日本産のポジティブ心理学テク「内観療法」を使いこなす3つの質問
グレッグ・クレッチ先生の「内観療法」の本(R)を読んでいたら、実践法がコンパクトにまとまっててよかったのでメモ。
内観療法ってのは、1940年代に日本の僧侶だった吉本伊信先生が開発したもので、仏教で使われる自己分析法のひとつ。その中身をすごーくざっくりまとめると、
- 私は他人から何を与えてもらったたのか?
- 私は他人に何を与えたのか?
- 私は他人にどんな迷惑をかけたか?
って3つの質問の答えを1つずつ考えていくのが基本。たとえば、「最近は同僚にめっちゃ手伝ってもらったから、向こうが困った時も手伝いをしたけど、書類にミスがあって迷惑をかけちゃったなー」って感じで思考を進めていくわけです。
この3つのテーマを定期的に振り返ることでポジティブな感情が生まれ、他者と良い関係を築く際に欠かせない要素(与える、受ける、傷つける)への意識を広げられると考えられてるんですな。その効果については少しずつ証拠が出てきてまして、内観を使うことで、薬物依存症や心身症といった症状に有効だろうと考えられております(R)。さらに近年では、内観が犯罪の抑制に効果的だって報告も、初期的なエビデンスがいくつか得られてたりします(R)
個人的な感想とてしても、
- ポジティブ心理学の過去の知見と整合性がある。
- 日本から生まれた手法なので、感覚にフィットしやすいかも。
みたいに思ってまして、自己分析&メンタルの改善に役立つ良いツールじゃなかろうかと思うわけです。
では、内観の簡単なやり方を見てみましょう。このエクササイズでは、過去24時間の間に自分が何を受け取り、何を与え、他人にどんな迷惑をかけたかを振り返っていきます。
その際は、誰か特定の人を考えてもいいし、あるいはもっと広く過去24時間のあいだに自分と関わったすべて人について考えても構いません。エクササイズに費やす時間は最低でも10分で、できるだけ多くの項目を考えてください。
ステップ1:私は何を受け取ったか?
まずは、過去24時間を振り返り、自分が誰かから受けた助けや優しい言葉などを、すべて思い出してみます。たとえば、
- 同僚が優しい言葉を書けてくれた。
- カフェで店員が笑ってくれた。
- パートナーが褒めてくれた。
- 見知らぬ人がドアを開けてくれた。
- 誰かが会社のマグカップを洗ってくれた
みたいな感じで、今日あなたが他者から受けた「良いこと」をすべて書き出してください。もし何も思いつかない時は、いつもの行動に関わっている人について考えてみるのも良いでしょう。たとえば、毎日やってる仕事について考えてみると、
- 同僚に頼んだ仕事がスピーディだった。
- 受付係が書類を整理してくれた。
- 社長自分の働き場を用意してくれている。
- 私が働く快適なオフィスを作ってくれた建築家、インテリアデザイナー、清掃スタッフ、電気技師。
- エンジニアが私の仕事用ツールをデザインした。
- 原材料を供給する生産者、加工業者、輸送会社。
みたいになります。こんな感じで、組織やコミュニティの運営に関わる人たちを、すべて思い描いてみるわけですな。
ステップ2:私は何を与えたか?
続いて、過去24時間のあいだに、自分が世の中の役に立つ行動を起こしたかどうかを、すべて考えてみましょう。たとえば、
- ゴミを拾った。
- 後から来た人のためにドアを押さえていた。
- 緊張する新人に微笑みかけた。
- 電車で席を譲った。
- 友人の誕生日を祝った。
- 他人の食器を洗った。
みたいな感じです。誰かの役に立っていることなら何でもいいので、片っ端からリスト化してみてください。
ステップ3:私は他人にどのようなめんどうをかけたか?
でもって、最後に、自分が他者や社会へどのような迷惑や困難を与えたかを考えて、思いつくものをすべて書き出してみてください。たとえば、
- 約束を忘れた。
- 誰かを見下した。
- 誰かに嫌なことを言った。
- ゴミのポイ捨てをした。
- 交通ルールを破った。
- 返事を待たせた。
みたいになります。なんでわざわざ自分のネガティブな側面を思い出すのかと言いますと、クレッチ先生いわく、
もし私たちが、自分が他人に与えた苦しみを認識せず、その事実を受け入れないのであれば、私たちは自分自身を知ることはできない。
とのこと。生きてれば誰かから助けられることもあるし、誰かを助けることもあるし、誰かに迷惑をかけることもあるんで、その事実を認識しないと自己分析は進まないぞってことですね。
クレッチ先生は、以上の作業を行ったうえで、各週の終わりにこの7日間を総括したうえで、来週はもっと他人の役に立つ行動を増やすように指示しております。ポジティブ心理学の手法って複雑なものも多いので、3つの質問について考えればOKってのは、楽で良いかもですな。