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今週末の小ネタ:男性ホルモンで非倫理的に?ナルシストは記憶力が悪い?嘘つきは自分も騙されやすい?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

男性ホルモンが多い男は非倫理的な行動を取りたがる説

男性ホルモンで性格が変わる!みたいな話は昔からありまして、

 

 

なんて話があるわけです。男性ホルモンはアグレッシブさに関わるホルモンなので、当然ながら人間の行動にも影響を与えるわけですね。

 

 

そこで新たなデータ(R)も「テストステロン(男性ホルモン)が多い男は非倫理的な行動をとりやすい!」みたいな話が出ておりました。どんな実験なのかといいますと、

 

  1. 男子大学生83名、女子大学生91名から唾液を採取してベースラインのテストステロンを測定

  2. 参加者を2グループにわけ、一方には「最後に洗濯をしたときのこと」を話してもらい、もう一方には「自分が恋愛感情を持っている異性が他の人に追われていたときの気持ち」を思い出してもらう

  3. みんなに非倫理的な行動をとりたいかどうかのアンケートを実施。アンケートには、「確定申告で怪しい控除を受ける」「既婚者と不倫する」などの項目が含まれていた

 

だったそうです。男性ホルモンのレベルと非倫理的な行動には関係があるのか、と。

 

 

で、結果はこんな感じです。

 

  • 男性ホルモンが多い人ほど「非倫理的な行動を取りたい!」って意欲があったが、それは性内競争条件の男性に限られていた(つまり、男性ホルモンが多い男性が恋愛バトルの状況に置かれたときにだけ、悪い行動をするモチベーションが上がる)

 

  • 「洗濯をしたときのこと」を思い出したグループや、女性についてはテストステロンが多くても非倫理的な行動への意欲は高まらなかった

 

というわけで、恋愛のイザコザに巻き込まれた場合にのみ、テストステロンが多い男性は非倫理的になるんじゃないの?ってことっすね。

 

 

研究チームいわく、

 

過去の研究では、テストステロンが地位獲得の動機と関連していることがわかっている。そのゆえに今回の結果は、テストステロンの多い男性は、「非倫理的な行動」のことを、社会的な地位を得るための手段としてを認識しているように見える。

 

言い換えれば、女性にモテるために他の男性と競争する状況で、テストステロンが多い男性は、ステータスを得るために怒り、非倫理的な行動をとり、女性にモテる可能性を高めているのだ。

 

とのこと。つまりテストステロンが多い男は、あえて悪い行動を取ることでステータスを上げて、女性にモテようとしてるんじゃないの?て仮説ですね。なんかめんどうな奴ですけど、これはありそうな話っすなぁ。

 

 

 

ナルシストは記憶力が低下しちゃうぞ!問題

ナルシストは記憶力が悪い!」みたいな話(R)が出ておりました。まずは研究チームによるポイントを紹介すると、

 

ナルシストが自我を肯定すてくれるポジティブな情報を選ぶ。そして、他人への関心が薄いため、他人に関する情報を処理するのが苦手になりやすい。

 

みたいになります。ナルシストは自分が大好きなので、自分に関係がない情報には意識を向けず、そのせいで記憶の定着が悪いのだ、と。おもしろいポイントですねぇ。

 

 

これは4つの実験で構成された研究なので、重要なとこだけ取り上げておくと、

 

  • 187人の大学生(63%が女性、平均年齢20歳)を集め、画面上に映る自分の顔を見ながらオンラインの講義を視聴するように指示(Zoomみたいな感じ)。その後で講義の内容を記憶するテストを行ったところ、予測どおり自己愛が強い人ほど、講義資料を記憶していなかった。

 

って感じの結果が出ております。昨今はZoomを使った会議や講義も増えてきましたが、この実験が正しい場合は、ナルシシズムにあふれた人は「画面上の自分の顔にばかり意識が向かっちゃって大事なことを覚えていない!」って事態にハマっちゃいそうですな。

 

 

ということで、この研究を現実世界に活かすのであれば、

 

  • ナルシシズムが旺盛な人は、オンライン会議などでは自分が映る画面はオフっといたほうがいいよ!

 

  • ナルシストは自分に関わる情報は記憶しやすいから、ナルシストは覚えたい状況を自分にひきつけることを考えるといいよ

 

  • ナルシストは他人の顔と名前を覚えるのが苦手だから、もしナルシストが自分の顔や名前を覚えてくれなくても気にしなくていいよ!

 

みたいになるでしょうね。お気をつけあれー。

 

 

 

デタラメを言う人ほどデタラメに引っかかりやすい!

デタラメを言う人はデタラメに引っかかりやすい!って話(R)が出ておりました。フェイクニュースを他人にバラまいたり、エピソードを盛って伝えるような人たちは、自身が偽の話にダマされやすいというんですな。

 

 

簡単にどんな研究だったかと言いますと、

 

  • 研究1:参加者がどれぐらいデタラメなニュースを信じるか調べると同時に、みんなが普段からどれぐらいデタラメを言ってるかもチェックする
  • 研究2:参加者の認知能力の測定、メタ認知のレベルなどをチェックし、さらにみんながどれぐらいデタラメを信じるのかを調べる

 

みたいな感じになります。もともと過去の研究では「デタラメをよく言う人は認知能力や分析的思考力が低いことが多い」って傾向が報告されてきたんで、そこらへんの関係をあらためてチェックしてみたわけですね。

 

 

で、ここでは「デタラメを言う人」の種類を2つのタイプにわけてまして、

 

  1. 他人から関心されようとしたり、他人を説得しようとするためにデタラメを言うタイプ(説得的うそつき)

  2. 自分や他人の評判が悪くなるのを防ぐためにデタラメを言うタイプ(回避的なうそつき)

 

って感じで、どっちのほうがデタラメに引っかかりやすいのかも調べてます。そこで研究の結果をまとめると、

 

意図的に人を惑わそうとする人、つまりデタラメを言う人は、自分自身がデタラメに引っかかりやすいということだ。その人がどれだけ頭が良くて分析的であるかは関係ない。

 

説得的うそつきは、自身もデタラメに引っかかる危険性が高く、自分が引っかかりやすいことに気づいていないかもしれない

 

だったそうです。研究チームの予想どおり、デタラメをよく言う人ほどデタラメに引っかかりやすかったんだけど、それは「自分をよく見せたいタイプの嘘つき」に限るみたいなんですな。せんじつめると、見えっぱりな嘘つきほど自身もダマされやすかも?ってことで、なんか納得の結果と申しますか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。