勉強したことをすぐに覚えられる!という人と、そうでない人は何が違うのか?みたいな話
「勉強したのに思い出せない!」みたいなことは誰にでもありましょう。私の場合もしょっちゅうで、ヒドいときは昨日書いたブログの内容も忘れてることがあったりします(たんに年齢のせいかもしれませんが)。
で、新しくネイチャーに出てた研究(R)は、「なんで学んだことを覚えてる人と覚えてない人がいるの?」みたいな問題を掘り下げていて有用でした。研究者いわく、
毎日の生活のなかで、誰もが「知っているはずなのに思い出せない」というフラストレーションを感じる場面はある。しかし幸いなことに、近年の科学では、個人が特定のものごとを記憶できるかどうかをチェックできるようになってきた。
とのことで、覚えたことをすぐ忘れちゃう問題を定量的にチェックしてみたらしい。これはスタンフォード大学の研究チームによる実験で、18歳から26歳までの男女80人を集めて、
- 以前に聞いたことのある状況を思い出してもらう
- いろんなものが映った映像を記憶して、どこまで覚えているかを調べる
みたいなタスクを行うように指示。そのあいだにEEGで脳の活動を測定しつつ目の動きなども観察して、注意力の変化をチェックしたそうな。
なんでこの2つを調べたのかと言いますと、
頭の後部から出るアルファ波の増加は、注意力の低下、マインド ワンダリング(物思い)、注意散漫などの状態に関連している。また、瞳孔径の収縮も、マインドワンダリングの増加や、認知パフォーマンスの低下と関係がある。
ってことが昔から言われてたからです。もちろんマインドワンダリングは良いアイデアを生むときに欠かせない脳の状態なんですけど、注意してものごとを記憶したいときには逆効果になるのは当たり前でしょう。
でもって、さらに全員に「普段からどれぐらい注意力がそれるか?」や「マルチタスクをどれぐらい行なっているか?」などを尋ねるアンケートを行い、すべてのデータをひっくるめて分析したら、こんな傾向が確認されました。
- 「普段からいろんなメディアを同時に見てます!」と答えたグループは、瞳孔サイズが縮んだ(これは注意力が散漫になっている証拠)
- 物事を記憶する前に注意が散漫になった場合は、すでに見た映像を忘れてしまう確率も高かった
ということで、勉強したことをすぐに覚える人とそうでない人がいるのは、
- その人がどれぐらいマルチタスクで作業をしているか?
- 普段からどれぐらいマインドワンダリングを起こしているか?
といった要因に左右されるんじゃないの?ってことですね。「マルチタスクは良くない!」「ひとつの作業から別の作業に移っただけでもパフォーマンスは低下する!」みたいな話は昔からよく書いていて、YouTubeを見ながら文章を書いたり、Netflixを見つつインスタをチェックするみたいなことをやると、一気にパフォーマンスが下がっちゃうのは有名でしょう。
もっとも、この悪影響はあくまでマルチタスクをしているあいだにだけ起きるものだって考え方もあったんですけど、今回の調査では「普段からマルチタスクが多い人は、脳が常に機能の低下を起こしてるのかも?」とも取れるわけで、なかなか恐ろしい話ではありますね。
まー、この結果はあくまで相関関係でしかないので、著者チームも、
メディアのマルチタスクをすることで、持続的注意力と記憶力が低下するとは言えない
などと注意をうながしておられます。とはいえ、注意のコントロールが学習と記憶に欠かせないのは自明なんで、普段からマルチタスク作業はしとかない方がいいのかもしんないっすねー。