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心屋仁之助さんが使う「NLP(神経言語プログラミング)」って科学的な根拠があるの?

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「心屋仁之助さんってどう思います?」との質問をいただいたんですが、恥ずかしながら心屋さんをまったく存じ上げなかったワタクシ。軽く調べてみたら、なんでもNLPを使ったカウンセラーさんだそうで、おもに意識が高い方々に愛されてるっぽいですね。


学問の世界じゃNLPはガン無視されている
NLPは「神経言語プログラミング」の略で、1980年代からくり返しブームが起きている心理療法であります。短期的に治療効果をもたらすブリーフセラピーの一種でして、ビジネス書や自己啓発の世界ではわりと定番のネタといいますか。


で、結論から申し上げますと、「学問の世界じゃNLPはガン無視されてる」って事実からお察しください。まともな心理学の教科書で、NLPを取り扱ってるケースはゼロかと思います。


というのも、これまでにNLPに関してはさまざまな実証研究が行われてきまして(1,2,3,4,5,6,7,8,9)、かなりコテンパンに治療効果が否定されてるんですよ。研究例をいちいち並べるのもアレなんで、ここでは2010年の有名なレビュー(10)をご紹介しておきます。


これは疑似科学の研究で有名なトマス・ウィコウスキー博士の論文で、 1974〜2009年に行われたNLPに関する実証データをあらためて精査したんですね。論文の数は全部で315本ありまして、有名なNLPの団体が「これぞ科学的な証拠!」としてあげるデータもふくまれております。




アメリカ軍もNLPの採用を取りやめちゃった
ここから臨床研究だけを選り抜いた結果、最終的に残ったデータは33件のみ。その結果はといいますと、

  • 18件の論文はNLPの考え方と仮説を否定(54.5%)
  • 9件の論文はNLPの考え方と仮説を支持(27.3%)
  • 6件の論文は結論が不確定(18.2%)

という感じだった模様。これだけ見ると、「少なくとも27%はNLPを支持してるじゃん!」と思ってしまいそうですが、話はここで終わりません。さらに博士はすべてのデータを精査しまして、それぞれの実験の質をチェックしたんですね。


その結論は、

あきらかにNLPのコンセプトには、まともな実証的データがない。

というもの。なにせ、NLPを支持する研究には、コントロールグループが存在しなかったり、そもそも実験デザインが間違っていたりと、信頼性が低いものがほとんどだったんですね。


いっぽうで、NLPを否定する論文は質の高いものが多かったうえに、

  • モダリティとサブモダリティ
  • アイ・アクセシング・キュー
  • メタファーを使った技法
  • ペーシング
  • 不安の減少効果

といったメジャーなテクニックの大半を「根拠なし」と結論づけてたんですね。なんでも、1990年にはアメリカ軍もNLPの効果を調べたんですが、なんにもパフォーマンスが改善しなかったんで採用を取りやめちゃったんだそうな(Swets & Bjork, 1990)。


まとめ
そんなわけで、NLPに関しては、

  • まともな心理学では相手にされていない
  • 実証データでも効果が否定されている

の2点を知っておけば十分かと思います。もちろん、わたしは心屋さんの本を読んだことがないので、これはあくまでNLPに限った話。ネットの反応を読むと、心屋さんの本で感動していらっしゃる方は多いようなので、人生エッセイとして楽しむぶんにはいいんじゃないでしょうか。「これぞ実践心理学だ!」とか言われると困っちゃいますが。
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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。