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今週末の小ネタ:住む部屋と性格、子供のタンパク質、感謝とメンタル


Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

住む部屋で人間の性格はわかるか?

テキサス大学の先生が書いた「スヌープ!」では「人間の性格は住んでいる部屋で判断できる!」みたいな話がありましたが、新しいデータ(R)も「人間の性格は住む部屋に反映されるか?」みたいなポイントを掘ってて楽しかったです。

 

 

こちらもテキサス大学などの研究で、

 

  1. 約300人の高齢者を集め、最も長い時間を過ごす部屋(リビングルームとか)の写真を撮影する

  2. 撮影した写真を第三者に見せて、「この部屋に住んでいる人はどんな性格だと思うか?」を評価してもらう

  3. 参加者には通常の性格テスト(ビッグファイブ)もやってもらい、部屋の状況と比べる

 

みたいになってます。その人が行ったデコレーションや家具の種類は、人間の基本的な性格を反映しているのか?ってとこを調べたわけですね。

 

 

その結論を申し上げますと、居住空間はその人の性格を大きくふたつ反映していたんだそうな。

 

  • 誠実性が高い人(マジメにコツコツやる人)は、より新しくて、より快適な家具を持つ傾向がある

  • 外向性が高い人(社交が大好きな人)は、より明るい装飾品を持ち、新しいものを持つ傾向がある

  • ビッグファイブのうち、開放性、神経症傾向、協調性3つは、人々の居住空間の傾向に反映されていなかった

  • 生活空間に自分の性格が反映されている方が、幸福度を高める影響が大きく、自分の人生をより良く感じやすかった

  • 部屋が散らかっている方がうつ病の症状が少ない

 

だったそうな。誠実性と外向性のみ部屋の家具や飾りに影響するものの、それ以外の特性は関係がないんだ、と。

 

 

また、部屋が散らかっている方がメンタルが良いってのは意外な気もしますが、研究チームいわく、

 

散らかっているということは、環境をコントロールしようとしていることなのかもしれない。手近なところに物を置いておけば、コントロールしやすいからだ。

 

同時に、散らかっていることで、家でくつろいでいるように感じる人もいるだろう。

 

とのこと。もちろんゴミ屋敷レベルの散らかりはマズいものの、一般的な散らかりは健全な精神の表現になってるかもしれないわけっすね。

 

 

いずれにせよ最も重要なポイントは、

 

居住空間を作るのに理想的な方法はなく、その人に合ったものでなければならない。

 

ということでそうから、とりあえず自分を表現するような部屋づくりをするのが良さそうですよーってことで。

 

 

 

子供に必要なタンパク質量を決めるのが意外と難しい問題

不老長寿メソッド」では、「かつて言われてたタンパク質の摂取量は間違ってて、本当は体重1kgあたり1.6gは摂取したほうがいいみたいよー」という話を書いております。昔の検査法は精度が悪いことが多かったんで、本当に必要な量がわかりづらかったんですよね。

 

 

といったところで、新しいデータ(R)は、「子供が本当にとるべきタンパク質の量は?」ってのを調べてくれてて勉強になりました。いまのところ、4~13歳の子供は1日に体重1kgあたり0.8~1gぐらいのタンパク質を取ろう!と言われることが多いんですけど、それは本当なのかって問題っすね。

 

 

で、この論文は、現在のタンパク質の測定法をいろいろレビューしてまして、「どの方法を使うと正しい数値が出せそうなのか?」を考えてくれてます。よく使われる窒素バランス法の他、近ごろよく見かけるIAAO、安定同位体標識クレアチンを使う方法など、複数の手法からいろいろとチェックされていて勉強になりますねー。

 

 

もっとも、これらの中から「これがベストだ!」って手法を選ぶのは難しくて、基本的にはどれも一長一短でして、窒素バランス法は実際よりも低めに出そうだし、IAAOはちょい高めに出そうだし……って感じで、いまいち決め手に欠ける感じではあります。

 

 

そんななか、現状の状況をまとめておくと、

 

  • 昔ながらの窒素バランス法を使う場合は、1日に0.95g/kgぐらいのタンパク質が良いと出る
  • 新しいIAAO法を使った場合は、1日に1.55g/kgぐらいのタンパク質が良いと出る
  • 運動をよく行う子供の場合は、さらなるタンパク質が必要な可能性もある

 

みたいになります。まー、はっきり「これだ!」と言えないのが悩ましいですけど、現時点で子供のタンパク質の過剰摂取の被害報告ってほぼないんで、あくまでカロリーの質が高いタンパク質を体重1kgあたり1.5gぐらいとってもいいのかもしれませんなぁ。

 

 

 

人生への熱意がある人はなぜメンタルがへこまないのか?

感謝の気持ちはメリットが多い!って話はよく書いてますが、新しい研究(R)では「感謝の気持ちが人生への熱意をもたらす!」って話になってておもしろいです。

 

 

これはマカオ大学などの調査で、18歳から25歳までの大学生326名を対象に、抑うつ症状の測定を行いつつ、みんなの「感謝の気持ち」や「人生への熱意」のレベルをテストで調べ、それぞれの関係をチェックしてます。

 

 

ちなみに、ここで言う「熱意」は、VIA-ISが提示する24の強みのひとつで、昔から「これが高い人はメンタルが低下しにくいんじゃないの?」と言われてきたんですよ。ただし、他の特性(マインドフルとかグリットとか)と比べてまだ調査が進んでいないジャンルでもあったんですよね。



でもって、分析の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 「人生への熱意」が高い人ほど鬱病になりにくく、この効果は「感謝の気持ち」によって完全に媒介されている

 

ことを発見しました。つまり、人生への熱意が大きな参加者は、「自分には感謝すべきことがたくさんある!」と考える傾向があり、それが抑鬱症状の低さにつながっていたわけっすね。

 

 

まー、これは中国の研究なんで、日本でどれぐらい当てはまるかは謎なんですけど、感謝の心理的なメリットは日本でも確認されてますんで、熱意がそんなにない人(私もそうですが)も、そこらへんは注意しとくといいかもしれません。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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