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2023年2月に読んでおもしろかった6冊の本と、その他の4冊

 

月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2023年2月版です。今月は20冊ぐらいの本を読みまして、そのなかからおもしろかったもののご紹介です。ここで取り上げる以外の本や映画については、TwitterInstagramのほうでも紹介してますんで、合わせてどうぞー。

  

 

 

 

悪意の科学: 意地悪な行動はなぜ進化し社会を動かしているのか?


世の中には、自分の利益のために他人を傷つける人がいるどころか、自分が損をしてでも他人にダメージを与えようとする人すらいるわけです。ちょっと考えると、「みんなで協力したほうが全体のメリットは大きいはずなのに、なぜ『純粋な悪意』は進化の過程で淘汰されなかったんだろう?」って疑問がわきますが、そのあたりを掘り下げた一冊になります。

 

で、その疑問の答えは、悪意の根底には「支配欲求」「地位の獲得欲」「損失回避欲」がありつつも、それぞれの欲求は実は社会的なメリットもあるんだよー、みたいな感じ。メリットの詳細は本書をお読みいただければと思いますが、本質的には2022年9月のおすすめ本で取り上げた「ステータス・ゲームの心理学」と地続きな話ですね。

 

その点で、本書の知識もまた、悪意に満ちた(というバイアスがかかりがちな)現代のコミュニケーションを生き抜くための一助になるだろうと思った次第です。おすすめ。

 

 

 

こころがふわっと軽くなるACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)

 

このブログでもたびたび紹介している第三世代の心理療法「ACT(アクト)」のポイントを、180ページぐらいでコンパクトにまとめた一冊。といっても内容は高度で、ACTのテクニックを紹介するだけでなく、その根底にある「関係フレーム理論」にかなりの紙面が割かれていて、知識の再確認ができました。関係フレーム理論の話は複雑になりがちなので、これぐらい端的に教えてくれる本は貴重じゃないでしょうか。

 

後半のテクニック紹介も、実践しやすいように書かれていて、実用度も高くてよいなーとか思いました。

 

 

 

リアリティ番組の社会学

 

アメリカから火が着いた「リアリティ番組」(テラスハウスみたいなやつ)を、社会学の側面から研究した本。この手のコンテンツに出てくる人たちは、だいたい極端なパーソナリティの持ち主なんだけど、それでもリアリティ番組が支持されるんはなぜだろう?みたいな話ですね。

 

その答えを私なりに意訳すると、「リアリティ番組は人間関係のシミュレーターとしての機能を持ち、このポイントを過剰に描くがゆえにエンタメとしての強度を持つ」みたいになるでしょうね。この意味では、日本のひな壇バラエティなんかも、同じような消費のされ方をされてそうだよなーとか思いました。アメリカの番組を分析しているので、内容の理解に時間がかかりましたけど、そこを差し引いてもおもしろい本。

 

 

 

リバタリアンが社会実験してみた町の話

 

リバタリアンといえば、「とにかく自由最高!ヒトに迷惑をかけなきゃ、すべては自由だ!」という思想で、私も心情的には賛成したい考え方だったりします。しかし、この思想を実際に貫いて社会がうまく行くかどうかは、また別の話。本書では、アメリカの片田舎にリバタリアンのユートピアを作ろうとした人たちの実話を描いていて、めっちゃ興味深かったです。

 

その顛末は大方の予想通りで、公共サービスはまともに働かず、街の明かりは消え、衛生施設は崩壊し、警察が機能しなくなり、それを気に入った荒くれ者が町に入植し……といった感じで、「そりゃそうなるでしょ!」という展開を迎えるのでした。まぁここで展開される「社会実験」はかなり雑なので、やり方しだいでもうちょいなんとかなった気もしますが、極端な思想ってやっぱうまくいかないよなーってのを痛感しますね。

 

 

 

二木先生

 

周りに溶け込めない鬱屈に悩む高校生と、人に言えない秘密を抱えた教師が出会うことで始まる自意識バトル小説。2人が繰り広げるダークな論破合戦がおもしろく、「チ。―地球の運動について―」と似たような魅力がありますね。近年は、このタイプの論破エンタメが増えた印象がありますが、そのなかでも上位の完成度ですな。

 

エンタメとしての地肩も強くて、どこに向かうかわからない展開が心地よいし、伏線も決まりまくっているしで、純粋に楽しい物語が読みたい方の需要にもバッチリ応えているんじゃないかと。

 

 

 

自閉スペクトラム症の感覚世界

 

自閉スペクトラムな方々は、文字どおり世界を違った感覚で捉えているのだ!という話はよく聞くところ。本書では、その感覚が実際にどのようなものなのかを、当事者研究や当事者が描いたアートなどをもとに、わかりやすく教えてくれる一冊になっております。

 

自閉スペクトラムの視線が細部に向かいがちだとか、つねに現在に意識が固定されがちみたいな話は知識として知ってたものの、感覚体験に特化して説明してくれているので、めっさ理解が深まりました。「自閉スペクトラムの大変さ」に近づける点でナイスなのはもちろん、「ヒトの脳ってのは多様な適応をする器官なんだなぁ」ってがあらためてわかるのがすばらしいですね。

 

 

 

 

その他もろもろ

 

  • ルポ 特殊詐欺:特殊詐欺の末端に関わった人たちの半生を取材した本。たいていはギャンブルか借金で身を崩し、そこから裏社会に入っていくんだけど、たいていが「ウシジマくん」と似たような末路をたどっていて、最後には激しい無常さを感じました。こういう知識は義務教育として教えてもよいのでは。

 

 

  • 偶然の聖地:「世界は思いつきのコードで構成されたバグの塊だ!」ってのが本書の根っこの考え方で、実際のところ、社会の大きなシステムはもちろん、人間の体や思考もつぎはぎだらけのクラッジなんですよね。そんな考え方を、小説の構成もふくめて体現させつつ、ギリギリのところでエンタメに仕上げていて、「すげー」と思いました。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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