「メタファー」を使って良いアイデアがガンガン浮かぶ体質になる方法のお話
「良いアイデアがガンガン浮かぶ方法はこれだ!」みたいなおもしろい研究(R)を、シンガポール・マネージメント大学などの先生が発表されておりました。
この調査でチェックしたのは「メタファーをそのまま演じれば、良いアイデアが思いつきやすくなるのでは?」みたいな話です。例えば、斬新な考え方を生み出す際の比喩として「箱の外から出て考えよう!」みたいな言い回しをよく聞きますが、ここで文字どおり「大きな段ボールとかから出る動作」をしたら、本当に良いアイデアが浮かびやすくなるのではないか?みたいな考え方です。
なんじゃそれって感じですけど、これは「身体化された認知」と呼ばれる有名な現象でして、
- 暖かい飲み物を持ちながら会話すると、相手が温かい人に思えてくる
- 重いものを持ちながら会話すると、その議論が重要なものに思えてくる
みたいな現象が過去に確認されてたりするんですよ。人間は単純ですねぇ。
ってことで、ここでは4つの実験が行われてまして、ざっくりデザインを紹介すると、
- 参加者を、右手だけで壁を探りながら良いアイデアを出してもらうグループと、両手で壁をさわりながら良いアイデアを出してもらう(英語で言う“on the other hand”の比喩を実際に試している)
- 1.5m四方の箱を用意し、参加者を箱の内側と外側のどちらかに入った状態で創造性タスクをしてもらう(「箱から出た状態で考える」を実際に試している)
- 2つのブロックをひとつにまとめた上で、良いアイデアを考えてもらう(英語で言う"put two and two together”って言い回しを実際に試している)
- PC内のバーチャル世界に自分のアバターを作り、そのアバターが自由に動ける条件と、アバターが狭い通路を歩くしかない条件の2つで良いアイデアを考えてもらう(「枠にはまらずものごとを考える」って言い回しを実際に試している)
みたいな感じです。いずれも日常的に「良いアイデアの生み方」と関連して使われる言い回しを現実的に演じてみて、実際の成果に影響が出てくるかを確かめたわけですね。
すると、結果はいずれも「メタファーを実際に演じたグループ」の勝利。箱の内側で考えるよりも箱の外で考えた方が斬新なアイデアを思いつきやすくなり、自由に動きながら考えたグループのほうが本当に自由な発想でものごとを考えられたんだそうな。いやー、やっぱ人間はシンプルっすね。
って、まぁ日本では“on the other hand”や"put two and two together”みたいなことは言わないんで、「両方の手を使って考える」や「ブロックをまとめて考える」って技は効果がないかと思いますが、
- 箱から出た状態で考える
- 自由に歩き回りながら考える
という2つのテクニックは効果がありそうな気がしますね。また、この考え方を延長して考えるならば、
- 物事を違う視点からながめる
- いろんなものをつなげる
- いろんな切り口を考える
といった日本語の言い回しを実践してみても、似たような効果が得られそうな気がするわけです。つまり、
- 普段は一定の角度からしか見ない物体(スマホとか)をいろんな方向から見てみながらアイデアを考える
- まったく違うもの(ミシンとこうもり傘とか)を並べてみつつアイデアを考える
- いろんなものを切断して(野菜とか)、その切り口を見ながらアイデアを考える
みたいな感じっすね。まぁあくまで推測なんで本当に効果が出るかはわからんですが、「なんも思いつかん!」みたいな問題にお悩みの方は、やるだけやってみちゃいかがかと思うわけです。