スパイスを使うと代謝が上がる!それならダイエットに使えるの?という問題について考えてみよう
「スパイスで代謝があがる!」って話はよく聞くところです。ショウガやコショウといった定番の香辛料は交感神経を刺激する働きがあり、そのおかげで消費カロリーを増やすことができるって説ですな。
これが本当ならスパイスでダイエットも可能かも?って気がするわけですが、そこらへんを調べた研究(R)が出てて参考になりました。
これは22名の健康で普通な体型の男性を対象にしたテストで、
- ショウガ20g
- わさび8.3g
- マスタード21g
- 黒胡椒1.3g
- プラセボ
っていう5種類のスパイスをブランチに使ってもらったんだそうな。もちろんスパイスの使用は1日1種類ずつで、各スパイスを使うごとに3週間のウォッシュアウト期間をおいたんだそうな。
食事の内容は、パン、ハム、バター、ラズベリージャム、煮込んだリンゴ、スクランブルエッグ、細切りにしたビートルート、250ミリリットルのフルーツジュース、200ミリリットルの水で、午前9時半に提供されたとのこと。カロリーは約700キロカロリーで、タンパク質が14%、脂肪が26%、炭水化物が60%に設定したらしい。
さらに午後には、トマトソース、ハム、チーズをのせたピザに500ミリリットルの水を添えた昼食を食べてもらいまして、満腹感が得られるまで食事をするように指示。そのうえで、みんなの脂肪が燃焼する量や心拍数と血圧、食欲の主観的評価などを調べたところ、結果は以下のようになりました。
- どのスパイスを食べてもDIT(食事誘発性熱産生:食事を摂ることで発生するカロリー消費量)に有意な差は見られなかったが、マスタードだけは他のスパイスよりもDITが高かった(ただし、代謝の向上は1時間あたり約2キロカロリーに過ぎないので、現実的には意味がないレベル)
- 脂肪や糖質が燃える量と、アドレナリンとノルアドレナリンについては、どのスパイスをとっても大きな違いはなかった
- わさびだけは他のスパイスよりも最低血圧の上昇と心拍数の低下が有意に見られたが、その効果はやっぱり非常に小さかった
- 昼食時のカロリー摂取量にはどのスパイスも影響を及ぼさず、満腹感、空腹感、満腹感、食事の摂取量にも影響を及ぼさなかった
- エネルギーバランスに関しても、各条件間で有意な差はなかった
ということで、この研究を見る限りでは「いくらスパイスを増やしても体重や脂肪の減少にはまったく影響がない!」と解釈するしかなさそうであります。マスタードだけはちょっと有意だったものの、プラセボと比べて1時間あたり2キロカロリー以下じゃ、どうにもならんですわな。
もっとも、この研究では5種類のスパイスしか使ってないですし、特に痩せる(と言われてる)スパイスとして有名な「唐辛子は使うべきでしょ!」とか思うわけですが、まぁ過去には「カプサイシン(唐辛子の辛味成分)は代謝についてはほぼ無意味」って結論も出てるんで、おそらく同じような結論が出るんでしょうが……。
ってことで、この実験の結論をまとめておくと、
- この研究で使われたスパイスは、エネルギー消費や食欲に重要な影響を与えない
- 代謝に影響を与える可能性のあるスパイスがあったとしても、その効果は非常に小さいため、体重や脂肪の減少には役立たない
という感じでして、カロリーを消費したい!や食欲を抑制したい!という人は、タンパク質の摂取量を増やす方がはるかに効果的だと言えましょう。とはいえ、スパイスってのはポリフェノールたっぷりの優良食材だし、タンパク質の酸化も抑えてくれますんで、普段の食事のサポートとして使うのがいいだろうと思うわけですが。