ミュージシャンのパブリック・ペルソナがリスナーの好みを決める!みたいな研究の話
性格が音楽の好みを左右する!みたいな話はいっぱいありまして、ジャズ好きは好奇心が旺盛では?とか外向性が高い人はロック好きでは?とかいろんな説が出てるわけです。まぁちょっと考えただけでも、パーソナリティが曲の好みに反映されるってのは直感的にも納得しやすいんじゃないかと。
ということで新しいデータ(R)では、さらに一歩進んで「ミュージシャンのパブリック・ペルソナがリスナーの好みに影響を与えてるんじゃない?」みたいな話になっておりました。「パブリック・ペルソナ」ってのはそれぞれのミュージシャンが公に与える印象のことで、例えばレディ・ガガだったらアーティスティックとか、カート・コバーンだったら繊細とか、そんな感じっすね。
これはバル・イラン大学の研究で、合計86,570人の参加者を集めて、50人の有名なミュージシャンやバンドの歌詞とペルソナを評価するように指示したそうな。ここで評価対象になったミュージシャンの例をざっと並べると、
- ビヨンセ
- ボブ・ディラン
- ブラック・サバス
- エルトン・ジョン
- オジー・オズボーン
- ポール・マッカートニー
- テイラー・スウィフト
- ホイットニー・ヒューストン
- コールドプレイ
- デイブ・マシューズ・バンド
- マルーン5
- ローリング・ストーンズ
みたいになってます。そのうえで、
- ファンから評価されたアーティストのペルソナ(要するに、そのアーティストが周囲からどう思われてるか)
- 歌詞を機械学習にかけてアーティストの性格を推測(あくまでアーティストの本当の性格ではないので注意)
って2つの側面から各アーティストのペルソナを分析し、これをさらにファンたちの性格と照らし合わせたらしい。なかなかありそうでなかったような研究でおもしろいっすね。
で、その結論をざっくり申し上げますと、
- みんな「自分の性格にそっくりだ!」と思えるようなミュージシャンを好きになっていた
だったそうです。この現象をチームは「音楽の自己一致効果」と呼んでまして、つまり自分のことを「エキセントリックだ!」と思ってればオジー・オズボーンを好きになり、自分のことを「真面目」と思ってればコールドプレイを好きになる、みたいなことっすね。人間は自分に似た人を好きになる!とはよく言われることですが、これはミュージシャンでも同じなんだ、と。
この結果について研究チームいわく、
今回のデータは、メンタルヘルスにも応用できるだろう。ストレスや不確実性が高まった現代のような時代に置いては、リスナーは自分と似たような性格のアーティストの音楽を求めることで、自己が理解されていると感じ、他者とのつながりを感じることができる。
この点で音楽は人々に誇りと居場所を与えることができるし、実際のところ、音楽はグループがコミュニケーションを取り、ともに活動すべきどうかを決めるための方法としても進化してきた。
社会的な分断が増えている今日の世界では、私たちの研究は、音楽が人々を一つにまとめるための共通項になり得ることを示している。
とのこと。音楽ってのは、ミュージシャンのペルソナを通していろんな人たちを結びつける作用があるし、孤独な人たちに集団への所属感を与える働きも大きいよねーみたいな話ですね。
また、初対面の人に好きなミュージシャンなどを尋ねてみると、その人のセルフイメージを理解しやすくなっていいかもしれませんな。コミュニケーションを深める一助にも使えそうな研究であります。