今週の小ネタ:温かいドリンクとメンタル、人間の感情パターン、カロリー制限に成功する人の特徴
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
あったかいものを持つと優しい気持ちになる!は本当か?
ここ数年、心理学の世界では「あの有名な実験が再現できなかった!ヤバい!」みたいな事例が続いてまして、「あらー」みたいな状況なわけです。
そんななか、今度は「あったかいものを持つと優しい気持ちになる」って心理現象に物言いがついておりました(1)。
これは、「ホットコーヒーのカップを持つと周囲の人への親近感がわくよ!」みたいな話で、パワーポーズほど有名な研究ではないものの、ポップサイコロジーの本などでは定番ネタとしてあつかわれてきたもんです。おもしろい現象ですもんね。
この現象についてあらためて調べたのはダニエル・シモンズ とクリストファー・チャブリスで、「錯覚の科学」で有名なチームっすね(「見えないゴリラ」でおなじみですな)。
この追試が過去の研究より優っているのは、
- 参加者の数がオリジナル論文の3倍
- 元論文よりも幅広いエリアから参加者を集めている
って2点でして、格段にデータの質は上まわっております。
で、その結果は「再現性なし」というもの。温かいマグカップを持とうが、参加者の行動やメンタルにはなんの変化も出なかったんですよ。もちろん、これで完全に効果が否定されたわけじゃないんですが、ここんとこ社会的プライミング系の研究には不利な状況が続いてまして、「あー、やっぱダメなのかなー」といった気になっております。
人間の感情って何パターンあるの?
次はオハイオ州立大学の研究(2)で、「人間の感情表現って何パターンあるの?」って問題をあつかっております。研究チームいわく、
古代においては、人類は7〜8の感情表現があるとされてきた。しかし、これはおかしな考えだ。「喜び」という感情ひとつとっても、様々な種類に分けられる。
とのこと。確かに、「平静な喜び」とか「爆発的な喜び」とかいろいろあるでしょうからねぇ。
ってことで研究チームが何をしたかと言いますと、
- 検索エンジンを使って人間の表情写真を720万枚ほど集める
- それぞれの写真が、何パターンの感情を表しているかを分析する
みたいな感じで、ヒトは何パターンの感情を表現できるのかをみております。
で、結論。
- 人間の顔は16,384パターンの表現ができる
- しかし、実際にヒトが表現できる感情は35種類だった
- 35パターンのうち、「幸福感」にまつわる感情が17種類もあった
- 全体的に、ネガティブな感情はパターンが少なかった
- 「嫌悪感」が1パターン
- 「恐怖」が3パターン
- 「怒り」と「悲しみ」が5パターン
だったそうです。どうやら人間は、幸福感についてだけ多彩な表現ができるように進化したみたいっすね。そっちの方が生存に有利だったんでしょうなぁ。
カロリー制限に成功する人の特徴とは?
最後はタフツ大学の研究(3)で、「お菓子を食いまくりたい!って欲望はどうすればいいの?」ってところを調べております。肥満に悩む32人の男女を対象にした実験で、あえてみんなにカロリー制限をしてもらっています。
実験期間は6ヶ月で、そのうちに参加者が「どれだけお菓子への激しい欲望を感じたか?」をチェックしたところ、
- 全体の94%が激しい欲望を感じた
- しかし、それでも他より体脂肪が減った人もいる
だったそうな。誰でもカロリー制限すれば欲望が増すんだけど、なかには負けずに体脂肪を減らせた人もいるんだ、と。
それでは、体脂肪の削減に成功した人はなにが違ったかと言いますと、
- 「自分がお菓子への欲望を持っていること」に対して罪悪感を持ってない
だったんですな。逆に「またお菓子が食べたくなってしまった……」みたいに考えちゃう人ほど、ダイエットは失敗に終わる確率が高かったらしい。
研究チームいわく、
自分がお菓子への欲望を抱いた事実を受け入れることは、体重管理の重要なキーポイントのひとつかもしれない。
ってことで、アクセプタンスの重要性が指摘されておりました。まぁいちいち罪悪感を持ってたら、それがストレスになって食べ過ぎちゃうのは理解できますなぁ。