日常のストレスをまったく感じない人は「脳が衰えちゃうんじゃないの?」という話
人生には適度なストレスが必須!みたいなことを、「不老長寿メソッド」にも「科学的な適職」にも書いております。あまりにストレスがないと人体は適切な刺激を受けられないので、各機能が衰えちゃうんですよね。
ただし、一方では過度のストレスや慢性的なストレスが良くないのも事実で、片頭痛や心疾患などの原因になるのは間違いないところ。そこらへんのバランスには気をつけたいところであります。
で、新しいデータ(R)は、「ストレスの良いとこと悪いとこ」について新たな知見を提供してくれててよかったです。これはペンシルバニア州立大学の研究で、まずはチームの問題意識を紹介しておくと、
ストレスは悪いものだという前提で考えられてきたが、それではストレスを感じたことがない人たちはどうなるのだろう?これまでの研究では、ストレスが高い人と低い人の比較に焦点を当ててきましたが、ストレスがない人がどのような状態なのかについては研究がなかった。
みたいになります。ストレスがほとんどない人ってのは、果たしてどのような状態になるのか?良いことだらけなのか?それとも、悪いとこもあるのか?って問題ですね。
ということで、どんな研究だったのかと言いますと、
- 2,804人の参加者を集め、まずはみんなに認知機能テストを実施
- みんなに8日間にわたってインタビューを行い、慢性疾患、身体的症状、気分、日中に経験したストレスを尋ねる
みたいになってます。1週間強のストレス状況を記録して、それぞれの健康や認知の状態と比較したわけですね。
で、結果です。
- 調査期間中に「ストレスを感じなかった」と回答した参加者の割合は約10%だった
- ストレスを感じなかった人は、ポジティブな気分を経験している可能性が高く、さらには健康状態も良い傾向があった
- 一方で、ストレスを感じなかった被験者は、ストレスを感じた被験者に比べて、認知機能テストのスコアが低かった。このスコアの差は、加齢による約8年の認知機能の低下に相当する
ってことで、ストレスを感じない状態はポジティブで健康なのかもしれないが、一方では頭の働きを下げてしまう可能性もあるんじゃないか、と。うーん、怖い。
1週間ちょいの観察結果でしかないんで、明確な原因と結果がわかるわけじゃないんですけど、研究チームはこんなことを言っておられます。
ネガティブな出来事とポジティブな出来事は正反対のものだという考え方あるが、実際には両者の関係は相補的だ。現実的には、ストレス体験が脳トレの機会を生むケースは少なくない。
例えば、リモートの重要な会議の前に急にパソコンが故障したら、あなたは大きなストレスを感じるだろう。しかし、このような状態は、同時に問題解決のために脳を使う機会も与えてくれる。
ストレスな状況は嫌なものだけど、そのような場面では脳をフル回転させねばならないことが多く、結果的に頭に良い刺激を与えているのではないか?ということですね。
もちろん、トラブルの種類によっては「自分の力じゃどうにもならない」ってケースもありますんで、そういったタイプのストレスは脳にも悪い可能性が大であります。ただし、一方では「自分の力でどうにかなるトラブル」は脳トレとして機能するから、慶事として受け入れたほうがいいんでしょうな。
重要なのは、ストレス要因にどう対応するかだ。ストレッサーに遭遇したときに、動揺したり心配して対応することは、ストレッサーの数よりも不健康だ。
ってことで、なんか嫌なことがあったら、「これは脳トレなのだ!」と考えて挑んでみると、何かと良いかもしれません。どうぞよしなに。