今週半ばの小ネタ:亜鉛で頭が良くなる? 亜鉛で寿命が伸びる? トマトで紫外線に強くなる? ビタミンDで腰痛予防?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
亜鉛のサプリで頭が良くなるかも?
亜鉛は大事!ってのは間違いない話で、わたしも「なめる亜鉛」などというサプリを開発しているわけです。
で、新たに出たメタ分析(R)では、「亜鉛のサプリでBDNFが増える!」という結論になっていて、かなり興味をひかれました。
BDNFは、このブログでも紹介してきた物質で、神経細胞の形成と成長に関わるタンパク質の一種。それゆえに、BDNFは正常な認知機能のサポートと維持に役立つと考えられてまして、ざっくり言えば、頭をよくしてくれるわけですね。
でもって、このBDNFを増やすのに欠かせないのが、亜鉛であります。亜鉛ってのは、BDNFを生成する酵素がうまく働くのに欠かせないので、亜鉛のサプリを使うことでBDNFレベルを高められる可能性があるんですよ。
そこで、このメタ分析では、4つのRCTをピックアップし、合計185人のデータを分析。
試験の期間は3試験が84日間、1試験が90日間。亜鉛の1日の摂取量は、3つの試験で30mg、1つの試験で25mgだったそうです。
すると、その結果は、
- 亜鉛のサプリは、血中のBDNF濃度を増加させた!
だったそうで、「おっ!」と思わせる内容になっておりました。あくまで4つの試験で得られた結果ですし、このうち2試験は質が悪いので、この結果をもって「亜鉛で頭をよくしようぜ!」って話にはならんのでご注意あれ。あくまでも、健やかな脳を保つためにも、亜鉛を切らさないようにしようねーってことで。
亜鉛サプリで寿命が伸びるかも?
ということで、もうひとつ亜鉛のデータ(R)です。こちらはアメリカで行われた横断研究で、まず結論から言うと、
- 亜鉛の摂取量が多い人ほど、テロメアが長い!
みたいな感じです。テロメアもこのブログの頻出ワードで、細胞の老化を示すバイオマーカーだと考えられております。
ざっくり言えば、テロメアは染色体を劣化から守る物質で、細胞分裂のたびに短くなる性質があるんですよ。そのため、テロメアの長さは、細胞の老化における重要なものさしになっていて、実際に、テロメアが短い人ほど病気や死亡率が高かったりするんですね。
で、テロメアを伸ばすためには、抗酸化物質などを使うのが定番ですが、亜鉛もそのひとつだと考えられております。亜鉛も強力な抗酸化作用を持つので、亜鉛の摂取量が多ければテロメア短縮の速度も遅くなると考えられるんですよ。
そこで、この研究では、3,793人を対象に調査を実施。みんなの食事を調べて亜鉛の摂取量を推定し、これをテロメアの長さと比べたんだそうな。そのうえで、いろんな交絡因子で調整した結果、
- 亜鉛の摂取量が多いほど、テロメアが長い!
- 亜鉛の摂取量が5mg増加するごとに、テロメア長は0.64%増加する!
って感じだったらしい。もちろん、こちらも解釈は難しいところで、あくまで横断研究につき精度はそんな高くないし、因果関係を示唆するものでもないあたりはご注意ください。ただし、食事からちゃんと亜鉛と摂取しないと、テロメアが短くなる可能性だけは念頭に置いておきたいですねー。
トマトで紫外線のダメージから身を守れるかも!
「トマトが紫外線から身を守る!(かも)」と思わせるメタ分析(R)が出ておりました。トマトにふくまれるリコピンサプリの摂取が、紫外線から皮膚を守ってくれるというんですな。
というのも、リコピン(トマトに含まれるカロテノイド)は強い抗酸化作用と抗炎症作用を持っているので、紫外線から皮膚を保護する可能性は昔から指摘されてたんですよ。そこで研究チームは、21の試験から合計968人の健康な男女のデータを分析し、リコピンと紫外線による肌トラブルとの関連を調べたんだそうな。
実験で使われたリコピンの摂取源は、トマトペースト、トマト抽出物、リコピンサプリなど。リコピンの1日当たりの投与量は2.4~28.8ミリグラムで、実験の期間は4週間から24週間だったとのこと。
でもって、以下に結果でーす。
- リコピンを飲んだグループは……
- 皮膚の赤みが減った(証拠の確実性は低〜中)
- 皮膚の色素沈着も改善した(証拠の確実性は低)
- 皮膚の厚さも改善した(証拠の確実性は中)
ってことで、やはりリコピンには可能性があるんだろうなーって印象であります。まぁ紫外線対策には日焼け止めがベストなのは変わらないので、「リコピンを飲んでおけばOKだ!」とか思わないようにご注意いただきたいですが、私としては、やはりリコピンの抗酸化パワーは注目すべきだなーとか思っております。
ビタミンDで腰痛を予防できる?
「ビタミンDで腰痛が改善!」というおもしろいデータ(R)も出ておりました。
ビタミンDと腰痛にはなんの関係もなさそうですけど、過去の観察研究によると、血中のビタミンDが少ない人ほど慢性痛に悩みやすいって結果が出ているんですよ。ビタミンDは人体のあらゆる機能に関係してるんので、痛みの調整にも関わってる可能性が高いんですよね。
ってことで、この研究では、417,580人を対象としたゲノム研究を調べ、血中のビタミンD濃度に関わる遺伝子をチェック。これを248,528人(腰痛持ち21,140人と、腰痛なし227,388人)の別のデータセットを調べ、ビタミンD濃度と腰痛の出現を評価したんだそうな。いわゆるメンデルランダム化っていう研究法でして、観察研究のなかではわりと良い結論を出せる手法であります。
で、結果です。
- 血中のビタミンD濃度が高い人は、腰痛のオッズを11%低下させるかも
- より複数の解析結果を合わせると、血中ビタミンD濃度が高い人は、腰痛のオッズを3%低下させると思われる
ということで、どうやらビタミンDが足りないと、腰痛の発症率も上がりそうな空気が漂ってるわけです。
まぁこの研究には疑問もあって、ビタミンD濃度と腰痛のメカニズムがまだわかっていないので、この研究がメンデルランダム化として適正なのか?って感じではあるんですよねぇ。その点に疑問が残るところではありますが、まぁ腰痛にお悩みの方であれば、ビタミンDに気を配っておくのもよいのではないかと。