わざと問題の答えを間違えて学習の効果を上げる「エラー訂正法」ってなんだ?
世の中にはいろんな勉強法があるもんですが、新しい研究(R)は「わざと間違えると学習の効果が上がるかもよ!」って話になってておもしろかったです。たとえば、テストの勉強をしているときなどに、正解を知っているにもかかわらずわざと間違えて、その後に修正したほうが教材をより効果的に学習するのに役立つかも?みたいな考え方です。
ここでは3つの実験が行われてまして、それぞれ40〜50人前後の学生(平均年齢20歳)を集めて、ざっくり以下のような実験をしてます。
- 神経科学の難しい単語とか、心理学の感情理論とかを勉強してもらう
- その際に、「エラー訂正法」「コンセプト類似法」「コンセプト事例法」「コピー法」といった学習法を使ってもらう
- その後で学習内容のテストを行い、どれがもっとも良かったかを調べる
なんだかよくわからない学習法が出てきましたが、ぞれぞれ簡単に説明すると、こんな感じになります。
- エラー訂正法:勉強の際に、あえてもっともらしい間違い(実際には間違っているが、信憑性がなくもない説明)をしてみて、それを自分で修正する。例えば、
「適応とは、ある個体がその後の世代で子孫を残す確率を高める形質のことである」って定義を覚えたいときは、
「適応とは、ある個体がその後の世代で子孫を残す確率を減少(増加)させる形質のことである」みたいに、
一部をわざと間違えてから自分でなおす。 - コンセプト類似法:勉強したい内容を、別のよく似た言葉で言い換えてみる方法。例えば、
「適応とは、ある個体がその後の世代で子孫を残す確率を高める形質のことである」って定義を覚えたいときは、
「適応とは、ある個体が遺伝子を受け継ぐ(次世代に子孫を残す)確率を高める形質のことである。」みたいに、
ポイントを別の言葉に言い換えて記しておく。 - コンセプト事例法:勉強したい内容の具体例を考えて補足してみる方法。例えば、
「適応とは、ある個体がその後の世代で子孫を残す確率を高める形質のことである」って定義を覚えたいときは、
「適応とは、ある個体が次世代に子孫を残す確率を高める形質のことである。ウサギの敏捷性は、捕食者から逃れ、他のウサギと繁殖するために生き残ることを可能にする」みたいに、
概念の具体的な例を付け加えて勉強する。 - コピー法:シンプルに、覚えたいことをそのまま何度か書き出す方法。
てもって、学習のあとで、学んだ内容への親近感、理解度などをチェックしたところ、他の学習方法と比べて意図的に間違いをおかして修正する学習法は、
優れた想起パフォーマンスを生み出し、(中略)学生が新しいニュースを分析するために知識を適用する際の能力を強化する傾向があった。
って感じだったそうです。要するに、エラー訂正法を使った場合は、たんに学んだ内容を覚えていられるだけでなく、その知識を違う場面に応用する力も身につきやすかったんだそうな。んー、おもしろいもんですね。
ちなみに、なんで「わざと間違えて直す」ってやり方がよいのかってのは謎が多いんですが、いまんとこの考え方としては、
- 意図的なエラーによって注意がひきつけられ、より記憶に残りやすくなるから?
- わざと間違えることで、逆に正解の内容に意識が向かいやすくなるから?
- わざと間違えることで「正しい知識」が押さえつけられ、結果的にリバウンド効果を起こすから?
- 意図的なエラーは、正しい知識に関するいろんな概念を活性化して、それがメンタルネットワークを形成するから?
といった仮説が提示されておりました。どれもありそうな話ではありますね。
ってことで、この勉強法を自分で使うには、
- 問題に対して、あえて間違った回答を書き出してみる
- 間違った回答を修正する
って感じになりましょう。ただし、ここで大事なのは、「間違った回答」はたんなるスペルミスとか言い間違いではなく、なるべく有り得そうな理解や概念の誤りにするよう注意してください。例えば、「イチゴは動物だ!」よりは「イチゴは果物だ!」って間違えるほうが、より有り得そうな概念の誤りってことになりますんで。