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腸内細菌サプリで頭は良くなるのか?のわりと精度高めな系統的レビューの話


 

その昔、「プロバイオティクス( 腸内細菌サプリ)で頭が良くなるかも?」なんて話がありました。ヒトの脳と腸はつながっているので、腸内環境をよくすれば脳の働きにも影響が出るかもしれないんですよ。

 

 

実際、過去のデータ(R)では、腸内細菌の状態が変わることにより、パーキンソン病、統合失調症、大うつ病、アルツハイマーなどで見られる認知機能の障害も変化する可能性が示唆されてまして、やっぱ脳と腸は影響しあってるんだろうなーって気がするわけです。まだあんまり解明されていない分野なんですけど、おもしろいもんですよねぇ。

 

 

ということで、新たにレディング大学などが行った研究(R)では、「プロバイオティクスが脳の働きに役立つか?」ってのを深堀りしてくれてて有用でした。どんな研究だったかと言いますと、

 

  • 少なくとも1種類の生きた腸内細菌のサプリを使い、認知機能(記憶、注意、実行機能など)に与える影響を調べた過去の研究をピックアップ
  • 選択基準にフィットした30件の研究を特定し、その結果を、乳幼児と子供、若年・中年成人、高齢成人の年齢別に分類する

 

って感じの系統的レビューになってます。プロバイオティクスと脳機能のまとまったデータは少ないので、とても貴重でよいですなー。

 

 

では、結果を年齢別に見てみましょう!

 

 

 

乳幼児への効果

30件のうち3つの研究では、超低出生体重の早産児を対象にプロバイオティクスの効果を検討しております。乳児が食事を取れるようになってから退院するまでプロバイオティクスを投与したいうえで、これらの乳児を1年半から5年にわたって追跡調査したところ、その結果は、

 

  • プロバイオティクスは認知機能の発達に大きな影響を与えない!

 

だったそうです。また、正期産の乳児を対象に行われた2つの研究でも、プロバイオティクスは認知機能に有意な影響を及ぼさないという結果だったそうで、乳幼児にはあんま関係ないのかもですな。

 

 

まぁ、乳児を対象とした研究って「母乳を与えているかどうか?」で結果が変わったりするんで、そこらへんデータも見ないと判断しづらいところではありますが(母乳には天然のプレバイオティクスが含まれているので)。

 

 

 

若年および中年の成人への効果

30件のうち4つの研究では、肝硬変の人へのプロバイオティクスの効果を評価しております。ざっと主だったところを並べると、

 

  • ある研究では、プロバイオティクスを60日間摂取した肝性脳症(肝硬変の合併症)の参加者は、30日後に測定した3つの認知タスクすべてで有意な改善を示した

 

  • しかし、残る3つの研究では、肝硬変はあるが肝性脳症がない人の場合は、プロバイオティクスを8~12週間飲み続けても認知テストの結果は改善しなかった

 

  • やや精度が低めな2つの試験では、HIVに感染した成人参加者に6ヵ月間プロバイオティクスを摂取してもらったところ、どちらの実験でも記憶力、言語の流暢さ、ワーキングメモリのテストで有意な改善が見られた

 

  • 線維筋痛症、慢性疲労症候群、大うつ病の患者を対象とした3つの研究では、プロバイオティクスによって認知機能の改善がみられた。線維筋痛症の研究では8週間のプロバイオティクス治療を受けた参加者は衝動的な選択が減少し、慢性疲労症候群の参加者は4週間のプロバイオティクスと抗生物質のエリスロマイシンの投与により、注意力、処理速度、認知的柔軟などの改善が見られた。また、大うつ病を対象にした8週間の研究では、プロバイオティクスと抗うつ薬を併用したところ短期記憶の改善が認められた

 

  • ただし、健康な成人を対象とした研究では結果がバラバラ。5つの研究では、プロバイオティクスによる認知機能の改善に一貫性がないことが示され、2つの研究ではプロバイオティクスのサプリには脳の改善効果がないことが示された

 

 

 

高齢者への効果

30件のうち3つの研究では、軽度の認知障害を持つ成人を対象に、プロバイオティックの効果を調査しております。こちらもだだーっと箇条書きでまとめてみましょう。

 

  • あるパイロット研究では、24週間のプロバイオティクス投与により、認知障害テストのスコアが改善されることがわかった。ただし、より大規模なプラセボ対照試験では、12週間のプロバイオティクス治療とプラセボの両方でスコア改善が認められており、どう判断すべきかは微妙

 

  • 3つ目の研究では、プロバイオティクスを12週間摂取した軽度認知障害のある参加者に、記憶と注意の改善が見られた

 

  • アルツハイマー患者を対象とした3つの研究では、プロバイオティクスを12週間摂取した場合にのみ認知機能に対する様々な効果が認めらた。また、2つの研究では、認知障害スコアの改善が見られた

 

  • 健康な高齢者を対象にプロバイオティクスを試した2つの研究では、いっぽうの研究ではプラセボよりも情報処理および実行機能が改善たものの、もういっぽうの研究では目立った改善は見られなかった

 

 

 

暫定的な結論とか

ってことで、ひととおり見てみましたが個人的な感想としては、以下のような感じになります。

 

  • 若い人はプロバイオティクスを飲んでも脳がどうこうなることはなさそう
  • 年を取れば取るほどプロバイオティクスに意味が出てくる可能性は高そう
  • ただし、目立った疾患がない健康な人がプロバイオティクスを飲んでも、さらに脳機能が上がるってことではなさそう

 

おそらく、成人より上の年齢であれば、プロバイオティクスの使用と認知機能との間に関係があるのは確実っぽいんだけど、具体的にどんな状況で何をどう飲めばいいのかまでは判断がつきかねますね。全体的に見ますと、中高年の方であれば安全だとは思うので、「腸内の改善に加えて脳機能の保護につながればいいなー」ぐらいにお考えいただくといいんじゃないでしょうか。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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