メンタルの悪化を防ぐには"あの能力"を鍛えるといいかもよ!という観察研究の話
「認知とメンタルは相関してる!」とは昔からよく言われる話であります。つまり、頭の回転が遅くなると鬱や不安に襲われる確率も上がっちゃうわけですな。
が、これは観察研究から得られた結論なんで、因果の関係はわからんわけです。頭がおとろえるからメンタルが悪化するのか、メンタルが悪化するから頭がおとろえるのは判断しづらいんですな。
ってことで新しい研究(1)は、この問題にもうちょいクリアな視点をあたえてくれてていい感じです。
これはローザンヌ大学の研究で、スコットランドで暮らす1,091人の男女を70歳の段階から9年ほど追いかけたものになります。この研究がほかと何が違うかと言いますと、
- 抽象的なことを考える能力の変化
に注目したところでしょうね。抽象的なことってのは、たとえば以下のような問題を解く能力を意味しております。
いわばIQテストでよく出されるような問題でして、パッと見は「これが解けたからなんだ!」って気分になりますが、この能力が高いほど目標の達成率は高くなるし年収も増えやすい傾向があったりするんですよ。まぁ日常の仕事ってかなりの抽象思考を要求されますからねぇ。
で、9年の追跡調査でどんな傾向が確認されたかと言いますと、
- 抽象思考の能力がおとろえればメンタルも悪化する!
って相関関係です。頭のなかで数字や図形をあつかったり、いろんなものから共通するポイントを抜き出す能力がおとろえると、メンタルも悪化しちゃうんだ、と。
さらに、ここで研究チームは「時間ごとに2つの変数がどう変化するか?」ってとこも分析してまして、
- 抽象思考のスコアが下がると、後になって鬱の症状もヒドくなる!
- 鬱の症状がヒドくなっても、思考力スコアは下がらない!
って傾向も割り出しております。ここがこの論文のキモで、ざっくり言えば「思考力の低下でメンタルが悪化する!」って可能性がとても高くなったわけです。「考える力」は、健康的なメンタルを維持するのにも欠かせないんですなぁ。
研究チームいわく、
人生の後期におけるメンタルヘルスは、高齢化が進む現代では重要な事項になっている。今回の研究は、認知機能の変化をモニタリングすれば、鬱の発症率を早めに判断できることを示唆する。
とのこと。なんで思考力が下がるとメンタルが悪くなるかはよくわからんのですが、「数字に強いほうが勝ち組になりやすい」って話もありますし、抽象思考がおとろえれば人生がハードモードになるだろうことは簡単に想像できますもんねぇ。
ちなみに、これは高齢者が対象の研究ですが、思考力とメンタルの関係は若者にも確認されてるんでご注意ください。抽象思考を鍛えるのに「これ」といって方法はないものの、とりあえず数学のトレーニングでもしとくといいかもですねー。私も統計をもうちょいやらんと……。