験の質はそこまで悪くないわけで、それなりに信じてもいいんじゃないかなーって印象ですね。

 

なので、現時点では、

 

  • 腸内環境を整えることで、軽度〜中等度のうつや不安を改善できる可能性はある
  • ただし、どの菌が一番効くかはよくわからんし、プロバイオティクスの量・期間・相性によっても効果が変わるので、なんとも言えない

 

ぐらいに考えておくのがよさそうであります。「じゃあ自分も試してみるかー」と思った方は、以下のガイドラインでお試しください。

 

  • 試すなら「数週間〜1ヶ月」は継続する:腸内細菌はすぐには定着しないので、最低でも3〜4週間は様子を見るのがベター。
  • 混合タイプよりは「単一菌株」の製品から試すのがおすすめ:複数菌をミックスした製品は、効果のあるものとないものが混ざっている場合があり、何が効いてるのか分かりづらくなっちゃうんで、最初は「ビフィズス菌だけ」みたいなシンプルな製品を使うと良いでしょう。
  • メンタル以外の効果にも注目する:便通の改善、睡眠の質、肌の調子など、体の反応も見ながら判断してくださいませ。メンタル改善がメイン目的でも、副次的な効果が出ることもよくありますんで。

 

まあもしメンタルに影響がなかったとしても、プレバイオティクス+プロバイオティクスのセット(=シンバイオティクス)は体に良いだろうと思いますし、腸と脳がつながってるのは間違いないので、試してみちゃいかがかと思うわけです。

 

 

 

オリーブオイルは肌に良い?

オリーブオイルを使った美容アイテムがよいぞ!」って研究(R)が出ておりました。これは54人を対象にしたランダム化比較試験(RCT)で、「ワセリン vs オリーブオイルは、どちらが肌にいいのか?」を1時間という超短期で比較しております。短期すぎて「参考程度」にしかなりませんが、それでもいくつか興味深い結果が出てましたんで、サクッと見ていきましょう。

 

実験の流れはシンプルで、

 

  1. 参加者は平均年齢29歳の健康な成人54名
  2. 参加者の両腕に、それぞれオリーブオイル(エクストラバージン、0.2ml)かワセリン(0.2ml)を塗る、または何も塗らない(コントロール)のいずれかを実施
  3. 塗布後1時間でふき取り、その後に各種測定を実施

 

みたいになります。要は「同じ人の腕に3パターンの処置をして、その効果を比べた」感じでして、これによって個人差の影響を最小限に抑えることができるわけですね。

 

で、結果は以下のような感じでした。

 

  • オリーブオイルもワセリンも効果があったもの
    • 赤み(紅斑)の減少
    • 皮膚の角質剥がれ(落屑)の減少
    • 肌の水分量アップ(保湿)

 

  • ワセリンの効果
    • 経表皮水分喪失(TEWL)の減少(肌の水分が外に逃げにくくなった)
    • 肌の弾力を高める効果も、オリーブオイルより大きい
    • 角質の剥がれの抑制力も、オリーブオイルよりやや強め

 

  • オリーブオイルの効果
    • 肌のターンオーバーを示すマーカーが上昇した(つまり、肌の“再生力”が高まった可能性ある)
    • 具体的には、「皮膚の新陳代謝をうながす指標」が、オリーブオイルを塗った部分で最も上昇していた。

 

ということで、ざっくり言うと「ワセリンは肌のバリア機能を物理的に強化するのが得意で、オリーブオイルは「肌そのものを活性化させる」方向に働く可能性があるってことですね。これは、ワセリンは肌表面に膜を張って水分を閉じ込める働きを持つのに対して、オリーブオイルはポリフェノールやビタミンEの抗酸化作用が大きいってことなのかもですな。

 

じゃあ、どっちを使えばいいの?ってことですけど、短期的には以下のような住み分けができるんじゃないかと。

 

  • ワセリンが向いているケース
    • とにかく乾燥がひどい
    • アトピーや敏感肌で、外部刺激から守りたい

 

  • オリーブオイルが向いているケース
    • 肌の再生やターンオーバーをうながしたい
    • オイルの使用感が好き(ベタつきが少ない)
    • 抗酸化ケアを意識している

 

まあ、この研究はたった1時間の効果しか見ていないので、「継続的に使ったらどうなるの?」とか、「肌タイプによって合う合わないはあるの?」といった疑問にの答えはまったく分からないんですけども、とりあえずオリーブオイル系の美容アイテムにも、それなりの「強み」がありそうな感じですね。「イニスフリー(innisfree) オリーブリアル ローション」とか、使ってみるべえか。

 

 

 

キウイでメンタル改善?

キウイでメンタルが改善する!」って研究(R)が出ておりました。これはニュージーランドの研究チームが行ったランダム化クロスオーバー試験で、内容をざっくりまとめておくと、

 

  • 参加者は軽度〜中等度の心理的ストレスを抱える成人26名で、年齢は18〜60歳
  • 実験期間は4週間で、その後に2週間のウォッシュアウト期間あり
  • 実験では、みんなに1日2個のゴールドキウイを食べてもらうか、普段どおりの食生活をしてもらう

 

みたいになります。1日2個のキウイでどんな違いが出るかをチェックしたわけですね。クロスオーバー型なので、被験者ごとのバラつきを抑えられるのがポイントであります。

 

で、その結果がどうだったかというと、

 

  • キウイを食べた期間は、気分の落ち込み(ムード障害)が64%も改善!

 

だったそうな。というと、なかなか驚きの数字のようですが、この「64%の改善」って結果は統計的な有意差(p < 0.05)には届いてないんでご注意あれ。具体的には、p = 0.07だったみたいなんで、「効果あり!」とは断言できない状況であります。

 

とはいえ、64%の改善ってのはかなり大きいので、p値が0.07だったとはいえ、変化が出にくい人たちを対象にしてるし、クロスオーバー設計で比較的ノイズが少ないことを踏まえると、「なにかしらの効果はあったのでは?」と思わせる内容ではないでしょうか。その理由はよくわからんですが、キウイはトリプトファンっていう気分に関わる神経伝達物質の材料が豊富なんで、あり得ない話じゃないよなーとは思うわけです。

 

まあ、あくまで小さな試験だし、プラセボの可能性も否定できないのでまだ仮説の段階ですけど、軽度のメンタル不調に悩んでいる人であれば、「ダメもとで食べてみるかー」レベルで取り入れると良いのではないでしょうか。キウイ自体も低カロリーで栄養価が高い優秀な食品ですしね。

 

ってことで話をまとめると、

 

  • ゴールドキウイ2個/日で、軽度の心理的ストレスが改善した可能性あり
  • ただし統計的には有意差なし。プラセボ効果の可能性も大いにある
  • とはいえキウイは副作用がほぼないし、体にいい栄養が多いので、ストレス対策に取り入れるのもあり

 

みたいになります。もちろん、「キウイだけでうつが治る」なんて話はないでしょうが、軽い気持ちでお試しあれー。


 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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