今週半ばの小ネタ:退屈で良いアイデアが出せる人、ナルシストチーム、ポジティブ感情で記憶改善
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
退屈のおかげで良いアイデアが出せる人の特徴とは?
だいぶ前に「退屈は創造性を高める!」って話を紹介しましたけど、再び似たようなデータ(R)が出ておりました。これは101人の学生を対象にしたテストで、
- 参加者の半分にはボウルに入ったビーンズを色分けする退屈な作業を指示
- もう半分の参加者にはアート作品を作るように指示
- 全員が作業を終えたら、「もしあなたが遅刻したらどんな言い訳をしますか?」と尋ねて、できるだけ独創的な言い訳を思いつくように指示
って感じで、事前に「退屈な作業」または「大変な作業」のどちらかを行うことで、その後の発想力に影響が出るのかを調べたわけっすね。
すると、結果は予想どおりでして、
- 事前に退屈な作業をしたグループは、そうでないグループよりも多くのアイデアを出すことができた
- ただし、退屈な作業で良いアイデアを出せたのは、もともと開放性が高い参加者だけった(つまり、好奇心が強くて、どんな経験にもオープンな態度を取れるタイプ)
って感じだったそうな。生まれつき好奇心が旺盛なタイプであれば、退屈をバネにして良いアイデアを生み出せるんじゃないか?ってことっすね。
ナルシストが多いチームは成功するか?
昔から「ナルシストは意外と成功するよねー」みたいな話はよくありまして、ナルシストってのは他人からよく見られようとして努力するので、そのぶん能力が高かったりするんですよね。
もっとも、これはあくまで個人プレイをした場合の話。果たして、そのナルシストが所属する組織にどんな影響があるかはよくわかってなかったんですよ。
そこでニューヨーク州立大学バッファロー校などのチームが、「ナルシストが所属するチームは成績が良いのか?」ってポイントを調べる調査をしておりました(R)。
ざっくりどんな調査かと言いますと、
- NBAの30チームを集め、2013~4年のシーズンに行われた試合から82ゲームのデータを集める
- 各選手のツイッターアカウントをチェツクして、ナルシスティックなツイートや写真が投稿されてる割合をチェック(先行研究でもツイートからナルシシズムを判断できるって報告があるんだそうな
- 2つのデータを比べて、チームメンバーのナルシシズムと成績の関係を調べる
みたいになってます。すると、結果はこんな感じになりました。
- 平均ナルシストポイントが高いチーム(ナルシストが多いチーム)は、ポイントが低いチームよりチームワークが悪く、そのせいで成績が悪かった
- ナルシストポイントが低いチームは、シーズンが進むごとにチームワークがアップし、選手同士も仲良くなっていた(アシスト数が増えるんだそうな)
というわけで、組織のナルシシズムレベルが高くなるほど、構成員はおたがいに協力しなくなり、長じては成績も下がっていくらしい。この結果をもとにチームは、「組織内のコアメンバーにナルシシズムが高い人間を配置しない方が良い」とコメントしてまして、そりゃそうかもしんないっすね。
ポジティブな感情が多い人は歳をとっても記憶力が落ちない?
記憶力を保つためには良い食事や運動が必要なのは間違いないとして、さらに「ポジティブな感情が記憶力を保つ!」みたいな話(R)が出ておりました。この研究では、991人の男女を長期にわたって追跡調査してまして、
- 過去30日間に経験したポジティブな感情の種類と頻度を数年ごとにチェックする
- 上のデータを記憶力テストの結果と比べる
みたいなデザインになってます。その結果がどうだったかと言うと、
記憶力が年齢とともに低下する。しかし、肯定的な感情のレベルが高い人は、ほぼ10年のスパンで見ると記憶力の低下はゆるやかだった。
だったそうで、ポジティブな感情を日ごろから体験してる人ほど、歳をとっても記憶が落ちにくい傾向があったそうな。
まー、この研究だと「記憶力がいいからポジティブなのだ!」って可能性は否定できんのですが、過去の調査でも、楽観的な人ほど食生活の質が高いとか、運動をするケースが多いとか、心臓発作や脳卒中になる可能性が低いとか言われてたりはします。もし因果関係が逆だったとしても、少なくともポジティブな感情が多いほうが人生が楽しいのは間違いないんで、意識して鍛えておいて損はなかろうかと。