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すぐに抜け出したい「嫌な気分」にだって、7つのメリットがあってだな

Sadness

  

不安や悲しみといった嫌な気分には、誰だってなりたくないもの。しかし、ニューサウスウェールズ大学のジョー・フォーガス教授の論文(1)よれば、不安や悲しみにだって様々なメリットがあるんだそうで、これがなかなか面白いです。具体的には、以下の7つであります。

  

 

1 嫌な気分は記憶力をアップさせる

教授の実験によれば、薄暗くて寒い日に記憶力テストをした被験者は、暖かくて快適な日にテストを受けた場合より、物事を細部まで覚えていることが多かったとか。別の実験でも、被験者が悲しい気分のときに記憶力テストをしたほうが、情報をありのままに思い出すことができたらしい。

 

 

2 嫌な気分は判断力をアップさせる

幸福な気分のとき、人間は目の前の状況をうのみにしやすくなりがち。そのため、バイアスのかかった情報を簡単に信じこんじゃうんだとか。一方で嫌な気分にはバイアスを消す作用があり、より正しい判断ができるようになるそうな。

 

 

3 嫌な気分の人はダマされにくい

嫌な気分のとき、人間はあらゆる物事を疑ってかかるようになる。そのため、不誠実な人を見抜くセンサーが強くなり、ネットのデマや都市伝説にもダマされにくくなるとか。

 

 

4 嫌な気分は差別を減らす

同論文でフォーガス教授が行ったのが、「撃つか撃たざるか」ゲーム。被験者に以下の画像を見せて、銃を持った男だけを瞬時に選ばせるという実験であります。

 

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すると、幸せな気分の被験者ほど、「ターバンを巻いてペットボトルを持った男」を、銃を持っていると勘違いしちゃう確率が高かったそうな。上述のとおり、嫌な気分には判断力を上げる作用があるため、偏見も持ちにくいみたい。

 

 

5 嫌な気分はやる気をアップさせる

教授いわく、悲しい気分の人は、難しい作業に粘り強く取り組み、自分の失敗を人のせいにしない傾向が高かったとか。一方で、幸せな人は、難しい作業を簡単にあきらめてしまい、自分の失敗も外部の責任だと思いがちだったらしい。

 

 

6 嫌な気分は礼儀正しさをアップさせる

また別の実験では、被験者にコメディ映画と悲劇的な映画の2つを見せたところ、悲劇を見た人のほうが、より礼儀正しくなり、他人にたいして感じよく接するようになったとか。どうも、幸せな気分には、ときに人を自己中心的な心理状態にさせてしまうことがあるみたい。

 

 

7 嫌な気分は公平さをアップさせる

さらに別の実験では、被験者たちにお金のやり取りをしてもらったんですね。すると、悲しい気分の被験者ほど、周りの相手と同じ金額をわたす可能性が高かったとか。一方で、幸せな気分の人は自己中心的な行動をとりがちで、自分に有利な金額を提示するケースが多かったらしい。

 

 

まとめ

そんなわけで、嫌な気分にもメリットがあるって話でした。フォーガス教授いわく、

 

これらの実験結果は、ポジティブな感情のメリットを強調しがちな、昨今の研究に一石を投じるものだ。確かに、ポジティブな感情には一定のメリットがあるが、つねに望ましいものではない。

 

とのこと。確かに、近年は「ネガティブな感情は意外と役に立つよ!」って研究が増えてますし、「幸せになろうと頑張るほど幸せから遠ざかる」って話もありますからねぇ。

 

 

実際、嫌な気分になるのはどうしようもないので、悲しみや怒りがわいたときは、「もっとポジティブにならなきゃ!」とか思うのではなく、ネガティブな感情のメリットを意識しつつ「行動さえコントロールできればよし!」と考えるのがよさげです。それでは、皆様どうぞよしなに。

 

 

credit: jerryfergusonphotography via FindCC


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。