「映画でメンタルを改善する方法を教えるぞ!」というポジティブ心理学からのご提案です。
「映画はメンタルのセラピーに最適だぜ!」ってレビュー(R)がおもしろ買ったです。著者はライアン・M・ニーミック先生で、VIAの強み診断の会社に所属する心理学者さんですね。日本だと「強みの育て方」などの邦訳が出てますね。
今回のレビューは、ニエミエツ先生が「映画のパワーを使うと心理療法がはかどるぜ!」って説を検証したもので、
- 映画は私たちの長所を伸ばす力がある
- 映画はより良い人間になる手助けをしてくれる
って考え方を提唱しておられます。まぁ映画を心理療法の補助として使う「シネマセラピー」ってのは昔からあるので、決して新しい考え方ではないんですけど、あらためて知見をまとめてくれているのがありがたいですね。
で、本論では、「人間力を高めるために、セラピストは映画をどのように使ったらいいのか?」ってとこを調べております。創造性、好奇心、優しさ、希望、慎重さ、勇敢さ、粘り強さなど、VIA強み診断に出てくるような資質を、いかにして映画の力で伸ばすのかって問題意識ですね。
そのために、映画セラピーでどんなことをするかと言いますと、
- セラピストがクライアントの取り組んでいる人生の問題を扱った映画を勧める。
- セラピストとクライエントは、時には一緒に映画を観て、その映画がクライエントの人生にどのように当てはまるかを話し合う。
- クライアントが持つ「性格の強み」を描写した映画、またはクライアントが伸ばしたい「性格の強み」を描いた映画を選ぶ。
って感じらしい。自分の強みに関わる映画を見てみるってやり方は、私たちが普通に映画を選ぶ際の指針にもなりそうっすね。
では、なぜ映画でキャラクターの強みを見ることで成長するのかと言いますと、
- 一般に、私たちは、人間が持つ長所を目にしたときに、「高揚体験」と呼ばれる独自の感覚を得ることが分かっている。
- この体験は、脳の共感回路に働きかけるため、慈善寄付やボランティア活動など、他者のためになる行動が促進される。
って感じだそうです。映画ってのはキャラへの没入度が高いので、自分の強みに適した作品を見ると、「自分を向上させよう、モデルを真似しよう!」ってモチベーションがわきやすいんだよーってのが、ニーミック先生の考え方であります。これは感覚的にもわかりやすいっすね。
ちなみに、ニーミック先生が行ったセラピーの例で言うと、
- 『明日を継ぐために』で、登場人物たちが「赦し」の強みを発揮するのを見たクライアントが、疎遠になっていた息子と再会した。
- 『アメリ』を観たクライアントが、自分の持つ「親切さ」の強みを思い出し、その後で親切な行動が増えた。
- 『バットマン ビギンズ』を観たクライアントが、社交不安を乗り越えて大きなイベントに参加した(「勇敢さ」と「社会知性」の強みに働きかけたらしい)。
- 『インセプション』を観たクライアントが、その後で仕事の生産性が上がった(「忍耐」と「創造性」の強みに働きかけたらしい)。
みたいな事例があがっておりました。「インセプション」ってそんな映画だったっけ?とか思いましたけど、作品からどの強みを引き出せるかは、見る者の目に宿るってことなんでしょうな。
ってことで、このレビューを見てますと、私たちが映画をメンタルの改善ツールとして使うには、
- まず、VIAテストで自分の性格的な「強み」をチェックし、上位に表示された自分のキャラクターを把握する。
- 映画のあらすじをざっと読んで、自分の「強み」が強調されていそうな作品、または自分が伸ばしたい「強み」が描かれていそうな作品を選ぶ(たとえば、「好奇心」が強みなら「マルセル 靴をはいた小さな貝」を観てみるとか、「創造性」が強みなら「風をつかまえた少年」とか)。
- 映画を観る前に、最近その「強み」を使ったのはいつだったかを考えて書いておく。これによって、映画を観たときの高揚効果が高まることがいくつかの研究で示されている。
- 映画を観たら、特定の登場人物、台詞や引用、筋の展開、やりとりや場面、風景、照明、音楽などの映画的要素など、映画から最もインスピレーションを受けたことを書き出す。
その上で、登場人物の長所、自分が見習いたい行動や思考について考え、自分の暮らしで活かす方法を考える。ちなみに、実際のシネマセラピーでは、セラピストとクライアントが映画についてガンガンに話し合うらしいので、そこらへんができる友人がいると、さらにセラピーがはかどりそうであります。
みたいな手順をふんでみると良いかも。個人的には、ここまで狙って映画を選んだことはないものの、「自分の強み」に沿って映画を選ぶってのは、シンプルに『自分に刺さりやすい作品を選ぶ方法』としても使えそうな気がしますな。