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今週半ばの小ネタ: ノーベル賞受賞者によるストレスに効く呼吸法、熱いお茶と癌リスク、ネット経由のセラピーも意味がある

Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。   

   

 

 ノーベル賞受賞者による「ストレスに効く呼吸法」の話

ストレス対策には呼吸が大事!という話は何度か書いてますけど、ルイ・イグナロ博士が「これまでにないレベルで簡単な呼吸のアドバイス」を提唱(R)してておもしろかったです。博士は一酸化窒素の発見でノーベル賞を受賞した超有名人であります。

 

 

で、博士がお勧めする「ストレス解消に効く呼吸のポイント」は超簡単で、

 

  • 鼻から吸って口から吐け!

 

これだけです。うわー、本当にシンプル。

 

 

では、なんでこのアドバイスが重要なのかと言いますと、

 

鼻の中の細胞や組織は、絶えず「一酸化窒素」を生成している。この現象は口では起きない。鼻で発生した一酸化窒素は気管支の拡張を起こし、結果として肺への酸素供給を改善する。

 

とのこと。博士の専門分野である一酸化窒素は鼻呼吸から得られるのだ、と。

 

 

さらに博士いわく、

 

一酸化窒素は動脈によって生成されるガス状の分子でで、心血管の機能を調節する働きがある。動脈を包んでいる筋肉細胞をリラックスさせ、それによって血管拡張や動脈の拡張を起こしてくれる。この生理作用により血圧が低下し、拡張した動脈を通ってすべての臓器への血流が増す。

 

ってことで、要するに一酸化窒素による血管の拡張効果が体をリラックスさせ、ストレスに強くしてくれるんだよーってことですね。

 

 

まぁ正直、これが口呼吸と比べてどれぐらいの差があるのかはわからんですが、お金もかからないんで鼻呼吸を心がけておくのはいいんじゃないでしょうか。

 

 

 

熱いお茶を飲み続けるのは危険かもだ!という話

お茶が健康に良いのはほぼ間違いないんだけど、一方では「飲み方を間違えると危険だよー」ってなデータ(R)が出ておりました。

 

 

これはイランで暮らす50,045人の男女を追跡した観察研究で、ざっくり申しますと、

 

  1. いつもどれぐらいの熱さでお茶を飲んでいるか?を調べる
  2. みんなを10年間追いかけて、食道癌の発症率と比べる

 

みたいになってます。熱いものばっか食べてると食道癌になりやすいって話は昔からありまして、これが具体的にどれぐらいの温度から危険なのかをチェックしたわけですね。

 

 

その結論は、こんな感じです。

 

  • 60℃未満のお茶なら問題ない
  • 60℃〜64℃だと食道癌リスクが1.44 倍になる
  • 64℃より上だと食道癌リスクが1.36 倍になる

 

ってことで、昔から言われてきたとおり、やはり熱いお茶を飲み続けるのは危険なのかもなーってとこですね。

 

 

では、どれぐらいお茶を覚ませばいいのかと言いますと、

 

  • お茶は5分以上冷やせば食道癌の発症リスク上昇はなくなる

 

だったそうです。なかなかお茶を5分も冷ます人は少ないでしょうから、これはちょっと気にしておいてもいいかも。観察研究の結果なんでどこまで信じるべきかはアレですけど、熱いものがお好きな方は頭の隅に入れておいてくださいませ。

 

 

ちなみに、この結果が正しいならば「熱いコーヒーやスープ」なんかでも同じ問題が起きると思われますが、今回のデータだけでは不明であります。まぁいずれにせよ熱いものにはご注意をってことで。

 

 

 

認知行動療法はネット経由でも十分効くのでは?説

認知行動療法って有効だよなー」みたいな話をよく書いてまして、実際のところ、現時点では不安の治療法としてはベストだとされているわけです。私も不安になりがちな性格なので、いまも昔もお世話になってます。」

 

 

で、新しい研究(R)も認知行動療法のお話で、まず結論から行くと、

 

  • インターネットを介して認知行動療法を受けても、セラピストと対面で治療するのと同じ効果があるかも?

 

みたいになります。この調査では、対面で認知行動療法を受けた人、またはインターネットで認知行動療法を受けた人204人を対象にしてまして、「自分の健康について極度の不安を持ってる人たち」を特に選んだんだそうな。

 

 

すると、その結果は、

 

  • ネットでも対面でも患者さんの不安は同じように改善した
  • ネットのセラピーは1回10分だったのに対し、対面は1回45分だった

 

だったそうな。なんかビックリするぐらいネットセラピーで効果が出てますが、「本当にここまで短時間でいいのか?」ってあたりはもうちょい追試を見ないとなんとも言えんですねぇ。

 

 

とはいえ、「認知行動療法はネット経由でも効く」ってのはその他のデータでも示されているところで、対面じゃなくても問題ないかも?って雰囲気はしますねぇ。もちろん重度の不安症の場合は対面のほうが良いとは思うものの、個人的にはネット経由のセラピーも試してみたいとこです。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。