人間の行動ってどこまで性格で決まるの?「ダメな性格は変えられるのか?#1」
人の行動はどこまで性格に左右される?
「ダメな性格は変えられるの?」って議論は昔からあって、当ブログでもいろいろと取り上げております。
たとえばハーバードのブライアン・リトル先生なんかは、「ヒトの性格は遺伝の要素が大きいので30代を過ぎたらほぼ変わらない」って立場。ほかにも「自信があるかどうか」もかなり生まれつき決まっちゃうってデータがあったりして、かなり天性の要素に左右されてしまう感じだったりします。
というと「性格は変えられない!生まれつきダメなヤツはずっとダメ!」って気分になりがちですが、ここで意外と見過ごされがちなのが、
- そもそも「性格」って人間の「行動」をどれだけ左右してるの?
ってポイントじゃないかと。一般的には「人間は自分の性格に沿って行動する!」と思われがちだけど、それって本当なの?って疑問ですね。
短期的には性格の影響はかなり少ない
この問題については、実は長らく調査が進んでたりします。代表的なのは「マシュマロ・テスト」で有名なウォルター・ミシェル先生が1968年に発表した実験(1)で、多くの人の性格と実際の行動の関連性を調べたところ、相関係数は0.30しかなかったとか。
これは「確かに人の行動は性格の影響を受けるけど、かなーり弱い関係しかないよね」ぐらいのレベル。つまり人間の行動を本当に左右するのは、本人の性格よりも状況や環境のほうなんだ、と。言われてみれば、確かにそんな気もしますわな。
長期的にはかなり性格が影響してくる
さらに、その後も性格と行動についての調査は続いていて、2004年にウェイクフォレスト大学から出たレビュー論文(2)では、より正確な見解が出ております。どういうものかと言うと、
- ある人が、次の瞬間にどんな行動を取るかは、性格だけではまったく予想がつかない
- ただし、長期的な行動を見た場合は、その人の性格に沿った行動のほうが多くなる
みたいな感じ。要するに、これはコイン投げみたいなもんで、
- これまで5回続いて表が出たからといって、次にも表がでるとは限らない
- しかし何回もコインを投げ続ければ、最終的には表と裏が出る確率は50%に落ち着く
のと似たような話です。時間軸のとり方によって性格の影響は異なってくるわけっすね。
ちなみに長期的な行動を見た場合には、人間の性格と行動の相関は0.9ポイントとのこと。長い目で見ると、やはり人間の行動は性格の影響を強く受けていると言えそう。うーん、やっぱり遺伝のパワーは凄い。
しかし、まだダメな性格を治す希望はある
それでは、結局のところ性格を変えるのは不可能なのかといえば、まだ可能性は残されております。
上記の研究は、あくまで「自分の性格に対して何にも対策を取らなかった場合」の話。少なくとも短期的には性格の重要性は低いわけですから、
- あらかじめ重要な判断を迫られるような場面を想定しておき、自分が取るべき行動を決めておく
- 想定していなかった状況に出くわした場合は、自分に「メタ認知的な質問」を投げかけてダメな性格の悪影響を薄める
- そもそも、自分のダメな性格が発動しそうな環境は避けるように動く(君子危うきにですな)
といった対策は効くと考えられましょう。これをコツコツ積み重ねていき、ダメな性格による悪影響を削っていくわけですな。
もっとも、ここで誰もが思うのが「それって性格改善じゃなくて、ただのその場しのぎじゃないの?」ってことでしょう。いくら瞬間ごとの行動を変えても、別に性格そのものが変わったわけではないだろう、と。
実にごもっともな疑問ながら、実はこの「その場しのぎの積み重ね」で意外とダメな性格が治っていくかもよ?って仮説があるんですね。長くなったので、次回はそのへんの話を見ていきましょうー。