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アイデンティティを変えて人生を変えるための、7つのチェックリスト


 

人間の性格は半分以上が遺伝で決まるけど、でもある程度まで変わるよねー」ってのが、最近の心理学における結論なわけです。性格の50%ぐらいは遺伝で左右されちゃうものの、それ以外の要素もわりと大事なんで、あとからでもどうにかなる側面もあるんだってことですな。

 

 

で、新しいレビュー(R)では、「人間のアイデンティティはどんなときに変わるの?」って問題について、過去の研究をレビューしつつ、その知見をまとめてくれております。

 

 

アイデンティティってのは「自分のことをどんな人間だと思っているか?」ってポイントで、「私は社交的だ」とか「私は人見知りだ」みたいに、誰もが自分のなかに持っている自己像を意味しております。

 

 

性格と同じくアイデンティティも変わりにくい性質があるものの、人生ではアイデンティティを修正しなければならない場面もよくあるものです。例えば、「新しい会社に入った」とか「大変な病気にかかった」とか「大事な人がいなくなった」のように、人生に大きな変化が起きたあとは、新たな環境に合わせて自己像を変えていかないと、環境とイメージのズレが起きちゃいますからね。子供の世話をするために会社で働く時間を減らすことを決めた男性が、従業員としての自己像を減らし、父親や介護者としてのアイデンティティをより強化しなければならないような場面ですな。

 

 

では、具体的に、私たちはどんな時にアイデンティティが変わるのかってことで、研究チームは、認知行動療法による治療、相互扶助グループ(例:禁煙)、高齢者向けの運動プログラムなどをふくむ22の調査を調べ、「アイデンティティの変化を起こす7つのメカニズム」をリストアップしております。

 

 

1. 自己認識の拡大:「タバコで貯金が貯まらない!」とか「酒で生産性が落ちてる!」みたいに、自分にとっての問題行動とその結果を認識すること。自己の問題を認識することは、慢性疾患を管理したりする場合にも必要で、まずは自分の健康や行動に関する問題を無視したり否定したりするのではなく、ただ「こういう問題があるんだなー」と自分で認めることがアイデンティティ変化の最初のステップとなる。

 

2. 社会的ネットワーク:ほとんどの研究では、「社会的なつながり」や「コミュニティへの帰属意識」とアイデンティティの変化に関連性を認めていた。たとえば、精神疾患をもつ人のための相互扶助グループに入るとは、「私は互いに助け合うグループに入っているのだ!」という認識を生むことによって、新しい社会的アイデンティティの形成を促進することができた。

 

3. 行動の変容:新しいスキルを習得したり、新しい健康的な習慣を身につけたりと、新たな行動を続けることにより、自分のなかに望ましいアイデンティティを育てることができる。行動の変化は自己認識を変え、「私はより価値のある、有能な存在だ!」とみなすようになる。

 

4. 自己効力感の向上:より大きなコントロール感、および自分が成長した感覚も、アイデンティティの変化と関連していた。たとえば、コミュニケーションスキルの向上や、過去に自分が達成した業績を思い出す作業などによって、自分自身を新しい見方で見ることができるようになっていた。

 

5. スティグマの軽減:恥やスティグマを減らすことによっても、アイデンティティが変化することが示されている。例えば、「肥満の人間は怠惰だ」とか「1回犯罪に手を染めた人はまたくり返す」みたいに、自分が過去にやったことへの恥やスティグマを軽減することで、多くの人は、自分自身のアイデンティティをより豊かで肯定的に変え、自分の良さ、能力、価値にもっと自信を持つことができるようになる。

 

6. より大きな目的意識:自分と同じような問題に苦しんでいる人を助けたり、困った仲間を助けたり、社会に貢献したり、環境保護に従事したりと、社会的に価値のある活動に従事することによっても、私たちのアイデンティティは良い方向に改善する傾向があった。

 

7. リソースへのアクセス:社会的なサポート、心理的なサポート支援、実用的なリソースへのアクセスが多いほど、アイデンティティの変更は容易になる。たとえば、慢性疾患を持つ人を対象とした研究によると、家族のサポートや、相談できる医師の数が多い人ほど、自分の病気について正しい対処をできる傾向があった。

 

ってことで、以上の要素を満たせば満たすほど、「私はこういう人間なのだ!」って感覚が改善されるわけっすね。このレビューを自分の人生に活かすのであれば、

 

  1. まずは、自分のアイデンティティで変えたいところを認識する(「“自分はいまいち冴えない人間”だってアイデンティティを変えたい!」みたいな)

  2. 上の7つのメカニズムから、採用しやすいものを選ぶ(「ボランティアに入るか……」とか「新しい習慣を育てるか……」みたいな)

  3. 採用したメカニズムを実践する

 

みたいに、アイデンティティ改善チェックリストとして使うのがいいんじゃないでしょうか。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。