「パレオダイエットで病気に!」というデータから、あらためてレジスタントスターチの大切さを知るなど
「長期のパレオダイエットは体に悪いのでは?」みたいなデータ(R)が出ててビビりました。まず結論から簡単に申し上げますと、
- パレオダイエットを長くやってるとTMAOが増えるのでは?
って感じになります。TMAOってのはお肉や卵にふくまれるカルニチンやコリンから作られる物質で、くわしくは「肉と卵で早死にリスクが増大?恐怖の物質「TMAO」に立ち向かうにはどうすればいいいのか?問題」などをご参照ください。とにかく心疾患リスクを高めちゃう怖い物質なんですよ。
ご存じのとおり、当ブログではパレオダイエットを推奨してますんで、長期的にTMAOが増えるとしたら一大事なわけですね。ということで、どんな研究だったのか、詳細を見てみましょうー。
これはエディス・コーワン大学などの研究で、
- パレオ食(穀物と乳製品の摂取量が1日1食以下)を1年以上続けている男女(44人)に協力をお願いする
- みんなの食事の摂取量と消化器系および心血管系の健康状態を調べる
- 上記のデータを、オーストラリアの一般的なバランスのとれた食事をしている人(47人)とくらべる
みたいになってます。パレオ食の実践者と一般食を比べたら、どんな違いが確認されるのか、と。
でもって、結果をざっくりまとめますと、
- パレオ食グループは、複合糖質を代謝して酪酸を作ってくれるビフィズス菌の量が減っていた
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パレオ食を長く続けたグループは、トリメチルアミンを産生する悪玉菌(Clostridium hathewayi)が多くなっていた
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パレオ食が長いグループ(44人中22人)ほど、体内のTMAO量が増えていた
みたいになります。パレオダイエットを続けた人は善玉菌の量が減って悪玉菌が増え、それによりTMAOの量も増えてしまうのではないか、と。
なんとも恐ろしい話でして、思わずパレオ食を止めたくなっちゃうわけですが、データをもうちょい見てみると以下のような傾向が見て取れるわけです。
- パレオ食を長く続けている参加者ほど、レジスタントスターチの摂取量が少なかった
- パレオ食の参加者はおもに非デンプン性の野菜ばっかり食べていた(葉物野菜のように糖質が少ない食材を1日約7皿分ぐらい。1日の食物繊維の摂取量は平均28グラムちょい)
ということで、どうもパレオ食をしている人たちは、葉物野菜みたいに低糖質な野菜ばっか食べてたせいで食物繊維の総摂取量が減ってしまったらしい。言わずもがな、狩猟採集民は1日で42.5gの食物繊維をとってるんで、これじゃ本末転倒だよなーとか思うわけです。
要するに、どういうことかと言いますと、
- パレオ食にこだわりすぎて根菜類のように体に良い野菜の摂取量が減っちゃう(サツマイモとか)
- そのせいで体によい菌が減っちゃうし、悪い菌は増えちゃうし
- 善玉菌が減ったせいでTMAOみたいに体に悪い物質を処理できない
- 病気のリスクが上がる!
みたいな流れですね。私は以前から「サツマイモを食べようぜ!」と言ってるんですが、欧米のパレオダイエットだといまだに「パレオダイエットは低糖質だ!」って主張も多いんで、こういうトラブルが起きるのもむべなるかなと申しますか。
つまり、この研究をまとめると、
- パレオダイエットだろうが、低糖質にこだわると体に悪いぞ!
って感じになりましょう。もちろん葉物野菜は重要なんだけど、でんぷん質の根菜類も食べていかないと、レジスタントスターチみたいに体に良い食物繊維の摂取量が減ってしまうので、そのせいで腸内環境が悪化しちゃうぞってことですね。これは低糖質系のダイエット全般に言えることですが。
というわけで、この研究から教訓を引き出すのであれば、
- もちろん、新鮮な野菜と果物を1日8皿以上摂るのを目指すのは基本
- しかし、特定の野菜にばかりこだわると腸内環境に良くないので、アブラナ科の野菜、葉野菜、根菜類、キノコ類、リンゴ科、柑橘類、ベリー類、ナッツ類、種子類など、さまざまな種類の野菜と果物を摂らないと厳しい
- 理想的には2日に1回ぐらいのペースで、いろんな種類の野菜と果物をサイクルさせていくのが望ましい
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レジスタントスターチは、豆類、種子、根菜類、塊茎に豊富なので積極的に取り入れたい。特に調理してから冷ました青バナナやジャガイモに多いので、ガンガンに食べていきたい
って感じになるんじゃないでしょうか。健康食というと、ついつい特定の食品ばかり食べる方向に向かいがちなんですが、結局はいろんなものを食べまくってリスクを分散させるのがベストだよなーってことで。