激怒系のクレームって本当に意味あるの?みたいな話
「ゴネ得」なんて言葉もあるとおり、「起こりまくってクレームをつける人ほど利益を得る」みたいな考え方があるわけです。悪質なクレーマーみたいなもんですな。
では、実際に怒る人は本当に得なのか?ってことで、そのへんを調べたデータ(R)が出ておりました。
これはクイーンズ大学などの実験で、4つの実験でゴネ得問題を調査しておられます。代表例として2つめのテストを見てみると、
- シンガポールとイスラエルのビジネススクールから学生160人を集める
- みんなに顧客サービスのシミュレーションを指示し、カスタマーサービスの従業員になりきってもらう
- 顧客がクレームをつけてきたシナリオを与え、そのクレームに対してどれぐらい補償するかを決めてもらう
みたいになってます。怒りまくってるクレームまたは普通のクレームのどちらかを受けた際に、そのお客さんへの補償額は変わるのかを調べたわけですね。
なんでここで、わざわざシンガポールとイスラエルから参加者を集めたかと言いますと、この2国は「権力格差」が大きく違うからです。「権力格差」ってのは、その文化ではどれぐらい権力の不平等が受け入れられてるか?ってのを表す言葉で、
- 権力格差が大きい国=目上の人間には従うのが当然と考える、上司はとりあえず偉いと考える、専門家が尊敬される
- 権力格差が小さい国=目上の人間とも平等、上司と部下は対等と考える、専門家とは同等の立場なので何を聞いてもOKと考えられる
ぐらいの違いがあります。この基準に照らすと、シンガポールは権力格差が大きくて、イスラエルは権力格差が小さいと考えられてきたんですよ。
そうなると、「日本はどうなのか?」ってのが気になりますけど、「権力格差」を考案したホフステード博士のサイトでランクづけがされております。これをみると日本の権力格差指標は54で、だいたい世界の真ん中ぐらいに位置するらしい。逆に権力格差が大きいのはマレーシア(104)、ロシア (93)、中国 (80)などで、逆にオーストリア (11)、ニュージーランド (22)などは低め。アメリカの指標は40で、意外と日本と変わらないもんなんすね。
さて、その上で実験結果がどうだったかと言いますと、
- 権力格差が大きい参加者は、めちゃくちゃ怒ってくる顧客に対しては補償額を低くし、普通にクレームをつけてきた顧客には補償を多くした
- 権力格差が小さい参加者は、めちゃくちゃ怒ってくる顧客に対しては補償額を高くした。ただし、このタイプの参加者に「あのクレーマーは怒るだけで特に怖くない」と納得させると、上と同じように普通にクレームをつけてきた顧客への補償を多くした
だったそうです。こういった理由が出てきた理由はシンプルで、
- 権力格差が大きい場合=めちゃくちゃ怒ってくる相手に不適切さを感じ、相手を罰したくなる気持ちが生まれる
- 権力格差が小さい場合=めちゃくちゃ怒ってくる相手に恐れを感じ、普通に弁償しようとする
みたいな感じになってます。権力格差によってクレーマーへの対応が変わってくるわけっすね。
つまり、この結果から教訓を得るならば、
- 顧客側はめちゃくちゃ怒らない方が、最終的には良い成果を得られるかも
- 企業側やクレームを受ける側は、とにかく事前にサポートを探して恐怖心を弱めるようにしておく
みたいになりましょう。どうぞよしなに。