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今週末の小ネタ:若いころに貧しいと大人になってから体が痛む?睡眠薬の効果は数年も保つ?体が痛いなら物語だ!物語に入り込むのだ!

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

 

若いころに貧しいと大人になってから体が痛む説

ジョージア大学などから、「若いころに貧しいと大人になってから体が痛むのでは?」みたいな説(R)が出ておりました。これがどういった話かと言いますと、

 

  1. 508組の夫婦に協力を頼む

  2. 1991年、1994年、2001年に調査を行い、その年ごとに「どれぐらいお金があるか?」「自分で人生をどれぐらいコントロールできていると思うか?」を尋ねる

  3. さらに、数回にわたって「前月にどれぐらいの痛みを感じたか?」「痛みのせいで生活や仕事への支障があるか?」も調べる

 

って感じでデータを取ったところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 家族の経済的負担とコントロール感の間には、あらゆる点で相関関係があった(要するに、貧しさを感じている人は、「私は生活をコントロールできていない!」と感じやすい)

 

  • 若いころに貧しさを体験した人は、あとになって身体の痛みが大きくなりやすい。一方で、世帯収入が高い人は、全体的に身体的な痛みを感じにくい傾向があった

 

  • 調査の期間中に貧しさが増加した人も、やはり後年になって痛みが強くなった

 

ということで、なぜか貧しさと身体の痛みには関係がありそうなんですけど、なんでこういう現象が起きるのかは謎。もしかしたら貧しさのストレスが身体に炎症を起こしてるのかもですが、この研究だけだとなんも言えないっすね。

 

 

いちおう研究チームの予想をまとめておくと、

 

  • 人生のコントロール感がないストレスが、痛みや体調不良につながるから?
  • 慢性的なストレスのせいで、ストレス反応にかかわる脳の回路に長期的な変化が起きるから?

 

みたいになります。まー、なにが正しいかは謎ですけど、とにかく金銭的なストレスはないに越したことはないよなーってことで。

 

 

 

睡眠薬の効果は数年後でもあるのか?問題

睡眠薬はどこまで効き続けるの?って問題を調べたデータ(R)が出ておりました。不眠のせいで睡眠薬を使ってる人は少なくないですが、延々と睡眠薬を飲み続けた場合の効果はどうなの?という問題っすね。

 

 

これは睡眠薬を使い始めた238人の女性を対象にした研究で、睡眠薬を使ってない447人の女性と比べたんだそうな。ここで調査されたクスリはベンゾジアゼピン系の睡眠薬と、ゾルピデム、ザレプロン、エスゾピクロンなど(いわゆるZドラッグ)だったそうな。

 

 

すると、結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 1年後に調べたところ、睡眠薬を飲んでいる人たちの「ぐっすりスコア」は、「入眠」2.6 vs 2.3(非使用者)、「夜中の覚醒」3.6 vs 3.5、「早朝の覚醒」2.8 vs 2.5であり、どの結果も統計的に有意な差はなかった

  • さらに2年間の追跡調査でも、睡眠薬を使っている人と使っていない人のあいだに差は見られなかった

 

ということで、どうも睡眠薬をながーく続けるのはあんま得策ではないのかも?ぐらいの印象っすね、もちろん、だからと言って「睡眠薬はやめよう!」って話にはならないので、あくまでお医者さんの指示を守っていただきたいわけですが、研究チームはこんなことを言っておられます。

 

ほとんどの患者は、認知行動療法を受けるべきだと考えられる。

 

もしかしたら患者の一部は睡眠薬で長期的な改善を得られるかもしれないが、大半の参加者には1年後と2年後の調査でメリットが見られなかったことは、薬物療法を試そうとしている患者に有益な情報となるだろう。

 

ってことで、睡眠薬を使う際はぜひ認知行動療法もやってみては?という提案がされておりました。確かに認知行動療法なら副作用もほぼないでしょうから、試す価値は十分にあるでしょうね。

 

 

 

体が痛いなら物語だ!物語に入り込むのだ!という話

物語の力で体の痛みが減る!」というナイスな研究(R)が出ておりました。これはUFABCなどの調査で、喘息や気管支炎などが原因でブラジルのICUに入院している2歳から7歳の子ども81人がが対象。実験では全体を2つのグループに分けまして、

 

  1. 物語グループ:25~30分にわたって子供たちに童話を読みきかせる
  2. 謎解きグループ:25~30分にわたってなぞなぞを解かせる

 

って感じで割り振り、さらにはコルチゾール(ストレスホルモン)とオキシトシン(共感に関するホルモン)の変動をチェックしつつ、痛みのレベルも評価してもらったら、こんな結果になりました。

 

  • どちらのグループも、ストレスホルモンのレベルが下がり、オキシトシンの量が増え、主観的な痛みと不快感も減った

  • ただし、物語グループがゲットした良い効果は、なぞなぞのグループの子どもたちの2倍だった

 

ということで、どうやら物語の効果は謎解きよりも大きいらしい。まぁここらへんは謎解きの難易度によって数値が変わるような気もしますけど、とにかく物語の効能がデカいってのはありそうっすね。

 

 

チームいわく、

 

物語の中では、"ナラティブ・トランスポート "と呼ばれる現象が起こる。子供は空想を通じて、別の世界、つまり病室とは異なる場所に自分を連れて行く感覚や思考を経験でき、その結果、入院という嫌な状況から遠ざかることができる。

 

とのことで。物語のほうが没入感が強いぶんだけ現在の状況から距離を置くことができるわけっすね。というか、「ナラティブ・トランスポート」って言葉がかっこいいっので、これから使っていきたい(「俺は現実から逃げてるのではない!ナラティブ・トランスポートなのだ!」みたいな)。

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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