朝鮮人参はどこまで体にいいのか?問題
「朝鮮人参ってどうですか?」とのご質問をいただきましたんで、簡単にまとめておきます。そういえば、こんだけメジャーな健康食品なのに、ちゃんと扱ったことってなかったですね。
で、朝鮮人参はアジアで古くから使われてきた植物で、疲労に効くとか、頭をよくしてくれるとか、体内の炎症を抑えてくれるとか、とにかくいろんなことが言われております。一部では万能薬みたいな扱いもされてたりしますね。
それでは、朝鮮人参の実力はどんなもんかと言いますと、実はちゃんとした実験がほとんどなかったりします。もちろん有名なだけにヒトを対象にしたデータは多いんだけど、ちゃんとランダム化されてなかったり、対照群がなかったりするケースが多くて、どうにも結論が出しづらいんすよね。
そんな状況でも、あえてどれぐらいの情報が出てるかをまとめると、以下のようになります。
▼疲労感の改善について
まずは疲労感の改善についてですが、
- 健康な成人に200mgまたは400mgの朝鮮人参を飲んでもらった研究(R)では、200mgを飲んだ人は4時間の心理テストにともなう気分の落ち込みが減少し、400mgを飲んだ人はより落ち着いた状態になった。ただし、1回の投与と1日8回目の連続投与を比べても効果に有意差はなく、蓄積効果はないことが示唆されている。
- 別の研究(R)では、G115抽出物(4%ジンセノサイド)200mgを飲んでもらいつつ10分間の認知テストを行なったところ、疲労の減少が確認された。
みたいなのがありまして、主観的な精神疲労には効くのかも?って雰囲気は漂ってます。とはいえ、どちらも効果の量はたいしたことがないので、わざわざサプリを飲むぐらいなら瞑想か運動でリフレッシュしたほうが良い印象も強いっすね。
▼脳機能の改善について
ジンセノサイドRb1(朝鮮人参の生理活性物質)に限ると、「もしかしたら海馬の働きを高めるのかも?」って可能性はあったりします。ただし、これはほとんど動物研究の知見しかなくて、ラットに1日2mg/kgを30日続けて飲ませたところ学習スピードがアップする現象が認められ(R)なんて報告があるぐらい。その他もチラホラとデータはあるんだけど、まぁ本当にヒトで同じ効果が得られるかは全くわからないっすね。
では、その他の能力についてはどうかといえば、上に挙げた実験(R)では、400mgの朝鮮人参を飲んだグループには認知テストの反応時間が上がったと報告されてたりします。似たような報告は他にもあるものの(R,R)、ほとんどの結果は統計的に有意じゃなかったりします。もしかすると、疲労感が改善したおかげで多少は認知にも影響するのかもですが、全体的には「まぁ別に使わなくてもいいかな……」ぐらいの印象ですかね。
▼血糖値の改善について
おそらくもっとも研究例が多いのが「朝鮮人参で血糖値は改善するか?」ってポイントで、そこそこの数のテストが行われております。たとえば、
- 9人の男性に200mgの朝鮮人参を飲んでもらい、その1時間後に持久走テストをしたところ、被験者の身体能力には目立った変化なし(乳酸産生は減少)。血糖値にも目立った影響はなかった(R)
- メタボリックシンドロームの男女48人に対象に1日4.5gの朝鮮人参を12週間続けて摂取させたところ、HDL-Cの増加が認められたが、その他のパラメータ(血糖値や血圧)にはプラセボと同じ程度の影響しかなかった(R)
- 2型糖尿病に悩む36人の患者さんに1日100~200mgの朝鮮人参を8週間続けて摂取させたところ、体重、気分、血糖値プロファイルの改善が見られた(R)
といったところ。ご覧のとおり結果はバラバラでして、もしかしたら高血糖な人には効くのかも?とは思うものの、全体的には効果レベルも低いですし、やはりあえて飲む必要はないのかなーってとこです。
まとめ
というわけで、朝鮮人参のおもだったデータを見てみました。この他にも、「ストレスに効くのでは?」とか「抗酸化パワーが強いのでは?」と言われることもあるんですけど、全体的な傾向は上記のテストと似たり寄ったりです。つまり、どの試験も精度がそんなに高くないし、「良い結果が出た」ってテストもそこまでの効果量が出てるわけじゃないんですよね。
個人的には「朝鮮人参は特に使わないかなー」ってのが現状の結論ですが、焼酎に漬けたりサムゲタンに使うと美味なんで、風味を楽しむために使うのがよろしいんじゃないでしょうか。