鬱になったら、せっかくだから鬱のメリットを活かそうぜ!みたいな話
鬱っぽい人に解けない問題をわたしてみると…
「鬱のメリットがわかったぞ!」みたいな論文(1)がおもしろかったんでメモ。
これはドイツの研究で、鬱に悩む男女40人と、メンタルが健康な参加者38人が対象。まずはみんなにアナグラムのパズルを10種類ずつわたして、「10分以内に解いてください」と指示したんですね。
ただし、このパズルのうち2〜3個は、絶対に解けないように作られたもの。いくら頑張っても答えが出ない問題に対して、鬱状態の人の行動はどう異なるかをチェックしたわけですな。
必ずしも鬱で「やる気」が下がるわけじゃない
それで何がわかったかと言いますと、
- 「ちゃんと答えがあるパズル」に関しては、鬱の参加者も、それ以外の参加者も、同じだけの時間を使って問題に取り組んだ
- ところが「絶対に解けないパズル」については、鬱の参加者のほうが難易度の設定を素早く見抜き、すぐに作業を止めてしまった
みたいな感じ。つまり、鬱の人はすべてにおいてやる気が下がるわけじゃなくて、実行可能な問題についてはちゃんと最後まで取り組むガッツがあるんだ、と。
鬱はリソースのムダ使いを防いでくれる
さらに言えば、鬱の人は「難易度が高すぎるタスク」を見分けるのが上手く、その事実をスンナリ受け入れることもできるわけですな。この現象について研究者はこう言っております。
鬱にもメリットがある。鬱は自分の行動や影響力の限界に対して、敏感な態度を取らせてくれる。そのおかげで、私たちは現在のゴールやタスクの達成が難しいことに気づけるようになる。
この悲観的な精神状態は、自分にとって重要な目標が達成できなかった際の適応として起きる。しかし、鬱状態のおかげで、私たちは重要なリソースを使わずにすむのだ。
本人にとって鬱はツラい状態なんだけど、一方では自分の資源(時間や労力やお金)をムダ使いせずに済む機能を持ってるんじゃない?って発想ですね。過去の研究では「気分が沈むと分析力が高くなる」ってデータも出てまして、そのへんが判断力の上昇につながってるのかもですな。
矛盾した考えかたに思えるかもしれないが、要するに「あきらめるが勝ち」ということだ。一般的に、「鬱状態」は幸福の障害だと思われがちだが、見方を変えれば人生を改善するチャンスにも使える。
「鬱状態」を、たんなる弱さや個人の欠陥だとみなすよりも、その建設的な側面を見るべきだろう。
もちろん極端な場合には専門家の治療が必要でしょうが、いっぽうでは鬱のメリットに目を向けてもいいんじゃないの?って話ですね。近年の心理学でメジャーになってきた、「怒りや恐怖のメリットを大事にしよう!」って考え方と同じっすね。
まとめ
誰にでも鬱っぽい気分になることはありますんで、その際は、今回の研究の知見をベースに、
- いまの状態に対して鬱がどんな機能を果たしているのかを考える
- その機能が現実の問題を解決するのに役立つなら、鬱の状態を活かす方向で考える
- 鬱が当面の問題に役立たたないと判断したら、認知行動療法などで修正していく
みたいなTIPsとして活用していくのがよさげですな。どうぞよしなに。