今週の小ネタ:ベストな禁煙法とは?アートのメリットを得るには?ゲーマーは本当に不健康か?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
ベストな禁煙法とは?のメタ分析
毎度おなじみコクラン共同計画さんから、「ベストな禁煙法をガッツリ調べたぞ!」ってメタ分析(R)が出ておりました。
この研究は、15万人以上が参加した300以上の試験で使用された禁煙サポート法の結果を比べたもの。「成分ネットワークメタ解析」(CNMA)と呼ばれる統計学的手法を使って、どの禁煙法が本当に効果があるのかについて、めっちゃ精度が高い結論を出してくれてます。うーん、ありがたい。
では、結論を見てみましょうー。
- 「電子タバコ」は100人中約14人の喫煙者の長期禁煙に役立つことがわかった。
- 禁煙補助薬のバレニクリンとシチシンも、同じぐらいの効果があった。
- ニコチンパッチ、ガム、トローチなどを使ったニコチン置換療法を併用することは、電子タバコ、バレニクリン、シチシンとほぼ同等の効果があるかもしれない。ただし、パッチやガムのような単一のニコチン置換療法を使っても効果は低く、2種類のニコチン置換療法を併用したほうがよい。その場合は、100人中約12人が禁煙に成功すると推定される。
ってことで、昔から使われる定番の手法には、やはり効果があるんだなーって感じですね(それでも成功する人の数は少ないので、あらためて禁煙って難しいんだなーと思いますが)。
ただし、現時点では、バレニクリンやシチシンは日本では使えないので、せんじつめれば「ニコチン電子タバコに、他のニコチン置換療法を組みあわせるしかない!」って結論になりますね。
ちなみに、言わずもがなですが、この研究では「認知行動療法」のような心理系テクニックの効果は調べてないんで、そこはご注意ください。個人的には、ニコチン置換療法に心理療法も組みあわせちゃどうかと思いますが。
アートのメリットを得たいなら「アイデンティティ」を明確にしようぜ
「アートにはいろんなメリットがあるよねー」って話をよくしてまして、日々のQOLを上げるためにも「芸術活動待ったなし!」といった状況なわけですが、新しい研究(R)では、「人間はどんなアートに反応しやすいの?」ってのを調べてくれておりました。
当然ながら、アートにもさまざまな形態がありまして、自然の美しさを描くものがあれば、発想の斬新さを押し出すものもあるわけです。その中から、自分にピンときやすい作品を選んだ方が、そのメリットを享受しやすいでしょうから、これはナイスな研究テーマじゃないでしょうか。
どんな実験だったかをざっくりまとめると、こんな感じになります。
- 33人の参加者に148枚の絵画を見てもらう。これらの絵画は、アメリカ大陸、ヨーロッパ、アジアのさまざまな時代、スタイル、ジャンルを反映するように選ばれ、マイナーな作品ばかりがセレクトされている。
- それぞれの絵画について、「感動したレベル」と「自己関連性レベル」を申告してもらう。「自己関連性」とは、参加者にとって、画像の中の何かが、自分の経験、自分のアイデンティティにどれぐらい関連しているかを意味する。
ってことで、研究チームは、「そのアートが、自分という人間を定義する物事や出来事に関係するほど感動するのではないか?」と考えたわけですね。なにごとも自分事のほうがモチベーションは上がりますから、これは当然の仮説でしょう。
その結果、なにがわかったかと言いますと、
- それぞれの絵画の評価は、人によってめっちゃバラバラだった。
- ただし、自己関連性と「感動したレベル」には大きな相関があり、自己関連性は「感動したレベル」のばらつきの約28%を予測した。
みたいな感じです。この後に行われた追試でも結論はほぼ同じで、208人の参加者で似た実験をしても、やはりみんな自己のアイデンティティに関するものを「良い」と判断したそうな。つまり、あるアートを美しいと感じたり、感動したりするかどうかは、作品そのもの特徴よりも、その主題がアイデンティティや世界観とどれだけ共鳴しているかに大きく依存しているってことですな。
ってことで、この実験を見て個人的に思うのは、
-
自分のアイデンティティを明確にしておくと、アートはいよいよ楽しくなりそうだなー。
- アートに抱く感動は個人のアイデンティティによるところが大きいんだから、「この作品が分からない自分は美的センスが……」とか悩んでもしょうがないヨナー。
といったところです。そう考えると、自分がエドワード・ホッパーとかが好きなのも、なんか納得だなーって感じですが。
ゲーマーって意外と健康的じゃない?
「ゲーマー」と言われると、なんとなく不健康な印象が強いもんですけども、最近の研究(R)では、
- ゲーマーは健康的だ!
って結論になってておもしろかったです。この研究は、18歳から60歳までのポルトガル人ゲーマー270人を対象にしたもので、みんなのゲーム習慣、身体活動、睡眠パターン、食生活などをチェックし、これをメンタルヘルスと比較したんだそうな。
で、結果はこんな感じでーす。
- ほとんどの参加者は、ゲームを1日あたり0〜4時間プレイしていると回答した。この結果は、過去のゲーマー研究と一致しており、研究チームは「ゲーマーがゲームに過剰な時間を費やしているという考えは間違いだ」と指摘している。
- 多くの参加者は、ゲームの習慣があるにもかかわらずちゃんと運動をしていた。運動の種類には、チームスポーツ、筋トレ、個人スポーツ、格闘技などがあった。正し、先行研究には、ゲーマーは運動量が少ないとの報告もある。
- また、ゲーム中にエナジードリンクやスナック菓子を食べていると報告した人はほとんどいなかった。
-
さらに、IGDのカットオフポイント以上のスコアを示した参加者はごく一部(1.28%)で、大半はゲーム中毒とは言えなかった。
ということで、一部に先行研究との食い違いがありつつも、全体的には従来のゲーマーよりも健康じゃないのかって結論であります(ポルトガルのゲーマーの話ですが、日本でも大差ないんじゃないかと予想してますが)。
研究チームいわく、
私たちの研究からわかるのは、とても単純なことだ。つまり、熱心なゲーマーも、健康的でバランスの取れたライフスタイルを送っている。
とのこと。不健康なイメージとは異なり、ゲーマーは意外と良好な生活を送っているんだ、と。もっとも、一部にはゲーマーにとってよくない結果も出てまして、
- 参加者の約半数は、心理的な幸福感が低かった。
- 参加者の睡眠の質は全体的に低かった。研究チームは「ゲームの発光か、カフェインが原因かも?」と指摘している(参加者の60.4%がコーヒー好きだったんで)。
といったあたりは気がかりではあります。まぁこのデータを見る限りは、ゲーマーはとりあえず睡眠不足に気をつけようぜ!って感じですね。