飽和脂肪を減らせば心臓病の予防になる!が徹底的に打ちのめされていた件
「飽和脂肪を減らしたら心臓病にならない?」って問題に関する、かなり質が高いメタ分析(R)が上がっておりました。肉やバターに入ってる飽和脂肪酸を減らしたら、本当に心疾患にかかるリスクは減るのか?って問題ですね。飽和脂肪といえば、昔から「心臓病の原因!」とか「肉を食べると血管がカチカチに!」とか言われて、かなり悪い扱いをされてきたんで、これは気になるところなわけです。
で、新しく出たデータは毎度おなじみコクランによるものです。詳しいことは省きますが、一般的にコクランの出版物は学術研究のゴールドスタンダードとみなされてまして、ここで出た結論はかなり精度が高いケースが多め。信頼のブランドのひとつと申せましょう。
ちなみに、コクランは2001年から不定期に飽和脂肪に関するレビューを続けていて、今回のは4回目の改訂版になります。最新バージョンでは、
- 24ヶ月以上の期間かけて実施された長期間のRCTだけを厳選
- 約59,000人が参加した15の研究をまとめて、「飽和脂肪を減らしたら心臓病や脳卒中の危険性は本当に減るの?」をチェックしている
って感じの内容になってて、かなりいい感じですね。
その結果、大きく8つの知見が得られてまして、ざっと見るとこんな感じです。
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飽和脂肪を減らしても総死亡率に有意な効果はなかった。
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飽和脂肪を減らしても心疾患による死亡率に有意な効果はなかった。
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飽和脂肪を減らしても冠状動脈性心疾患による死亡率に有意な効果はなかった。
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飽和脂肪を減らしても致死的な心臓発作への有意な効果はなかった。
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飽和脂肪を減らしても非致死性心筋梗塞への有意な効果はなかった。
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飽和脂肪を減らしても急性冠動脈心疾患(CHD)イベントへの有意な効果はなかった。
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飽和脂肪を減らしても脳卒中への有意な効果はなかった。
- 飽和脂肪を減らすと心疾患系イベントのリスクが21%減る。………が、実際に飽和脂肪を減少させたRCTだけで感度解析を行ったら、有意ではなくなった(つまり、「飽和脂肪を減らすぞ!」って目標は立てたが、実際には飽和脂肪を減らさなかったデータを取り除いた)
いやー、最初から最後まで「ないない尽くし」っすね。心疾患系イベントにだけ有意な差が出てるのを見た時は「おっ?」と思ったものの、あらためて分析したら完全に違いが消えちゃって「あー、やっぱり」みたいな(笑
まぁここまで徹底的に否定されちゃうと、もはや「飽和脂肪は無罪!」と言っちゃっていいんでしょうね(もちろん飽和脂肪をドカドカ食べよう!って意味じゃないので、そこはご注意いただきたいですが)。飽和脂肪を減らしたところで心臓病の予防にはメリットがなさそうであります。
また、この問題についてはかなり決着がつきつつあるので、これから新たに同じぐらい大規模で長期的なRCTが行われることもあんまないだろうなーとか思う次第です。なんせ2年以上もの実験をするのは費用がかかりすぎるし、すでに精度が高い答えが出てるのにあらためて調査する機関もなさそうなんで。
そんなわけで、飽和脂肪については必要以上に恐れず、かといって必要以上に持ち上げることもせず、普通に食べて行けばいいよ!ってことでひとつ。