メンタルの改善に役立ちそうなデータいろいろ:新型コロナの睡眠問題、うつ病にクルクミン、ラベンダーオイルと不安など
このブログではいろんな話を紹介してるわけですが、なかには「これは以前に取り上げたのと被ってるなー」とか思って掲載しないケースも多々あるわけです。が、そのままにしておくのももったいないので、今回から「過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたケース」もまとめて取り上げてみることにしました。
今回は「メンタルの改善に役立ちそうなデータ」を5つほどまとめてお送りします。
新型コロナによる睡眠の問題には「漸進的筋弛緩法」だ!
「漸進的筋弛緩法」といえば、瞑想に並ぶリラックス法の大定番。その効果については一定の評価がすでにあるわけですが、新しいデータ(R)は「新型コロナの患者さんが悩む睡眠の質の低下にも効く!」って話になっておりました。一部の睡眠薬は呼吸器系の働きをジャマするケースがあるんで、漸進的筋弛緩法が効くならありがたい話ですわね。
ってことで、このRCTでは、新型コロナに苦しむ患者さん51人に協力を依頼して、
- 1日30分間の漸進的筋弛緩法を5日間行う
- 何もしない
って2つのパターンへ無作為に割り付けたところ、漸進的筋弛緩法を行ったグループは新型コロナにともなう不安が軽くなり、睡眠の質も向上したそうな。漸進的筋弛緩法がリラックスに効くのは間違い無いので、不安のせいで睡眠がうまく取れないような方は覚えておくと良さげっすねー。
糖尿病のうつ病にクルクミンが効く?
糖尿病の患者さんはしばしばうつ病や不安を覚えるもんですが、この問題にクルクミンが効くのでは?って話(R)が出ておりました。昔から「クルクミンがメンタルに効くかも?」って話はありましたが、定期的に関連データが出てきますね。
これは80人の糖尿病患者さんを対象にした試験で、そのうち半分にナノクルクミン80mg(クルクミンのパワーアップ版)を、残り半分にプラセボサプリを飲んでもらったそうな。試験の長さは8週間で、各患者のうつ病、不安、ストレスレベルを測定したところ、
- ナノクルクミンを飲んでいた患者は、うつ病と不安のスコアが全体的に減少していた!(それぞれ1.4ポイントと1.8ポイント)
って感じだったそうな。そこまで劇的な変化とは言えないものの、8週間の変化としてはそんなに悪くないかなーって印象ですね。
もちろん、この試験のみで「糖尿病のメンタル悪化にはクルクミンだ!」とまでは言えないものの、
- 慢性疾患を持つ人がしばしばうつ病に悩みがちなのは、やはり慢性炎症のせいが大きいのかもなー
- やっぱクルクミンの抗炎症効果は高いんだろうなー
と思わせるには十分な内容だったかと思った次第です。
ラベンダーオイルを嗅ぐだけでも不安が減る?
ラベンダーオイルが不安に効く!みたいな話については以前もメタ分析を取り上げましたが、全体的にまだ良い実験がないのが残念なところ。その点で新しいテスト(R)は、そこそこ質が高い感じでよかったです。
これはトルコの病院に入院している80人の女性を対象にしたRCTで、乳がんの手術を行う前に、全体の半分にラベンダーオイルのアロマを吸入してもらったところ、
- ラベンダーオイルのアロマを吸入した参加者は、対照グループより不安レベルが下がった!
って感じだったそうです。どうやら、ラベンダーオイルは脳の感情コントロールエリアに影響を与えているようで、やはり過度の不安にお悩みの方は試す価値があるかなー、と。
ラベンダーのお茶でも不安に効く?
でもってもうひとつの研究(R)もラベンダーに関するもので、こちらを結論から言うと、
- 高齢者のうつ病と不安にラベンダーのお茶が効くかも!
みたいになります。具体的には2週間のRCTになっていて、軽度から中等度のうつ病を持つ60名の高齢者を2つのグループに分けたそうな。
- 毎朝と夕方にラベンダー茶を飲む(飲む前にお茶の香りを吸い込むように指示)
- 何もしない(プラセボ茶を飲んだわけではない)
その結果、何もしなかったグループよりも、ラベンダー茶を飲んだグループは優位に不安と抑うつのスコアが改善したとのこと。またもラベンダーに有利な報告が出ましたね。
といっても、その差はかなり小さいですし、なによりもコントロール群にプラセボ茶が提供されたわけでも無いので、この効果は単に「なんか良い匂いがするお茶を飲んだ」ことによるプラセボ効果でしか無い可能性もあるのでご注意ください。まぁラベンダー茶なら副作用もないでしょうから、プラセボだったしても飲んでみる価値はあるように思いますが。
ブルーライトが双極性障害のメンタルに効くぞ、というメタ分析
でもって最後は、ブライトライト・セラピーが双極性障害に悩む方々のメンタルに効く!という内容のメタ分析(R)になります。双極性障害は、躁と抑うつを交互に繰り返す状態で、睡眠障害は中心的な症状のひとつ。これをブルーライトセラピーが改善するかもしれないらしい。
この調査は先行研究から12件をまとめたもので、ブルーセラピーによるうつ病レベルの変化、特定の時間と時間の有効性、特定の色と色温度の有効性という3つのポイントを分析してくれてます。その結果はと言いますと、
- ブルーライトセラピーは、双極性障害の患者さんにおいて、特に色温度が4500k(昼光に近い青白色の光)以上の場合に、うつ病を緩和する
- 大うつ病エピソードを持つ患者さんが朝と夕方の両方にブルーライトセラピーを受けると、もっとも効果が高い
みたいになってます。簡単なメカニズムをまとめると、
- 朝にブルーライトを浴びることで、睡眠ホルモン(メラトニン)の合成を阻害
- そのおかげで日中の覚醒状態をコントロールできる
- 夜の睡眠が改善し、メンタルが良くなる!
といった感じですね(夕方にブルーライトを使う場合は、あえてその日の睡眠の質を下げることで、翌日の夜の睡眠意欲を高めるのを狙う)。
もともとブルーライトセラピーがいろんなタイプの不眠に効くことはわかってたので、この結果にも納得しました。ブルーライトでメラトニンが阻害されるのは誰でも同じなので、もし睡眠にお悩みの方がいれば、朝にブルーライトを浴びてみるのもありでしょうね。