マインドフルネスの訓練でコミュ力が上がる!脳が変わる!という実験の話
「マインドフルネスの訓練でコミュ力が上がる!」みたいな話(R)が出てましたんで、軽く要点をチェックしておきましょう。
これはマックス ・プランク脳研究所のチームによる調査で、332人の男女を集めて、1日30分ずつ週6日のマインドフルネス系トレーニングを指示したらしい。このプログラムは3つのモジュールにわかれてまして、
- モジュール1:アウェアネス(気づき)とマインドフルネス(「いまここ」に意識を向ける)に焦点を当てて、呼吸や感覚などに集中する定番の瞑想法を学ぶ
- モジュール2:コンパッション、感謝、ネガティブ感情への対処など、社会的なコミュニケーションに欠かせないスキルを学ぶ。ここでは、マインドフルネスの演習とは違って、初対面の人とペアで行うトレーニングもふくまれる
- モジュール3:社会的認知スキル、特に他人の視点を想定する能力、自分と他人の思考プロセスを客観的にとらえる能力を鍛えていく。ここでは、定番の瞑想法にくわえて、ペアを組んだパートナーと会話をしつつ、相手の視点になって話を聞くように努める訓練を行う。
さらには、自分の中にある複数の人格(心配性の母親とか、好奇心旺盛な子供とか、厳格な裁判官とか)について考え、それぞれの人格の視点から自分のことを説明するトレーニングなども行う
実験期間は3か月で、3つのモジュールの後に行動の変化をテストしつつ、さらにMRIで脳構造の変化を測定。ついでに唾液中のストレスホルモン(コルチゾール)のレベルとった複数のバイオマーカーでストレスシステムも調べたそうな。
で、その結果を引用すると、こんな感じ。
それぞれ行ったメンタルトレーニングの方法に応じて、行動の変化が起きたのはもちろん、関連する行動の脳の構造も変わっていた。
最初のモジュールが終わった後、参加者はマインドフルネスをつかさどる領域の大脳皮質が成長していた。と同時に、コンピュータテストでもマインドフルネスレベルの改善が確認された。
さらに、他の2つのモジュールでは、思いやりの気持ちや他人の視点になって考える方法が強化され、これらの社会的スキルに関わる皮質の厚さも増加していた。
トレーニングをしたら行動はちゃんと変わったし、同時に脳の構造もキッチリと変わったんだ、と。訓練で脳が変わるのはよく知られたところですけど、社会的な脳の構造変化についてはあんま類似の実験を見たことがないので、貴重なデータになってるかと思います。
私たちの研究結果は、短時間のメンタルトレーニングを毎日行うことで、成人の脳に構造的な変化をもたらすことができ、社会的知性もアップさせられることを明らかにした。共感性、思いやり、他者視点のスキルは、社会的コミュニケーションの成功、いさかいの解決、協力的な作業に欠かせない。
とのことで、「どうも自分はコミュ力がなくて……」みたいにお悩みの方には、非常に希望あふれる結果じゃないでしょうか。
ちなみに、この研究ではもちろん参加者のストレス減少も確認されていて、
参加者をストレスの多い状況にさらされたテストでは、コルチゾールの分泌量が最大で51%も減少していた。
ただし、社会的スキルに焦点を当てた2つのモジュールは、コルチゾールレベルを有意に減少させたのに対し、アウェアネスとマインドフルネスの強化モジュールは、ストレスホルモンのレベルでを減少させることができなかった。
って結果だったそうな。以前の研究ではマインドフル瞑想でコルチゾールが減ったって報告は多いんで、今回のテストではストレスホルモンに変化がなかったのがちょっと不思議っすね。
一方で社会的スキルがス効いたのはわりと納得で、毎日10分ずつでも見知らぬ人と腹を割って話し合う体験が社会的なストレスに強いメンタルを育てたんだろうなーってのは容易に予想がつくところです。
だいたい、社会的スキルトレーニングを3回こなしたあたりからストレスを感じにくくなった参加者が多かったそうで、やっぱ脳の慣れが大きいのかも?って気はしますね。
ってことで、コミュ力にお悩みの方には、とても参考になる研究だったかと思います。今回のトレーニングを個人で完全に再現するのは難しいですが、定番の瞑想法やコンパッション、感謝、ネガティブ感情への対処などは、このブログで紹介してきた手法を使った自主練でもいけるはずであります。お試しをー。