パレオダイエットでガンは予防できるか?
海外では「パレオダイエットはガンに効く!」といった話をよく見かけます。狩猟採集民にはガン患者が少ないので、パレオダイエットを実践すればガンは防げるはずだって説ですね。
いっぽうでは、「狩猟採集民は寿命が短いからガンの発症率が低いだけ!」って反論も目にします。確かに高齢者ほどガンの発症率が高いのは間違いなく、この反論にも納得しちゃうところです。どっちが正しいんでしょう?
狩猟採集民にとってガンはレアな病気
ってことで、まずは「本当に狩猟採集民はガンが少ないの?」ってとこから見て行きます。もっとも有名なのは、かのアルベルト・シュバイツァー博士が1913年に行った観察研究(1)で、1万人以上の先住民族を調べても1件のガンも見つからなかったそうな。
ガボン(西アフリカ)に着いてまず驚いたのは、ガン患者をまったく見かけなかったことだ。もちろん、完全にガン患者がいないと言い切ることはできない。しかし、もしガン患者がいたとしても、極めて珍しいケースなのは間違いない。
とのこと。
同じようなデータは他にもありまして、
- アレクサンダー・バーグラス博士が1957年に南米で行った調査(2)では、およそ6万人の先住民族の健康状態を25年にわたってチェックしたが、ガンの形跡は見つからなかった。
- ロバート・マッカリソン医師が1921年にパキスタンのフンザ族を調べたところ(3)、11,000人の住民たちには1人のガンもいなかった。
といった感じ。とりあえず、狩猟採集民にとってガンは非常にレアな病気だったみたい。
狩猟採集民にも60オーバーは普通にいる
それでは、「狩猟採集民は寿命が短いからガンの発症率が低いだけ!」って指摘はどうでしょう? 多くのガンは60を超えたあたりから発症率が激増するんで、それよりも寿命が短ければ、当然ながらガンも見つからないわけですね。
で、確かに狩猟採集民の平均余命は先進国よりも短いんですが、そのうち25%は乳児が伝染病で命を落としたケースがふくまれているんですよ(7)。乳児のデータをはぶくと実際の数値は68〜78歳ぐらいで、80〜90才の長寿をまっとうする狩猟採集民も少なくないとか。
もちろん、先進国にくらべれば60代以上の人口は少ないでしょうが、さすがに6万人を調べて1件のガンも見つからない可能性は低そう。実際、彼らの死亡原因のほとんどは伝染病や部族間の紛争でして、糖尿病や心疾患で死ぬケースはかなりレアだそうな(4)。現代医学にアクセスできないハンデがあるわりには、かなりの長寿だと言えるんじゃないかと思われます。
ついでに、世界のガン発症率も見てみると(5)、産業が未発達な地域(西アフリカとか)ほど患者が少ない傾向があるみたい。もちろん、地域によって診断基準が違う問題はあるんですけども、
- 大腸がん
- 肺がん
- 乳がん
- 前立腺がん
などは西洋のほうが発症率が高いんですよね(6)。全体的に見れば「ガンは(ある程度は)文明病だ!」と言ってよさそう。
パレオダイエットでガンは予防できるのか?
というわけで、狩猟採集民の暮らしがよさげなのは間違いないんですが、「パレオダイエットでガンは予防できる?」と言われれば「多分」と答えるしかない感じ。なにせガンの発生メカニズムがまだよくわかってないし、パレオダイエットの研究もこれからってレベルですんで、めったなことが言えないんですよねぇ。
もっとも、ご存じのとおり、ガンの発症率を高める要素としては、
- 質の低いライフスタイル(タバコ、運動不足、睡眠不足、栄養不足など)
- ただの不運
の2つが非常に大きいのは間違いないところ。多くの観察研究(7,8)を見てますと、およそ40%のガンは生活習慣の改善で予防できるそうなんで、食事と睡眠と運動の全方向からライフスタイルを変えていくパレオダイエットのガイドラインには、一定の効果があるんじゃないかと予想しております。