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「正しいその場しのぎ」で自分の性格は変えられる!「ダメな性格は変えられるのか?#2」

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 ダメな性格を変えるには「その場しのぎの積み重ね」が大事

そんなわけで、「ダメな性格は変えられるのか?」シリーズの2回めです。前回の内容をざっくりまとめると、

 

  • 人間の行動は短期的には性格の影響をあまり受けないが、長期的な影響力はハンパない
  • ならば、その場その場の行動を変えるように、前もって計画を立てておけばいいんじゃない?

 

みたいな話でした。なにもしないと、長期的には遺伝子で決まった性格に行動を支配されていくので、短期的に細かく悪影響を取り除いていこうではないか、と。

  

 

もっとも、これだと「その場しのぎばっかで根っこの性格は変わらないんじゃないの?」と思っちゃうわけですが、意外と「その場しのぎの積み重ね」が大事かもよ?ってのが前回までのお話でした。

 



 

「その場しのぎの積み重ね」で遺伝子のスイッチが変わる?

では、なぜ「その場しのぎ」が大事なのかといえば、近年になって「性格の遺伝子スイッチを後から切り替えることができるんじゃね?」って話が出てきたからであります。特定の行動をくり返すと遺伝のスイッチが切り替わって、本当にそういったキャラになれるんじゃないか、と。

 

 

これは2008年にイリノイ大学のレビュー論文(3)で提唱されたもので、研究者は過去に出た文献を調査したうえで、

 

DNAはつねに人間の行動を決めているわけではない。環境は遺伝子に影響をあたえ、私たちの行動につながる生物学的な要素を変えていく。

 

といった結論を出しております。確かに、運動や食事の改善で遺伝子のスイッチが切り替わるのは有名なんで、性格に同じことが起きてもおかしくないですもんね。いやー、おもしろくなってきましたな(笑)

 

 

特定のことにコミットし続ければ性格は変わる

 実際、環境によって性格が変わっていく現象は多く確認されてまして、こないだも人間のパーソナリティは住む場所によって変わるなんて論文が出たばかり。このほかにも、

 

  • 613人の男女を3年にわたって追跡調査したところ、社会に貢献するような仕事(医療の改善とか環境問題の対処とか)についた人は、少しずつ誠実性があがり、神経症傾向が低下していくパターンがみられた。(2012年,4)

 

  • 2,381人の男女を8年にわたって追跡調査したところ、社会に貢献するような仕事についた人は、少しずつ感情が安定していき、外向性が増加していくパターンがみられた。(2010年,5)

 

 みたいな感じ。これを「性格が改善した!」と言えるかは議論がありましょうが、とにかく特定のことに集中してコミットし続ければ、「人が変わった!」と思われるぐらいには性格は違ってくるわけであります。

 

 

そんなわけで、まずは「良い性格になりたきゃ社会に役立つ仕事につこう!」ってのがひとつの答えにはなりましょう。いまの仕事に社会的な意義が見つからなければ、ジョブクラフティングの技法を試してみるのも良いかと思います。どんな仕事でも、どっかで人様の役には立ってるもんですからね。

 

 

「if-thenプランニング」で性格が変わる

もっとも、現実的には「性格を変えるために仕事を変えるのはキツい!」って方のほうが多いでしょう。

 

 

そこで参考になるのが、2015年にイリノイ大学が行った実験であります。くわしくはリンク先をお読みいただければと思いますが、要するに「if-thenプランニング」の技法を使って「自分がなりたい性格に沿った行動」を増やしていったら、本当に16週間でビッグファイブテストに違いが出たって話です。

 

 

簡単にいえば、

 

  1. まず自分がなりたい性格を決める(内向的なとこを減らしたいとか)
  2. なりたい性格に沿った行動を選ぶ(同僚に話しかけてみるとか)
  3. 「if-thenプランニング」を設定する(朝、同僚と目があったら挨拶するとか)
  4. 設定したプランニングを淡々と続ける

 

 みたいな流れです。よしんば遺伝レベルで変化が出なかったとしても、少なくとも「望ましい行動」の総量は増えるわけですから、試してみて損はないんじゃないかと。

 

 

性格を変えるために最も大事なポイント

ちなみに、このテクニックで最も大事なのは「淡々と続ける」ってところです。プランニングの実行に成功しようが失敗しようが、いちいち一喜一憂せずに黙々と続けるのが大事。

 

 

というのも、「何かを変えよう!」ってチャレンジが失敗する原因って、だいたいは淡々と続けられないからなんですよ。

 

 

これは多くの実験でも明らかになってる事実で、俗に「空頼み症候群」(6)なんて専門用語まであったりします。要するに、変化への期待が高すぎて、1カ月で効果が出なかったらメンタルがヘコんじゃうような状態のことですね。

 

 

なにせ「性格を変える」ってのは大仕事でして、上で紹介したイリノイ大学の実験でも、あくまで自覚がないぐらいのレベルでジワジワと変化していった感じ。本格的な変化を目指すなら、最低でも3年ぐらいの長期プロジェクトとして考えたいところです。

 

 

その意味では、「性格はすぐに変えられる!」みたいな主張にまどわされると、「空頼み症候群」の罠にハマっていくばかり。まずは、そのへんの現実を受け止めたうえで、「正しいその場しのぎ」(「小さな勝利」とも表現できますが)を積み重ねていく方法を考えたほうが賢明かと思われます。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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