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今週半ばの小ネタ:記録の力で習慣化だ!の 注意点、ひとりぼっちの時間はどれだけ増えるとやばいのか、ダイエットの効果は遺伝子で決まる?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

記録の力で習慣化を達成したいときの注意点

なにかを習慣にしたいなら記録をつけよう!」といったアドバイスは、よく耳にするところです。 例えば、運動を習慣にしたいときは、 エクササイズをした日にはカレンダーに印をつけて、習慣化したい行動が何日連続で続いているかを視覚化するわけですね。 これをやることで、「 もう10日も続けているから、さらに続けないと」 みたいな気分になるわけですねいわゆるゲーミフィケーションの一緒で、私もStreaks のような記録アプリを使っていたことがありました(今はアナログのカレンダーに印をつけるスタイルに戻ってますが)。

 

でもって、新しいデータ(R)では、 このような行動の記録がどれぐらい役に立つのか、そして行動の記録が途切れたらモチベーションは どう変化するのかについて調べてくれていて、勉強になります。

 

こる研究では、参加者にエクササイズ系のアプリを与え、3種類の筋トレを毎日行うように指示。 このアプリは、エクササイズをした日にチェックマークがつく仕組みになって いたんですが、4回目の筋トレを行った後で、 全体の半分の参加者には「システムに一時的な不具合が起きて、 4日目のエクササイズが記録され ませんでした」と告げたんだそうな。

 

その後、参加者の モチベーションをチェックしたところ、

 

  • エクササイズのチェックマークが 続いている時は、参加者の約66%が筋トレを 続けることを選んだ。
  • チェックマークが途切れたときは、同じ数値が約58%に 低下した。

 

と言う結果だったそうな。つまり、 いったん記録が途絶えた人は、わずかながらも モチベーションが下がっちゃうわけですね。

 

同じような結果は他の実験でも確認されていて、 語学の勉強などでも、 やはり記録が途絶えた後には モチベーションの低下が見られたとのこと。もちろん、これらの研究は、非常に短い記録についてしか調べていないので、長期にわたった場合のモチベーションの変化は謎ですが(おそらく、 記録する期間が長い方がモチベーションも下がりやすい気がしますが)。

 

ちなみに、この研究で私が最も参考になったのは、

 

  • もし毎日の記録が 途絶えた場合は、1週間単位での記録に移すと 脳を騙すことができるかも?

 

みたいなポイントですね。 要するに、「毎日30分の運動をする」という連続記録が途切れてやる気が失せたとしても、「じゃあ週に150分の運動をするって目標に変えるぞ!」 と切り替えることで、脳がまだ習慣は続いているのだと思い込み、モチベーションの低下が防げる可能性があると言うことです。 でもって、週ごとの目標が達成できたら、またこっそり毎日の記憶に戻していく、みたいな。

 

あくまで小手先のテクニックではありますが、モチベーション維持のために 記憶をつけている人には使えるかもしれません。

 

 

 

ひとりぼっちの時間は、どれだけ増えるとやばいのか?

人間は一人で過ごす時間が75%を超えると孤独を感じ始めるぞ!」ってデータ(R)がアリゾナ大学などから 出ておりました。 孤独が体に悪いというのは、 過去に何度も取り上げてきたテーマですが、ここでは日々の時間をどれぐらい孤独に過ごしたらやばいのかをチェックしてくれたわけです。

 

この実験では、スマートフォンのアプリを使って参加者の普段の活動を追跡。400人の スマホから周囲の音を12分ごとに30秒間録音し、 みんなの日常行動を観察したらしい。 この手法を使うことで、その人が電話をしているのか、運転中なのか、テレビを見ているのか、 友人、や見知らぬ人と交流しているのかがわかるわけですね。

 

その結果、何がわかったかと言うと、

 

  • 平均して、 ほとんどの人は全体の66%の 時間を一人で過ごしていた。
  • 1人で過ごす時間が全体の75% を超えると、 孤独感が激増した。
  • ただし、 孤独の感じ方には年齢で大きな違いがあり、若者は大勢の人の中にいても孤独を感じることがあったのに対し、67歳以上では、他の人と一緒にいるかどうかが孤独感と ダイレクトにに結びついていた。

 

みたいな感じだったそうな。 研究者によれば、

 

 

67歳以上の成人において、孤独は社会的に孤立していることと強く関係していることがわかった。人間の健康にとって社会的なつながりが重要であることがますます分かってきているが、孤独と孤立は別個の概念であるようだ(相関はするが)。

 

 

 とのこと。 1人でいるからといって 必ずしも孤独に苦しむわけでは無いものの、 全体の75%を超えないように、適度な交流をみ込んでいくのは良いことでしょうね。

 

ちなみに、 現在の孤独感を判定する方法としては「孤独レベルテスト」が 有効なので、気になる方はまずこちらをお試しください。 さらに、自分は1人でいることが多いけども、 果たしてその時間を有効に使えているのかが気になる方は、「ひとりぼっちの陰キャライフを有用に送れているのか?を判定する14の質問」をご参照ください。

 

 

 

低炭水化物ダイエットと低脂肪ダイエットの効果は遺伝子で決まる?

この20年間、ネットの健康クラスタで議論が続いているのが、「低炭水化物ダイエットと低脂肪ダイエットはどっちがいいの?」と言う問題です。まぁこれまでの縦断的試験(R)やメタ分析(R)では、「どっちでも同じぐらい脂肪は減る」と 報告しているので、 個人的には もう結論が出ていると 判断してますが。

 

とはいえ、どちらのダイエットの支持者にも、「こっちの方がうまくいった!」 と主張する人がいるのも事実。 単にバイアスで目が曇っているだけの可能性もありますが、一部の専門家は、 糖質制限や低脂肪が効きやすい遺伝子持った人がいるんではないか?などと推測していたりします。 生まれつき 特定のダイエットがつきやすい人がいるのではないかという話ですね。

 

そこで、新しい研究(R)は、この問題を調べてくれていて有用でした。これがどんな研究だったかと言いますと、

 

  • 10種類の遺伝子をもとに、参加者を「脂肪反応者」(理論的には高脂肪食でも太りづらいはずの人々)と「炭水化物反応者」(理論的には高炭水化物食でも太りづらいはずの人々)に分類。

 

  • その上で、(1)高炭水化物食を食べる脂肪反応者、(2)高脂肪食を食べる脂肪反応者、(3)高炭水化物食を食べる炭水化物反応者、(4)高脂肪食を食べる炭水化物反応者に 全体を分類。 それぞれのダイエット食を12週間続け、 何が起こったかをチェックする。

 

みたいになります。遺伝子ごとに最適と思われる食事法を割り当てて、明確な違いが出るのかをチェックしたわけですね。 その結果を、大まかに言うと、 以下のようになります。

 

  • ベースラインのインスリン感受性や遺伝子にかかわらず、高炭水化物食や高脂肪食を 続けた人たちの結果は同じだった。

 

ということで、 遺伝子型によるダイエット効果の違いはなかったらしい。 確かに、インスリン感受性のレベルはダイエットの進捗によっても変化するでしょうから、これらの違いにもとづいて 食事法の効果が変わるって事は無いのかもしれません。

 

まだ明確な結論は出しづらいものの、今回の結果を見ていると、 ダイエット法の効果の違いは、生理学的な要因よりもむしろ心理学的な原因が 左右している可能性が高い ような気がしますね。 要するに、自分の好み、価値観、 ライフスタイルの制約などにマッチしたダイエットを 選ぶのが正解ってことなんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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