睡眠を改善したいなら、有酸素運動より筋トレのほうが優れているのでは?という予備研究の話
「運動が睡眠に効く!」ってのは常識ですけど、まだよくわかってなかったのが「筋トレで睡眠は改善するの?」ってポイントです。睡眠を改善するためのエクササイズといえば有酸素運動が推奨されることが多く、筋トレと睡眠の関係についてはほぼ調査がなかったんですよね。
が、近ごろ新たに出てきたデータ(R)では、
- 睡眠を改善したいなら、有酸素運動より筋トレのほうが優れているのでは?
みたいな結論が出てて「うおおおー!」という気分になりました。
この実験は肥満に悩む男女386名を対象にしたもので、運動不足で血圧が高めの人だけを選んだうえで、みんなを4つのグループにわけてます。
- 有酸素運動グループ:ランニングやサイクリングなどを行う。参加者の心拍数はつねにモニタリングされ、中程度から強度の運動に必要な心拍数の範囲に継続的に収まるようにした。
- 筋トレグループ:1回のセッションで主要な筋肉を鍛えるために、12種類の筋トレを実施。筋トレの負荷は最大筋力の 50~80%で,8~16 回を 3 セット行った。
- 複合運動グループ:中程度から強度の有酸素運動を30分間行った後、9台のマシンを使って8~16回の筋トレを2セット行った。
- なにもしないグループ:運動はしない。
トレーニングの期間は12ヵ月間で、1回60分の運動を週3回ずつ実施。複合運動グループは30分の有酸素運動と30分の筋トレを行ったそうな。
そのうえで、実験のスタート時と12カ月後に、睡眠の質を測定するアンケートをいろいろとやってもらい、さらに各自の睡眠時間、睡眠効率(実際に眠っている時間をベッドにいる時間の合計で割ったもの)、睡眠潜時(ベッドに入ってから眠りにつくまでの時間)、睡眠障害(暑すぎたり寒すぎたり、いびきや咳、トイレ、痛みなどで睡眠が妨げられる頻度)も測定したところ、結果はこんな感じになりました。
- 研究参加者の3分の1以上(35%)が、研究開始時に睡眠の質が悪かった。
- 研究開始時に7時間以上の睡眠をとっていなかった42%の参加者のうち、筋トレグループは12ヶ月で平均40分睡眠時間が増加したのに対し、有酸素運動グループでは約23分、複合運動グループでは約17分、対照グループでは約15分の増加だった。
- 睡眠効率は、筋トレグループと複合運動グループで上昇したが、有酸素運動グループおよび運動なしグループでは上昇しなかった。
- 睡眠潜時は、筋トレグループのみ3分とわずかに減少し、他の参加者グループでは顕著な変化は見られなかった。
- 睡眠の質と睡眠障害は、運動をしなかったグループも含め、すべてのグループで多少改善された。
というわけで、ご覧のとおり筋トレグループの成績がダントツに睡眠が改善されております。研究チームいわく、
有酸素運動と筋トレの両方が健康にとって重要だが、今回の結果は、夜間の睡眠をより良くすることに関しては、筋トレの方が優れている可能性を示唆している。
筋トレは、睡眠時間と睡眠効率を著しく改善した。これは、人がどの程度眠りに落ち、一晩中眠り続けることができるかを反映する、睡眠の質の重要な指標だ。
もしあなたの睡眠が過去2年間のあいだに悪くなったのなら、睡眠を改善するために、通常の運動習慣に2回以上の筋トレトレーニングを取り入れることを検討してみるとよいだろう。
とのこと。こりゃなかなかおもしろいすね。
もちろん、この実験は被験者が肥満の人だけに限ってるので、標準体型の人でも同じレベルの成果が出るのかは不明だし、客観的に睡眠をモニタリングするのではなく、自己申告の睡眠アンケートしか使ってないんで、そこらへんの精度にも心もとないところがあったりはします。そこらへんはまだ追試を待つしかないんですけど、とりあえず筋トレをしといたほうがよい理由がまたひとつ増えた感じではありますね。
ちなみに、「俺も睡眠改善のために筋トレするぞ!」と決心した方のために、本研究で採用された筋トレメニューを以下に並べておきます。
- レッグプレス
- チェストプレス
- プルダウン
- レッグカール
- レッグ・エクステンション
- バイセップカール
- トライセップ・プッシュダウン
- ショルダープレス
- アブドミナル・クランチ
- ロウバック・エクステンション
- トルソ・ローテーション
- ヒップ・アブダクション
全部で12種目でして、これらを1時間のセッションにすべて収めるのは難しいので、おそらく週3のなかに「月曜は足の筋トレで、水曜は胸と腕の筋トレ」みたいに散らしたんだと思われます。お試しあれー。