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正味なところ、漢方薬って本当に効果があるの?「東洋医学ってどうよ? #1」

Yin and yang

 

東洋医学に関するご質問をいただきました。

 

いつも楽しく拝見しております。

この季節、私は頭皮から異常に汗をかきます。 そこで多汗症・頭汗で色々調べていたところ、多くの漢方薬が出てきました。

鈴木さまはサプリにお詳しいですが、漢方薬・東洋医学についてどうお考えですか?

頭汗等に効くサプリはご存知でしょうか?

 

とのこと。なかなか壮大なテーマですんで、東洋医学については何個かのシリーズにわけて考えてみたいと思います。今回は、まず漢方薬の話から。

 

 

「ネイチャー」誌は漢方薬を疑似科学だとバッサリ

漢方薬は紀元前から存在する代替医療の一種で、およそ1万種以上の生薬を組み合わせて作成。その処方には10万パターンものレシピが存在すると言われております。

 

 

ただし現代科学からの意見は厳しくて、たとえば有名なのが2007年の比較研究(1)。漢方薬に関する過去の136件の実験データを洗いなおしたところ、

 

  • そもそも質の高い研究は全体の2%しかない
  • 中国で行われた研究は「漢方薬が効く!」って結果が多くて信頼感が低い
  • 現状では漢方薬の効果については疑わしい

 

 といった結論に落ち着いたらしい。

 

 

また、2012年の論文(2)でも漢方薬には警鐘を鳴らしてまして、たとえばトリカブト属やウマノスズクサ属を使った漢方薬は、長く使うと体に毒がたまって健康被害を起こす可能性があるとのこと。他の薬害にくらべれば安全性が高いとの注釈もついてますが、ちょっと気になっちゃうところです。

 

 

で、さらに漢方薬に対して厳しいのが、かの有名科学誌「ネイチャー」であります。2007年の社説(3)によりますと、

 

伝統的な中国医療が本当に効くというなら、質的研究のデータにもとづく実際の治療が行われていないのか? その答えは簡単で、本当は大した効果がないないからだ。その大半は疑似科学だし、多くの治療には合理的なメカニズムが存在していない。

 

とのこと。ハッキリ疑似科学だと言い切っております。もちろん、日本ではオリジナルな漢方学が発達してたり、中国よりも成分分析が進んでたりしますんで、いちがいにダメとも言えないわけですが、全体的には「ネイチャー」の意見が正しいのではないかと。

 



 ただし実証データが多い生薬もある

もっとも、ここであえて漢方薬の肩を持つならば、「生薬」については西洋医学でもかなり分析が進んでまして、一定の効果が認められております。たとえば、

 

  • 霊芝:漢方の世界ではおなじみのキノコ。1日に6mgの霊芝を飲むと、疲労感やストレスが大幅に減ったとか(4,5,6)。
  • 朝鮮人参:1日3gの朝鮮人参で血糖のコントロール力が大幅に改善したとのデータがある(7)
  • イトヒメハギ:認知機能に効くと言われる生薬。1日300mgでワーキングメモリが改善したとの報告がある(8)。

 

などなど、実証データがある生薬はかなり多いんですね。もちろん「気」や「経絡」といった考え方は疑似科学と呼ぶべきでしょうが、それぞれの生薬に関しては定評があるものを場面に応じて使っていけばよいかと思います。

 

 

まとめ

そんなわけで漢方薬に関しては、

 

  • それぞれの生薬については信頼できるものも多い
  • ただし、生薬を組み合わせて漢方薬にした場合は、まともなデータがほとんどない
  • 一部の漢方には危険性もある

 

 といったところです。個人的には漢方薬にはさほど期待せず、「ロディオラ」のようにデータが多い生薬のみを使っていく方針であります。

 

 

ちなみに、ご質問のなかには「頭汗等に効くサプリ」の件もあったのですが、こちらは別項にて考えてみたいと思います。お待ちを〜。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。