ヒトの性格は30代を過ぎてからも変えられるのか?問題
2014年に読んだ本の8位に選んだ「Me, Myself, and Us」のなかで面白いのが、「人間の性格は30代になっても変えられるか?」について議論している部分。
アラフォーになったら性格の欠点は治せない?
これは心理学の世界じゃ昔ながらの問題でして、わりと「人の性格は30代までに決まる!」って説が有力だったんですね。特にアメリカを代表する心理学者であるウィリアム・ジェームズなどは、
われわれ多くの者においては、習慣によって三十歳までに性格が漆喰のように固定して、再びやわらかくならないほうが世間のためによい。
と19世紀の段階で言い切っております。わたしのようなアラフォー男には、もはや性格の欠点を治す術はないんだ、と。なかなか困った気分にさせられる話ですね。
35才や40才のときの性格は90才になっても同じ
で、実際のデータはどうかと言えば、有名なのが2002年の論文(1)。一卵性双生児を対象にした研究でして、遺伝と性格の関連を調べたんですな。
その結果は、性格はかなりのところまで遺伝で決まっていて、人生を通して変わることが少ないというもの。なかでもビッグファイブ(ヒトの性格を5つの特性にわけたもの)は遺伝の要素が強く、およそ40〜50%の部分が生まれつき決まっちゃってるそうな。
この見方は2000年の大規模な調査(2)でも裏付けられてまして、おおまかに見るとヒトの性格は年代ごとに揺らいでいくものの、基本的には一生を通して変わらないみたい。研究者いわく、
ヒトの性格は、思春期の前半に大きな変化を見せるが、30〜35才を過ぎたころから変わらなくなっていく。まったく変化がないわけではないが、一生のスパンから見れば、非常に微々たるものだ。
基本的にヒトの性格は不変で一貫している。35才や40才のときの性格は、90才になっても同じはずだ。
とのこと。なんでも、わたしの人見知りな性格も遺伝から来ているそうで、これは80才になろうが変わらないらしい。トホホ。
性格が変えられないなら、行動を変えればいいじゃない
そんなわけで、やっぱりウィリアム・ジェームズの意見は正しかったようですが、「Me, Myself, and Us」には処方せんも述べられております。著者いわく、
確かに性格は変えられないが、なにも環境や遺伝の犠牲者になる必要はない。わたしたちは「いかに振る舞うか?」を、ある程度まで自由に決められるからだ。
とのこと。「性格が変えられないなら、行動を変えればいいじゃない」って話ですね。
というと、「無理して別のキャラを演じても大丈夫だろうか…」って不安が出てきそうですが、このあたりについては様々な研究がありまして、例えば内気な人が強引に外向的なキャラを装っても、まず見抜かれることはないんだそうな。その際には、あくまで自分の目的を明確にして、そのゴールにあったキャラを演じるだけでOKとのこと。
そういえば、わたしも飲み会でキャラを作った場合は、たいてい「人当たりがいいですねぇ」とか言われたりするんで、意外と人見知りってバレないもんだなぁと思ったことであります。あの芸人のザキヤマさんも、本来は極度の人見知りなのに、家を出る時点でスイッチをオンにすると言いますしね。「本来の自分が…」とか悩まずに「スイッチさえ入れれば大丈夫」と割り切ったほうが精神衛生にはいいのかも。
もちろん、一方では、素の性格と違うスイッチをオンにし続けると、自律神経系がやられちゃうってデータもありますんで、そのあたりのバランスは大事。あくまでも、自分がキャラを作っている目的を自覚したうえで、素の自分(=遺伝的に決まった性格)にもどる時間を作るのが大事ではあります。それでは、皆様どうぞよしなに。
credit: bicameral via FindCC