謙虚なリーダーが率いる企業ほどマーケットの業績が高いのはなぜか?問題
「謙虚なリーダーシップ」なんて本もあるとおり、近ごろ経営学の世界では「上に立つ人間は謙虚なほうがいい!」って見方が普通になりつつあるわけです。昔ながらの自信満々で部下を引っ張っていくようなタイプは、すでにオワコンだと言うんですな。
事実、謙虚なリーダーのメリットは複数確認されていて、
- チーム同士の協力をうながす力がある
- 組織に情報をいきわたらせる働きがある
といったあたりが報告されてたりします。個人的にも、自信家のイケイケ社長よりは、謙虚な人についていきたいもななーとか思いますね。
で、新しいデータ(R)では、さらに一歩進んで「謙虚なリーダーが率いる企業は市場のパフォーマンスが良い!」って結果になっておりました。謙虚なリーダーシップのメリットはマーケットの成績にも貢献するんじゃないの?ってことですね。
具体的にどんな調査だったかと言いますと、
- 2000~13年にS&P500企業のリーダーを務めた185人をピックアップ
- このCEOたちがスピーチなどをしている動画を集める
- 第三者にCEOたちの謙虚さを判定してもらう
- 謙虚さと業績を比べる
みたいになってます。ここで言う「謙虚」ってのは、「実態を超えた業績の予想をしない」とか「自信満々な態度を取らない」ぐらいの意味です。
「第三者が動画を見ただけで謙虚さを判断できるのか?」って疑問もありましょうが、先行研究により観察者は対象者の性格特性を明確に識別できるってことがわかってるらしい。逆に自己申告に頼っちゃうと、謙虚な人ほど「私なんて謙虚じゃないですよ!」とか言い出すんで、正確性にかけてしまうそうな。そりゃそうかもですな。
その後、研究チームは金融アナリストが行った利益予想のデータもチェック。これを被験者たちの謙虚レベルと比べると、こんなことがわかりました。
- 謙虚なCEOが率いる企業には、みんな「この企業は業績が低くなるだろう」と予想した
- そのおかげで、謙虚なCEOが率いる企業は予想を上回る成績を出しやすくなっており、市場での大きなリターンを得る傾向が強かった
自信満々なリーダーは外部から良い予想を引き出すので、そのぶんだけ会社の市場パフォーマンスを下げちゃうんだけど、リーダーが謙虚な場合はその逆が起きるってことですね。
研究チームいわく、
謙虚なリーダーが率いる企業に対しては、みんな最初から悲観的な業績予測を行う。これは至極当然な傾向であり、そのおかげで市場でのパフォーマンスがよくなる。
とのこと。要するに、芸人が「これから面白いことをします!」と言ってからギャグをやっても笑いにくくなっちゃうけど、普通の見た目の人がボソッと面白いことを言ったほうが爆笑につながりやすい、みたいなもんですな。
まぁこの研究ではあくまで市場の期待を問題にしてるんで、果たして「謙虚なリーダーは企業の生産性それ自体を上げるのか?」や「イノベーションを引き起こす能力があるのか?」といったポイントについてはまだ謎が残るとこではあります。そのへんは今後の研究を待ちたいとこですけど、とりあえず現代の企業はマーケットの期待に左右されがちであり、そのせいでリーダーの謙虚さがこういう形で良い方向に現れるってのはおもしろいもんすね。