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結局、AIってどれぐらい生産性を上げてくれるんですか?

 


 

これだけAIが話題になれば、当然AIが社会に与えるインパクトの研究も進むわけです。特にここ数カ月でいくつかの知見がたまってきたんで、個人的におもしろかったものをまとめておきます。

 

 

  • マサチューセッツ工科大学などの試験(R)では、大卒のマーケッター、ライター、コンサル、データアナリスト、マネジャーなど453人を対象に研究を実施。みんなに、ビジネスレポートやプレスリリース、ビジネスメールの作成など、トータルで20~30分ほどかかる作業をしてもらったが、その際に、半分の参加者にだけChatGPTを使うように伝えた。

    すると、ChatGPTを使った人は生産性がめっちゃ上がり、AIを使わなかったグループよりも作業時間が40%減り、文章のクオリティが18%向上した。ちなみに、このような生産性の向上は、ChatGPTが吐き出すアウトプットをそのまま使うか、ちょっとだけ修正をした人の方が 高くなった(つまり、AIの出力を大幅に手直しするほど、逆に作業の質は低下した)。

 

 

  • プリンストン大学などの試験(R)では、フィリピンのカスタマーサービス企業に勤める約5,000人を対象に調査を実施。AIを使うことで仕事の効率がどれぐらい上がるかと、1時間あたりの問題解決数を1年間にわたって追いかけた。

    その結果、AIを使ったカスタマーサポートの生産性は平均で13.8%向上した。このメリットは初心者や低スキルな労働者ほど大きく、経験が2カ月しかない人が、6カ月の人と同じレベルのパフォーマンスを発揮するのに役だったとのこと。また、AIを使うことで、顧客からの印象も良くなり、クレームの数が減り、従業員の定着率が上がるなどの効果も認められた。

 

 

  • Open AIがペンシルベニア大学と組んだ調査(R)では、アメリカの職業データベースを使い、1,016の職業をピックアップした上で、AIによって労働時間を短縮できるかどうかを試算。

    その結果、生成AIが広まることで、アメリカの労働者の約8割は全ての作業の少なくとも10%が影響を受け、残り2割は全作業の50%が影響を受けることがわかった。

    その影響はすべての労働者に関係するものの、とりわけ高学歴&高収入の職業ほど影響を受けやすい。具体的には、会計士、税理士、ライター、作家、記者、ウェブデザイナーなどがある。

 

 

  • プリンストン大学の研究(R)では、約800種類の仕事を行うための必要な能力を52種類に分割し(理解力とか表現力とか)、それらがAIどう影響するのかを調べたんだそうな。

    その結果、テレマーケティング、教師、法律系、金融系などの分野は、特に大きな影響を受けやすいと結論。こちらでも、賃金が高い仕事ほど、AIから受ける影響が大きいことが示されている。

 

 

ということで、話をまとめると、

 

  • 基本的に、AIは作業のパフォーマンスを大きく改善してくれる

 

  • その影響は、いま高賃金な職種の人ほど大きいっぽい。

 

って感じになりますね。こうして見ると、やっぱAIは相当ヤバいなーって感じがするわけです。

 

ちなみに、一番最初のMIT論文では、「AIの出力をヘタに修正しないほうが成績いい」 との結果が出てますが、これは「 みんな黙ってAIの言う通りにしたら良いのだ!」って 話ではないのでご注意ください。

 

この データが示唆しているのは、

 

  • AIの得意な分野を理解して、その範囲を超えないタスクを、ちゃんと与えましょうね。

 

といったことなんですよ。実際のところ、この研究でも2種類のタスクをAIに与えていて、 それによって生産性が大きく異なることが観察されているんですよ。具体的には、 以下のような感じになります。

 

  • AIが得意なタスク:新製品を会議で発表する際に必要な、ピッチから発売までのステップのリストを作成したり、マーケティングスローガンを考えたり、靴を開発するためのエンドツーエンドのプロセスを作ったり、プロジェクトから学んだ教訓を記述した2,500ワードの記事を書いたりといったアクションを行うように、 AIに指示する。

 

  • AIが苦手なタスク: 実験の参加者に、3つのブランドを持つ企業に勤めていると想像してもらったうえで、それぞれのブランドを改善するためにCEOが取りうる革新的な行動をAIに提案させる。

 

研究チームは、これらのタスクの違いに対して、「フロンティアの外側か内側か」 といった 表現をしています。 簡単に言えば、新しいことを考える作業が含まれるかどうかの違いってことでしょうね。

 

でもって、この研究では、参加者がフロンティアの外側にあるタスク、すなわち新しいことを考える必要があるタスクにAIを 使った場合は、

 

  • 対照グループと比べて23ポイントの成績低下が見られた。
  • 成果のパフォーマンスも平均19ポイント低下した。

 

の結果が得られたそうな。 まぁ、 当然の結果でしょうが、 AIをお使いの際は、そこらへんの区別をつけつつご利用ください。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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